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暮らしの中の公園 利用者感覚で生きた公園に

2018/1/29 

自宅から大人の足で5分ほどの距離に住区基幹公園が三つある。住区基幹公園とはあまり聞き慣れない言葉だが、住んでいる人にとってより身近な公園(街区公園、近隣公園、地区公園)のことだ。自宅から一番近くにある街区公園が再整備され、昨年末に開園した。小学3年生になる娘は、以前に比べ友達とその公園で遊ぶことが増えた。お目当てはピカピカの赤いブランコ。休日、子どもに連れられ訪ねると、そこには子どもたちの笑い声と活発に動く姿があり、公園は生き生きとして見えた。
 住区基幹公園の中でも、最小規模となる2500平方bを標準とするのが街区公園だ。全国に8万5566カ所(環境省・2017年版環境統計集)あり、生活に溶け込んだ存在となっている。その価値は、安心、安全な場所としてどれだけ日常的に利用されるかで決まる。
 利用者が増えたのには理由があるはずだ。娘は、以前にはなかったブランコに揺られながら、眼前に迫る一本の木を眺めるのが好きだという。再整備前の公園は、フラットな広場を中心として、その隅に不規則な配置で鉄棒や砂場があった。中央で誰かがボール遊びを始めると、鉄棒は使いづらくなり、砂場は小さい子どもが安心して遊ぶには、不十分な環境になっていた。
 では現在の公園はどう変わったのか。敷地の北側に砂場とブランコ、ジャングルジムが並び、砂場と遊具との間には空間が設けられ、気兼ねすることなく安全に遊ぶことができる。残りの南側は多目的なスペースになっていて、砂場や遊具の利用者とは動線を異にする。単に遊具を設けたところで、人は集わない。利用者が使い勝手や居心地の良さを実感できる作り込みがなされて、始めて「公園」になる。
 利用者目線を大切にした公園整備に取り組んでいるのが、東京都足立区だ。その名も“パークイノベーション”。@公園利用者へのヒアリングAヒアリング結果を生かした設計B施工C整備後の公園でのアンケート調査D次回整備へのフィードバック―のサイクルを回している。利用者の意見を反映し、既存遊具のレイアウトを変えるだけでも、公園はガラリと生まれ変わるそうだ。利用者目線を最優先することが、低コストの整備にもつながっている。
 国は都市公園法の改正を昨年行った。都市公園の再生、活性化を目的に、公募設置管理制度(Park−PFI)の創設、保育所等の占用物件への追加、協議会の設置などが盛り込まれた。国は、「公共の視点だけでモノをつくらない、発想しない」ことを重視すべきだと指摘。今後の公園の在り方として、取りあえず“三種の神器”(砂場、滑り台、ブランコ)を整備し、一律でボール遊びを禁止するといった画一的な管理はしないことを打ち出した。利用者の視点に立った公園づくりへと一歩近づいたといえるだろう。
 子どもが安全に遊べる場所、高齢者のよりどころ、災害拠点として、そこに住まう人たちにとって最も身近な街区公園の必要性は、これまで以上に高まっている。住民、地方公共団体、国が一体となって、人が集う“生きた公園づくり”を実現したい。