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法定福利費確保の重点的促進を

2018/1/20 

建設業の社会保険への加入促進が大詰めに入っている。企業単位の加入率は90%を超えるところまできており、国土交通省は今後、建設業許可業者の100%加入の実現に向け、建設業法を改正して社会保険加入を許可の要件に追加する方針だ。
 しかし課題もある。社会保険加入の原資となる法定福利費の施工者の受け取り率が、加入率に比べて低いことだ。「建設業の持続的発展に必要な人材の確保」など社会保険未加入対策の目的を達成するため、社会保険加入率と法定福利費確保のギャップは早急に埋めなければならない。
 国交省の推計によると、建設業許可業者の社会保険への2017年12月末時点での加入率は雇用保険96・1%、健康保険93・5%、厚生年金保険93・3%。3保険全てに加入している企業の割合は91・5%となっている。建設業許可・更新時の指導や、経営事項審査での未加入企業の減点、公共工事での未加入者の排除など、ここ5年間での取り組みが効を奏した格好だ。
 一方、国交省が17年9月末から11月中旬にかけて建設業許可業者から2万8000者を抽出して行った実態調査(有効回答6888者)によると、公共工事で法定福利費を全額受け取れた工事の割合は、元請けが59・2%、1次下請けが49・1%、2次下請けが43・7%、3次以降の下請けが41・7%だった。
 発注機関による差も大きい。全額受け取れた割合を元請けで見ると、国の工事が75・1%、都道府県が63・4%、市区町村が52・5%だった。国と市区町村では20ポイント以上差があった。
 民間工事で全額受け取れた工事の割合はさらに下がる。元請けが44・1%、1次下請けが43・4%、2次下請けが38・5%で、3次以降の下請けになると25・6%まで低下する。
 調査によると、そもそも法定福利費を内訳明示した見積書を受注者が提出している工事の割合も低い。公共工事での1次下請けは52・7%と半数以上が明示をしているが、2次下請けでは45・8%、3次以降の下請けでは31・6%に低下する。民間工事では、1次下請けを含め、内訳明示は半数に満たない。
 社会保険に加入する一方、その減資が十分に確保できない状況は大きな問題だ。加入者の経営を圧迫し、対策の目的の一つである未加入者との不公平な競争条件の解消を阻害するほか、技能者の賃金へのしわ寄せも懸念される。
 国交省では今後、調査結果を踏まえ、法定福利費を下請けに行き渡らせる施策を検討・実施していく。標準見積書の活用や法定福利費の支払い状況を確認するための立ち入り検査も継続する。
 法定福利費に関しては、中央建設業審議会が17年7月、標準契約約款を改正し、請負代金内訳書に法定福利費を明示することを盛り込んだ。これを受けて12月には、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款も改正され、法定福利費を明示する規定を追加した。
 法定福利費の明示と確保は、社会保険未加入対策の施策の根幹だ。業者の受け取り率の低い民間工事と区市町村の公共工事などを重点的な対象とし、関係者が総力を挙げて問題解決を急がなければならない。