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■「建設業の戦略営業 ―基本編―」=弟5回 戦略営業・レベル2「営業の有効性を高める活動」

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前回の戦略営業のレベル1から引き続いて、今回はレベル2「営業の有効性を高める活動」を説明する。
筆者が全国で建設業の営業研修などを担当して思うのは、建設業界において、訪問件数や面談・商談の件数をバロメータとして活用するケースがほとんどないこと。と言うのも建設営業担当者にそれらの話をすると「いくら顧客を訪問しても仕事の無いところからは物件の話しはあがってこないですよ」とか、「新規顧客は歩留まりが悪いので行っていません」という声が圧倒的に多い。
確かに建設業の営業が扱う商品(工事物件)は、大きいものでは億単位の高額商品である。保険や自動車のようなわけにはいかないだろう。しかしながら、「では、受注目標を達成するために、どのような要素がなくてはならないか?」と問いかけると、「やはり見積できる工事案件がなければいけません」という答えが返ってくる。では、「その見積できる工事案件が、どれくらいあれば受注目標を達成できるのですか?」と尋ねると、答えは企業や人によってまちまちである。
受注目標を達成するためには必要絶対量としての見積案件(見積提出する工事案件)を発掘しなくてはならない。見積案件が受注確保の要素となると仮定すれば、この場合見積案件の発掘が「有効訪問活動」となる。
他力本願の引き合い型営業スタイルでは意図したボリュームの見積案件数が確保できない。ではどうするかといえば、それは有効訪問活動を向上させて見積案件数(量)を拡大しなければならない。

(1)基礎数値と挑戦目標
あなた個人や営業組織の中で受注目標に対するベースとなる数値は、期初にどのくらい明確になっているだろうか。年によっても異なると思われるし、特に官公庁市場については、従来のように「今年は国で○億、県で○億、市で○億」などと想像することが、昨今では極めて困難、不透明になってきている。
いずれにしても期の初めに受注想定できる数値を、ここでは「基礎数値」と定義する。そうしたときにその「基礎数値」から受注目標を差し引いた数値が「挑戦目標」となる。対競合の関係にもよるが、この「基礎数値」よりもはるかに「挑戦目標」が数字的に大きく厳しいのが現実ではないだろうか。この「挑戦目標」を達成するために先の有効訪問活動を向上させなくてはならない。

(2)計画的な営業と有効訪問活動
 有効訪問活動の裏づけとなるのは、先にレベル1で明確にしたターゲットに対しどのように計画的に訪問するかである。取引客と新規開拓客のリスト化された顧客に対し、訪問頻度や優先順位を考慮したアプローチを行わなければならない。
 先の受注目標を達成するために必要な見積案件のボリュームを確保するためには、その必要見積案件数に比例した商談数をさらに確保しなければならない。この場合の「商談」数はあくまで顧客と見積書提出につながる訪問活動を指し、単にお茶を飲んで帰るだけの「面談」とは異なる。
最初のきっかけとなる第一義の有効訪問活動を商談数とすれば、第二義の有効訪問活動はその後の見積案件数となり、この第一義の商談数を確保するために計画的な訪問活動が必要となる。具体的には年間の受注目標を達成するための受注計画を顧客や地域、商品(この場合、建築、土木など)ごとに市場アプローチの手段・方法を明確にした上で、月単位で訪問すべき顧客ターゲットを月度活動計画の中にリストアップして顧客訪問活動に組み入れなくてはならない。
有効訪問活動の商談数と見積案件数は、これらの計画にもとづくPDCA(計画・実行・確認・改善)のマネジメントサイクルにより検証・見直しを行い、向上が図られる。
次回は、有効訪問活動を向上させるためにリストアップした企業に対し、日々の営業活動でどのように面談し、工事案件発掘の糸口を見つける商談に結び付けるかの顧客コミュニケーションのあり方について解説を行う。

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執筆者プロフィール

鞄本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井 誠一