建滴 インフラメンテナンス
2016/11/28
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「インフラメンテナンス国民会議」が11月28日に発足した。メンテナンス産業の育成と活性化を目指し、さまざまな企業や団体、地方公共団体が参画する。テーマは技術革新、自治体支援、技術者育成、市民参画など多岐にわたる。
会議が発足した背景には、インフラストックを取り巻く厳しい現状がある。維持管理に関わる予算の確保はもちろん、管理施設数の増大、技術系職員の減少などの課題が山積し、特に市町村はその傾向が顕著と言える。
国土交通省の調べで、建設後50年を経過した全国の橋梁の約5割、トンネルの約4割が市町村管理のものだということが分かっている。国交省が管理する施設の占める割合はいずれも約1割にとどまる。膨大な老朽ストックの適切な維持管理は地方公共団体、特に市町村にかかっていると言っていい。
それにもかかわらず、市町村の体制は余りにも脆弱(ぜいじゃく)と言わざるを得ない。2015年4月時点での全国市町村の職員数は90万人余。このうち土木技術者は約2万6000人で、全体の3%にも満たない。10年前、05年の水準と比べても1割程度減ってしまっている。施設の定期点検が義務化された14年度からは微増しているとは言うものの、いささか心もとない状況であることには変わりはない。
国交省は、橋梁管理に携わる土木技術者数の推移も調べている。土木技術者がいない市町村の数は減少傾向にあるものの、依然として町の3割、村に至っては6割で橋梁管理に携わる土木技術者が不在だ。
また、市町村が管理する橋梁は、道路施設の定期点検で診断区分「W(緊急措置段階)」が発生する割合が国の約8倍、都道府県・政令市の約7倍に達するとのデータもある。
さらに、予算面でも市町村は苦労を強いられている。定期点検で早期措置段階に当たる診断区分「V」と判定された橋梁について、5年以内の措置が可能かを尋ねたところ、6割もの市町村が「現在の予算規模ではメンテナンスサイクルを回せない」と窮状を訴えているのだ。
今回、発足した国民会議には、テーマごとにフォーラムが設けられ、「自治体支援」に関する取り組みも進められる。技術力不足に悩む地方公共団体が包括的民間委託など制度運用上の課題を明確にし、他の自治体の経験や民間企業のノウハウ・アイデアを共有することもできそうだ。
「市民参画」フォーラムにも期待したい。インフラが市民一人一人にとって重要であることを知らしめることが、予算措置への理解など、メンテナンス施策を進める上での大きな追い風になるからだ。
さらに、優れた取り組みや技術開発を表彰する「インフラメンテナンス大賞」も創設される。国交省など6省が所管する施設分野で大臣賞などを設けるという。これも国民にインフラメンテの重要性を知ってもらう貴重な機会になるだろう。
「国民会議」の名の通り、インフラは国民全ての共有財産だ。つくるもの、使うものの全てが自分事として捉えれば、わが国のインフラメンテナンス事情は必ず好転するはずだ。
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