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都入契改革と改善提案

2018/1/15 

制度改革の方向は間違っていないのか、見直すべき点はあるのか―。東京都入札監視委員会制度部会と建設業界5団体との意見交換が1月15日に始まる。監視委では都財務局が試行している入札契約制度改革の検証を行いつつ“現場の声”を聞き、効果や課題を整理していく方針だ。業界にとっては制度改革の問題点を指摘し、改善を提案する重要な機会となる。
 都の入札契約制度改革は、@予定価格の事後公表AJV(共同企業体)結成義務の廃止B1者入札の中止C低入札価格調査制度の運用範囲の拡大―の四つが柱。財務局が先行して昨年6月26日に試行を開始した。
 同局が11月末現在でまとめた試行状況によると、予定価格の事後公表に伴って99%を超える高落札率の案件は減少した一方、平均落札率は前年度を上回った。不調発生率は倍増し、全体の2割に達した。JV結成義務の撤廃に伴う混合入札では、開札済みの案件の6割を単体が受注し、そのうち4割は中小企業だった。1者入札の中止は対象案件の2割近くで発生し、再発注による影響として開札日や工期の遅れが起きている。低入札価格調査は対象案件の3割近くで実施し、全案件で調査対象者が失格となった。
 検証作業を進めている入札監視委員会は、JV結成義務の廃止について「入札参加者が増加するとともに中小企業の受注割合が増えている。四つの改革の中で最も良好な効果が表れている」と評価。委員からは1者入札の中止に対して「そもそも1者入札とならないような参加要件や規模の設定など発注の仕方を工夫すべき」「なじむものと、なじまないものがあるのではないか」などの意見が出ている。低入札価格調査制度の拡大では「調査が工期に影響を及ぼしていないか。弊害があるならば対象件数を減らす検討をすべき」といった声も上がっている。
 入札監視委の“都民目線”による検証では、行政コストの上昇や、工期の遅れなどによる受注者へのしわ寄せを不安視する声があるものの、低価格競争への誘導だ、などとして批判が多かった制度改革の大枠については効果を認めている。
 だが、課題も見え隠れしている。例えばJV結成義務の廃止では、中小をはじめとした単体受注が増えている反面、これまでJVの構成員として参加することができた事業者の施工実績を奪い、技術力向上につながる機会が減ることが懸念されている。1者入札中止による影響についても、例えば建築工事で複数の工種のうち一つでも契約手続きが長引けば、他の工種の受注者は配置予定の人員を動かせず、他の工事を受注できなくなる可能性もある。
 小池百合子知事は昨年末に開いた都政改革本部会議で、課題が少なからず出ていることを認めつつ、「現場の声を反映しながら課題解決に取り組む必要がある。より効果のある方策を模索していく」との意向を示している。今回の意見交換会では、入札監視委が捉える制度改革の効果・課題に対し、建設業界はより具体的な事例を示しながら、課題や対応策を明確にし、認識のずれを修正していく必要がある。業界にとっても、より良い制度構築につなげなるチャンスとしたい。