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事件から12年を経て
〜構造計算の現在と取り巻く環境〜
第2回 一貫構造計算プログラムの大臣認定とは

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前回、構造計算書偽造問題と発覚後の大臣認定プログラムに関わる背景について紹介いたしました。さて、現在、新大臣認定プログラムが何本あるかご存知でしょうか? 問題発覚前には、106本あった大臣認定プログラムが、現在では当社製品を含めて4本しかありません。

実際、当社では約7年で64回の性能評価部会で評価終了に漕ぎ着け、その後、1年2カ月の審査を経て新制度下における2号目の一貫構造計算プログラムとして大臣認定されました。

認定プログラムによる建築確認申請では、ある計算ステップの結果が次の計算ステップに間違いなく渡ることが保証されます。その部分にかかわる審査が不要になることで、通常確認申請と比べて、審査手数料が55〜65%、審査期間が最大70日のところが35日、紙で保管すべき構造計算書の頁数が40~50%減(当社比)等の優位性があります。

一方で、後日、建築確認申請を行った認定プログラムにバグが発覚した場合、建物が既存不適格扱い状態になる可能性があります(実際は再認定プログラムを実行し、OKとなれば現行安全基準に対して適格となります)。適格と言えなくなったからといって、建物を使用する上では何の支障もありませんが、大規模修繕を行う場合や転売する場合では問題になるかもしれません。その点だけが、一度、建築確認を通してしまえば適格不明状態にはならない通常確認申請に比して不利な点と言えるかもしれません。

いずれにしろ、@構造計算書偽造問題が10年以上前の事で風化しつつあるAさらなる厳格化で、認定プログラムによる建築確認申請を積極的に進めているのは当社のみB構造技術者のメリットが小さく認定プログラムによる建築確認申請を説明できる技術者が少ない―などで、新大臣認定プログラム制度は普及していないのが現状です。

構造計算に携わる者としては、特に構造計算書偽造問題が風化されつつある状況を危惧せずにはいられません。

次回は、構造技術者について詳しく紹介したいと思います。

執筆者プロフィール

株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士 吉沢俊正

吉沢俊正
株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士
aspace@archdata.co.jp
1978年日本大学理工学研究科建築学専攻(坪井研究室、修士課程)終了。轄\造計画研究所(技士)、轄\造ソフト(常務取締役・開発本部長)の勤務を経て現在に至る。潟Aークデータ研究所 URL:http://www.archdata.co.jp/