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建設業の働き方改革
第3回 学び方改革

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 2015年に331万人いた建設技能者は、「10年後に100万人前後減少する」と見られている。産業間で人材争奪戦が激化すれば、労働条件面で劣る建設業はいよいよ劣勢に立たされることが予想される中、建設業界にとって生産性の向上は、まさに産業の存続に関わる焦眉の課題である。
 ここでは、生産性向上に向けた全社員の総活躍や、新人の早期育成に寄与するシステムとして、近年タナベ経営が提唱する学び方改革「社内アカデミー(企業内大学)」を紹介する。

 アカデミーを一言で言うなら「企業内大学」、つまり、社内に学校をつくるというイメージである。社内の優秀な人材、モデル人材、ナレッジ人材を発掘し、タレントマネジメントによって人材のノウハウを見える化する。それをデジタル映像としてプロデュースするとともに、クラウドによる映像学習とリアルな集合研修(社内や派遣など)の両方で組織共有することにより、「学び方改革」から「働き方」「働きがい」を高め、プロフェッショナル人材を増やし、生産性向上へと導く、これがアカデミーである。

 講師は各分野の社内プロフェッショナル人材のため、従来のOJT の構造的な欠点であった「部下は上司を選べない」という状況を大きく改善でき、「OJT 改革」を起こすことができる。また、クラウドを介して一人一人の受講状況を一元管理できるので、きめ細やかなフォローが可能になる。

 この他、アカデミー設立により期待できる効果として、「@人材発掘&活躍(ノウハウの見える化で社内の優秀な人材や才能を発見できる)」、「A採用ブランディング(人材育成システムの魅力をアピールできる)」、「B研修投資・時間効率の最大化(Web クラウドの活用で時間とコストを低減)」といったものが挙げられる。

 わが国が70年代に、オイルショックという供給制約を、世界最高のエネルギー効率を実現することで克服し、先進国の地位を確立したように、「人手不足」は日本経済に新たなイノベーションをもたらすことが期待される。建設業こそ、そのトップランナーなのである。

執筆者プロフィール

株式会社タナベ経営 中部本部部長 百井岳男

百井岳男
株式会社タナベ経営 中部本部部長
関西学院大学法学部卒。マーケティングを専門とし、「製品・市場戦略の構築」「中期経営計画の策定支援」などのコンサルティング分野を得意とする。マーケット調査のノウハウと戦略着眼はタナベ屈指である。企業戦略の立案に携わる傍ら、次代を担う幹部人材、中堅若手社員の育成分野においても独自の手法を基に数多く関わってきた。