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事件から12年を経て
〜構造計算の現在と取り巻く環境〜
第5回(最終回) BIMと構造設計

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BIMとは(Building Information Modeling)の略で、欧米の主要3D-CADメーカーが提唱している3次元の形状情報と建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルです。
最後に、BIM活用に向けて構造をどう組み入れられるかを考えてみたいと思います。

計算書と構造図、意匠図との整合性、実施設計変更への対応など一連のモデル連携確立による効果は絶大ですが、一般的に構造技術者はBIMに前向きではありません。
BIMにおいて、意匠設計では施主との合意形成、施工では生産性の向上と目的が明確です。が、構造技術者に明確な目的がないことに加え、自由に部材配置したい3D-CADと一貫構造計算プログラム(以下一貫PG)の相性が悪いと考えられているからです。

実際、構造設計者は多くの場合、外注としての構造設計請け負いで、環境の異なるデータ連携が前提であり、誰が統合モデルへの躯体入力に責任を持つかも問題になるでしょう。

数年前にある3D-CADメーカーが統合モデルにおける部材と構造における部材を2重に持って管理する参照モデルワークフローと言う方法を提唱しました。実はそれを一貫PG側でも行えれば多くの問題が解決します。つまり、意匠2次元CAD図を下絵として一貫PG入力で使用するがごとく、3D-CAD部材オブジェクトを使用できれば、整合性の問題や3D-CADソフトの費用負担が解決することになるのです。

最近は、3D-CADと一貫PGの連携を目的とするST-bridge(国内の建築構造分野での情報交換のための標準フォーマット)を入出力する3D-CADも出てきたので、これを一貫PG内の3D-CAD部材オブジェクトに落とし込めば、一貫PGが計算に使う躯体の入力が大幅軽減できますので、構造設計の発注が容易になります。

とは言え、3D-CADと一貫PGの相性が悪い部分は、一定の制限として残ると考えられ、結局のところ一貫PGがどこまでの形状の自由度を有するかで、データ連携できる割合が変わってきます。
ST-bridgeは、一貫PG間のデータ変換にも使えるので、クロスチェックする際の躯体入力手間が削減できますが、ST-bridgeを出す側、読む側がフォーマットどおり入出力している事が前提なります。当社の一貫PGでは、トレースモデルとして3D-CAD部材オブジェクトを取り込む方法を採用していますし、データ変換に問題が生じたときのサポートを行っています。

5回に渡り「構造計算書偽装問題」発覚から現在の構造計算プログラムを取り巻く環境について紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。特に、これから構造設計を依頼する方には知っておいて欲しい内容なので、ご参考にしていただければと思います。

執筆者プロフィール

株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士 吉沢俊正

吉沢俊正
株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士
aspace@archdata.co.jp
1978年日本大学理工学研究科建築学専攻(坪井研究室、修士課程)終了。轄\造計画研究所(技士)、轄\造ソフト(常務取締役・開発本部長)の勤務を経て現在に至る。潟Aークデータ研究所 URL:http://www.archdata.co.jp/