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■「建設業の戦略営業 ―基本編―」=弟4回 戦略営業・レベル1「ターゲットを明確にした活動」

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 今回より戦略営業のステップをレベル1から説明していく。まず最初のレベル1は「ターゲットを明確にした活動」となる。
建設企業のトップが「これからは民間市場の強化!」とか「新規顧客を開拓せよ!」と声を大にしても実効があがらない時の原因の一つに、そもそものターゲットが明確になっていないことが多い。官公庁市場はもとより、民間市場においても従来の取引客および引き合い物件に慣れた営業組織においては、経営トップの檄も“スローガン”や“掛け声倒れ”になってしまう嫌いがある。

(1)訪問先を営業担当者任せにしていないか
あなたの企業や営業組織の中で「顧客リスト」は存在しているだろうか。また、存在するとしても、それが「取引客」と「新規開拓客」に分かれ、かつ営業担当者別に優先順位を付け、誰がアプローチするか明確になっているだろうか。
営業担当者からすると自分の手のひらに乗せている顧客が手持ち顧客であり、それ以外にはあまり関心を示さなかったり、新規開拓客を明確にする必要性すら感じていない人を時々見受ける。「取引客」を“現在・過去に仕事を発注してくれた顧客”と定義付ければ面談もしやすい顧客である。営業担当者の仕事が「顧客に会うのが始めの一歩」と思えば、営業担当者にとって「取引客」ほど容易で行きやすい顧客はいない。
筆者は「取引客」に行くなと言っているのでない、営業担当者が「取引客」を大事にするのは受注を安定化させる点で重要であると思う。しかし、ポイントは「取引客」と「新規開拓化客」とのバランスである。なぜなら、今申し上げた事と矛盾するかもしれないが、今現在の「すべての取引客」が「将来に渡る取引客」とは必ずしもなり得ないのである。
取引客の中でも今後も仕事の可能性のある顧客とそうでない顧客がいる。また、自社との取引実績や頻度(シェア)の高い顧客もあれば低い顧客もある。営業担当者の行きやすい顧客とはこの点で実は必ずしも受注確率を捉えて合理的に訪問しているとは限らない。
ターゲットを明確化する中で「取引客」のリストアップや訪問優先度を営業担当者任せにしてはいけない。まずは営業組織の中で受注目標を達成するためのベースとなる「取引客」を上記の仕事の可能性と取引実績・頻度等で区分することである。リストアップの際は可能性が高く取引実績・頻度の高い最重要取引客に営業ウエイトをかけるのはもちろんであるが、今までの取引実績・頻度が低くても仕事の可能性の高い顧客にはそれなりにウエイトをかける必要がある(このような顧客はライバル企業にシェアを抑えられているため、営業担当者もつかず離れず程度にしかアプローチしていないケースが多い)。

(2)“攻撃すべき”もしくは“開拓すべき”ターゲットとなる顧客や市場が明確になっているか
 「新規開拓客」もその実は“今すぐ発注が迫っている刈り込み客(自社もしくは他社いずれかに発注する)”と“これから受注できる可能性のある育成客”と“粘り強く受注可能性が出てくるまで訪問する種まき客”の3種類に分かれる。
 営業担当者はともすると「刈り込み客」の訪問に躍起になり(新規であっても取引客の紹介だったりする場合が多い)、育成客や種まき客に足が向かない場合がある。
市場ボリュームや今後の発注可能性を考えると「育成客」や「種巻き客」の中に有望な顧客が埋もれている事も少なくない。「新規開拓客」も「取引客」同様に営業組織の中で業種や地域などもふまえて “攻撃すべき”もしくは“開拓すべき”ターゲットとなる顧客や市場をリストアップし、それをいつ、誰が、どのくらいの頻度で訪問するかまで明確にしなければならない。

「取引客」においても「新規開拓客」においても、顧客ターゲットを営業組織として明確化することはきわめて重要である。
実際のところ営業担当者にこのような話をすると「当社とコネクションのない企業に訪問しても担当窓口と面談もできない」とか「他社が大きく入りこんでいる企業に自社との取引実績を広げるには価格の問題がネックになる」などとリストアップの前から及び腰になっている人がいる。
であれば私は聞きたい。「そのような問題を避けて容易に会える顧客の所だけに訪問して、果たして受注目標が達成できるのか」と。営業上の障害は顧客リストアップして、計画を立て、訪問するという、一連の活動の延長線上で考えるべきはずである。
それでは、リストアップした企業にどのように面談し、工事案件発掘の糸口を見つけるか、次回からは「戦略営業」のレベル2「営業の有効性を高める活動」について解説を行う。

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執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井 誠一