建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

建設業の働き方改革
第5回 「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現

いいね ツイート
0

 「人手が足りない・・・」建設業における大きな悩みの1つではないだろうか。

 総務省の労働力調査によると、建設業就業者の割合は55歳以上が約34%と他業種よりも高齢化が進行しており、10年後には大半が離職する。今後は深刻な人材不足が予測される。合わせて、ライフプランを通じて休職や離職が増加する可能性が高い。まさに、多様な働き方への対応はすぐそこに差し迫っている。

 また、2020年以降の建設マーケットは縮小していく見通しである。一般財団法人建設経済研究所の2016年「建設経済レポート『日本経済と公共投資』No67」によると、建設市場(建設投資額+維持・修繕額)は2016年58.9兆円→2030年53.0〜56.3兆円と縮小傾向になると予測されている。よって、今後は固定概念に捉われない新規事業・サービスを展開していかなければならない。

 このような課題を解決できる経営スタイルが「ダイバーシティ&インクルージョン」である。ダイバーシティ&インクルージョンとは「多様な属性の社員の価値観や発想をとり入れ、経営戦略に活かすこと」を示す。それによって環境の変化に柔軟に対応し、企業の成長を加速化する。

 ダイバーシティ&インクルージョンを実現する上で必要な観点は3つある。1つ目は「ビジネスモデル・業務フローを見直し、付加価値・生産性をあげること」、2つ目は「無意識の偏見を取り除く意識改革を実施し、多様なリーダー像を生み出すこと」、3つ目は「多様な社員が働き続けられる、活躍できる制度の設計、環境の創造」である。この3点に注力することで、社員がいきいきと働き続けられる職場づくりを創出し、魅力のある人材の採用やイノベーションを生み出すことに繋がる。

 実際に建設業の中小・中堅企業においても、現場社員のテレワークの実施、ライフプランに合わせた多様な働き方の選択肢の提供、現場環境の改善、組織横断型での新規事業開発のプロジェクトの実施など、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向け、力を入れる企業が増えてきている。

 今後、生き残ることのできる会社は「変化」に対応できる会社である。顧客、社員、学生から選ばれ続ける会社となるためには、ダイバーシティ&インクルージョンの促進が必要不可欠である。

執筆者プロフィール

株式会社タナベ経営 新規事業開発コンサルティングチーム サブリーダー 森優希

森優希
株式会社タナベ経営 新規事業開発コンサルティングチーム サブリーダー
社内選抜型ジュニアボードのリーダーの経験からダイバーシティ&インクルージョン経営の豊富な事例を持つ。そのノウハウを活かし、企業のダイバーシティ&インクルージョンを推進するための経営戦略構築、働き続けられるための制度・環境設計、活躍の場構築、意識改革のための教育などを実施している。また、新規事業開発コンサルティングチームのサブリーダーとしても活躍。企業の成長に寄与することで、実績をあげている。 専門テーマ:ダイバーシティ&インクルージョン経営戦略構築、事業戦略構築、新規事業開発、ブランディング、教育体系構築