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■「中小建設企業の会社法」=第5回 〜会社法活用による事業承継〜

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新会社法では、株式に関する規定が見直されました。これによって事業継承の手法としてこれを活用することができます。
まず、相続人等に対する株式(譲渡制限株式に限られます。)の売り渡し請求制度を活用することができます。相続の開始があったことを知った日から1年以内に、会社が相続人から株式を買い取ることができる事項を定款に追加(変更)しておきます。これは、定款変更となりますので、株主総会の特別決議が必要となります。そして、相続が発生した場合、会社が相続人に要求して、株式を買い取れば、経営の安定化を図ることができます。
 次に、種類株式を活用する方法があります。種類株式を発行する場合は、発行可能種類株式総数とその内容を定款で定める必要があります。代表的なものに、下記のものがあります。
@議決権制限株式の活用による方法
議決権制限株式とは、株主総会における議決権を制限するものです。特定事項について制限することも、すべての事項について制限することも(完全無議決権株式)可能です。
相続開始前に、リタイア予定経営者に議決権制限株式を発行し、相続の開始とともに事業後継者に普通株式を、その他の相続人に議決権制限株式を承継させて経営の安定化を図ることができます。ただし、相続人の遺留分に関する問題を考慮しなければなりません。
A拒否権付株式の活用による方法
拒否権付株式とは、特定事項につき株主総会の決議の他に、その拒否権付株式を保有する株主の同意が必要となる株式のことです。「黄金株」と呼ばれています。
相続開始前に、リタイア予定経営者に拒否権付株式を発行し、相続開始とともに事業後継者に拒否権付株式を承継させ、経営に関する重要事項に拒否権を持たせることで経営の安定化を図ることができます。ただし、議決権の割合を考慮する必要があります。
B議決権・配当等についての株主ごとの異なる取扱による方法
 株式譲渡制限会社の場合、議決権や配当等について、株主ごとの異なる取扱が可能となりました。あらかじめ株主であり、なおかつ取締役である者だけが議決権をもつものと定款で定めておきます。そして、事業後継者を取締役とすることで議決権を集中させて、経営の安定化を図ることができます。
ただし、種類株式の評価については、現在、拠り所とする通達がなく、財産評価基本通達に定める取引相場のない株式等の評価方法に準じて、ケースバイケースで個別評価することになるので、税務に関する課題を解決することが前提となります。
建設業法実務研究会 http://www.primoss.jp/kgk/

執筆者プロフィール

建設業法実務研究会 山北浩史