新労務単価の適用開始 今こそ正しい循環の実現を
2023/3/20
いいね | ツイート | 印刷 | |
0 |
3月に適用が始まった新たな公共工事設計労務単価。全国全職種平均の単価は前年度比5・2%増の2万2227円(伸び率は単純平均、金額は加重平均)で、単価算出手法の見直し以降3番目に高い伸び率となり、5年連続で最高額を更新した。上昇するのは11年連続だ。主な建設業の団体長が対応に感謝し、建設技能者の賃金引き上げに努力するコメントを発表するなど、給与・休暇・希望・かっこいいの新4K産業への後押しになると期待されている。
とはいえ、建設業、特に技能者の給与水準は依然として基幹産業として誇れるレベルにはない。2012年度との比較では65・5%の大幅な上昇だが、設計労務単価は建設投資の減少に伴う労働需給の緩和によって1997年度をピークに2012年度まで減少を続けていた。97年度の全国全職種平均は1万9121円で、これと比較した最新の単価の伸び率は16・2%にとどまる。
この間、最低賃金も上昇してきた。その金額は時給換算のため少なく感じるが、伸び率を見れば東京都で10年前に比べ26・1%、20年前に対し51・4%増えている。97年比では57・9%のアップだ。大阪府はそれぞれ「27・9%増」「45・5%増」「51・1%増」、愛知県は「30・1%増」「44・8%増」「50・8%増」、香川県は「30・3%増」「41・8%増」「48・9%増」と着実に増えている。設計労務単価だけが伸びている訳ではないのだ
しかも、昨年3月に開かれた中央建設業審議会で国土交通省が報告したように、設計労務単価は技能者の賃金に十分には反映されていない。厚生労働省がまとめた賃金構造基本統計調査の結果、建設技能者の平均年収は横ばいで推移している。2018〜20年度の3年間で設計労務単価の全国・全職種平均は8・5%上昇した一方、技能者の平均年収の伸び率は1・5%にとどまっている。国交省は「(民間工事で)労務費がダンピング競争にさらされている状況にある」との見方を示しているが、この現況は深刻だろう。
世界的な原油・原材料価格の高騰を受け、国民の負担は大幅に増している。建設業の従事者、特に現場を支える技能労働者の賃金が、設計労務単価という“名目上だけ”増えるのではなく、年収ベースで着実に増加しなければ、自身はもちろん、家族の暮らしを安心して支えていくことにはつながらない。
2024年度の時間外労働の上限規制の適用を前に、建設業は抜本的な働き方改革を迫られている。法令に定められた時間内で働き、他産業に劣らない給与を得る。この当たり前のことが実現しない限り、建設業は魅力ある産業にはなり得ない。
行政は週休2日を前提とした工期設定や積算を行うことが当然であり、「受注競争の厳しい民間工事では労務費が抑えられている」現状を見直す施策を考える必要がある。
一方で、建設業界も法定内の労働で、最低でも設計労務単価を支払っていくことが不可欠だ。負のスパイラルから抜け出し、国交省のいう「賃金上昇と労務単価アップの正しい循環」を実現するには、行政と業界が共に課題に向き合いつつ、必要な取り組みを着実に実行しなければならない。
関連記事
- 国土強靱化 財務省に初の要望 (5/17)
- ニュージーランドでホテル開発 戸田建設 (5/17)
- 環境省 廃棄物処理の脱炭素化事業を募集 (5/17)
- CO2排出量取引制度の法整備検討会発足 (5/17)
- 全圧連 佐藤会長「働きやすい業種に」 (5/17)
- 標準労務費の更新 「市場に合わせて改定」 (5/17)
- CCS事業法案が成立 30年事業開始 (5/17)
- 建物の環境負荷の見える化推進 制度化検討 (5/17)
- テーマソングにmilet 神戸須磨シーワールド (5/17)
- 新会長に堤忠彦氏 PC建協が総会開催 (5/17)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。