若者の離職対策 新たなコミュニケーションを
2016/10/29
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建設業に就職した高校生の約半数が3年後には会社を辞めている。厚生労働省が、2013年3月の新規学卒者を対象に行った離職状況調査によると、建設業に就職した高校生の卒業後3年以内の離職率は48・3%だった。全産業の平均は40・9%で、建設業はこれを7・4ポイント上回った。宿泊業や飲食業などサービス業と比べると低いが、28・7%だった製造業を19・6ポイント上回っている。
一方、建設業での大学卒業者の3年以内の離職率は、全産業の平均を1・5ポイント下回る30・4%だった。高校生と同様、サービス業などと比べて低い。しかし、18・7の製造業と比べ11・7ポイント高かった。
建設業の担い手の確保・育成が懸案となっているいま、若者の離職を減らすことが重要な対策の一つとなっている。そんな中、問題解決に向けて具体的な取り組みに乗り出す動きも出始めている。
愛知・岐阜・三重・静岡の東海4県の建設業協会と教育機関などで構成する「中部圏建設担い手育成ネットワーク協議会」は、3回目となる「建設若者塾」を16年度も5月に開いた。
入職後5年以内の、女性6人を含む若者42人が、職種や企業の垣根を越えて集まった。2日間の日程で現場見学や講習、グループディスカッションに臨んだ。
建設若者塾の大きな目的は、建設業の職業観や就業意識の共有とともに、建設業で働く若者同士のネットワークづくりにある。
建設業では若年入職者の減少が進んだ結果、会社によっては「10〜20歳代は自分1人だけ」というケースも少なくない。仕事で悩みがあっても身近に相談できる同世代がいないまま、若者は社内で孤立し、やがて職場を去っていく。次に入職した若者がいたとしても同じことの繰り返しになる。そんな悪循環を断ち切ろうというのが建設若者塾の狙いだ。
同様の取り組みを「関東圏専門工事業担い手確保・育成推進協議会(夢協)」も開始し、「夢協若者講習会」を6月に開いた。機械土工・型枠・鉄筋工事などに携わる約30人が参加し、建設業の役割について講習を受けるとともに、将来の目標や夢を語り合った。
夢協では、「夢協職長講習会」も16年度からスタートさせた。若手技能者の定着促進に関わる職長のコミュニケーション能力の向上が目的だ。7月にあった講習会には多様な職種から約20人が参加した。コーディネーターを務めた玉川大学の大木栄一教授は、いまの若者の職業観を話した上で、採用・定着のポイントとして@土曜日を休日にすることA若手の話しを聞く「傾聴力」を向上させることB若手の仕事を認め、責任を与えること―を挙げた。
新規採用者の定着促進と育成は、個々の企業の存続に関わる問題でもある。入社後に社員が積む経験や取得する資格などの「キャリアパス」を明確化し、定着率を改善している企業の例もある。
建設業の人材の確保を巡り「新3K」という言葉が聞かれるようになった。三つのKは「給料」「休暇」そして「希望」だという。企業にはいま、夢を形にしていく知恵と覚悟も求められている。
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