小池知事の都政改革が始動 建設費高騰、妥当性を訴えよ
2016/9/5
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小池百合子東京都知事による都政改革が動き始めた。「都民ファースト(第一)」を“合い言葉”に、築地市場の豊洲市場への移転延期を決めたのに続き、都政改革本部にオリンピック・パラリンピック調査チームを設置し、施設の妥当性や変更の可能性を探るという。いずれも建設費の高騰による都民負担の増加を問題視しており、都の顧問に就任した政策や財務の専門家が、コストの妥当性や費用対効果を検証、今後の対応を決める。
極めてタイトなスケジュールの中で建物が完成した豊洲市場。11月7日の移転に向けて市場関係者も準備を進めてきた。8月31日の会見で小池知事は「安全性への懸念、巨額で不透明な費用の増加、情報公開の不足という三つの懸念が解消されていない」と述べ、地下水のモニタリング結果が出る2017年1月まで移転を凍結する方針を打ち出した。合わせて、落札者の決まっていた築地市場の解体工事についても延期することを決めた。
09年2月時点で約4316億円と試算していた豊洲市場の整備に伴う総事業費は、ことし2月時点で約5884億円に膨らんだ。小池知事は「ほとんどが建設費の増加によるもの」と述べ、資機材や人件費が高騰し、建設コストが上昇したことに一定の理解を示しつつも「高すぎる」と指摘。プロジェクトチームを設置し、原因をチェックする意向を示した。
オリンピック・パラリンピックをめぐっても、都知事選の段階から、膨張した予算を「招致段階の7340億円が1兆、2兆と増えた。お豆腐屋さんではない」と批判。9月1日に開いた都政改革本部の初会合では、調査チームが都オリパラ準備局や国、組織委員会へのインタビュー(聞き取り)を実施。費用対効果や施設の妥当性(場所、規模、設備、予算)を検証して、変更の可能性・余地・方向性を検討することを明らかにした。
賛成と反対をめぐる長い議論の末、何とかこぎ着けた豊洲市場の開場が先送りされれば、準備を進めてきた業者に大きな損害が発生する。開場しなくても維持管理に必要な費用は1日当たり700万円程度掛かるという。市場の移転を前提に進めようとしている環状2号線(オリンピックロード)の整備も滞ることは避けられない。
オリンピック・パラリンピック競技会場の整備についても、大型の恒久施設は契約を済ませ、実施設計作業も最終段階を迎えている。見直しが必要となれば、プレ大会までに完成させる工程がさらに厳しくなることは間違いない。
都民ファーストをうたうのであれば、これらの事業の遅れが都民をはじめ関係者に与える影響の検証も必要だ。建設費の高騰がやり玉に上がっているが、国家的事業のために人材を必死に集め、最新の技術を駆使して進めた、あるいは進めようとしている施設整備の費用は本当に“不当な価格”なのか。改革本部による調査、発注機関による説明だけでなく、建設業界もその背景や根拠を明確に示して妥当性を訴え、都民の理解を得るべきだ。
安全安心を確保し、史上最高のオリンピック・パラリンピックを開催するためには、残されている時間は極めて少ない。
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