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持続的な発展へ環境整備

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(2017/07/14)



 


持続的な発展へ環境整備



建設業で働き続けるために





組み合わせ





近年、わが国の人口減少、少子高齢化はあらゆる産業で将来の担い手不足を引き起こしているといえますが、特に建設産業は他産業に比べ高齢化率が高く、将来の担い手不足は深刻な状況にあります。今後、団塊の世代の大量離職は確実であり、若い人材が入職してこないと、これまで培われてきた建設技術の伝承が困難となり、建設産業の持続的発展に大きな支障を及ぼすことになります。建設産業の担い手の確保、育成は、喫緊の課題であります。

若い人材を確保するために重要な課題となるのは、建設労働者の処遇改善であり、国土交通省といたしましては、これまでさまざまな取り組みを行ってまいりました。例えば、社会保険の未加入対策ですが、建設産業は他産業に比べても社会保険の加入率が低く、このことが新規入職の足かせとなっていることから、2012年度から5カ年という計画期間で、社会保険の加入率を企業単位で100%、労働者単位で製造業並みにするという目標を立て対策が行われてきました。今年度、区切りの5年を迎えたということで、その成果については検証中ですが、今後も必要な追加対策を実行していくこととなります。



その他にも、政府を挙げて取り組んでおります「働き方改革」の一環として、他産業では今や当たり前になっている週休2日制を建設産業に浸透させるべく、国土交通省の直轄工事にて試行的に週休2日を実施する取り組みや、技能労働者のキャリアパスの見える化として「建設キャリアアップシステム」の構築に業界と協力して取り組んでいます。

一方、今の若い世代に建設産業の持つ魅力を伝えていく必要があります。例えば、「地図に残る仕事」というキャッチフレーズがありますように、建設労働者によって建てられた建造物は資産として後世に残るわけでありまして、誇れる仕事であるはずです。国土交通省中部地方整備局では、このような建設産業の魅力を若い世代に伝えるべく、中部4県の建設業団体や学校関係者、行政担当者と共に、中部圏建設担い手育成ネットワーク協議会に参画しており、さまざまな取り組みに携わっております。



例えば、中部4県から工業高校の生徒を招待し、専門工事業の実体験をしてもらう「建設専門工事業合同体験フェア」では、工業高校の生徒のみならず、先生方からもご好評をいただいております。また、建設産業が3年以内の離職率が高いことから、離職防止を図るための一環として「建設若者塾」を開催しました。参加者には企業の垣根を越えた若い技術者・技能者の同世代による人的ネットワークを構築し、同じ建設業界で働く同世代の社会人としての絆を築くことにより、今後お互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、励まし合いながら建設産業で働き続けてもらうことが期待されます。

建設産業は、災害時に真っ先に現場に駆け付けるなど、地域の守り手としてもなくてはならない産業です。中部地方整備局としましても、建設産業が今後も持続的に発展を遂げることができるよう、担い手の確保、育成に努めてまいりたいと思います。

(寄稿・国土交通省中部地方整備局)



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持続的な環境整備





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継続していく中でしか見えてこない


 



中部圏建設担い手育成ネットワーク協議会が主催する「第2回建設専門工事合同体験フェア」が5月31日、名古屋市の吹上ホールで開かれた。愛知県・岐阜県・三重県・静岡県内の七つの高校と専門学校から生徒や教諭ら約330人が、型枠、鉄筋、内装、とび土工といった建設業の専門工事7業種を体験した。実習体験した2年生の男子は「進路を決めかねている。幅広い建設業の中から、どのような職種がいいのか自分で選択するのに良い機会になる」と感想を語った。担い手確保・育成は、建設業界にとって最大の課題である。国、地方自治体、建設業界を挙げての取り組みの成果は「継続していく中でしか見えてこない」(建設業界幹部)。同協議会が総力を挙げ開催した5月31日の合同体験フェアを取材した。



 


原寸大の建設業¢シにない


 



昨年に続き2回目となる今回は、昨年の内容をさらに拡充させ、高校生が原寸大の建設業≠ノ触れる場となるよう、建設専門工事を体験するコーナーと合わせてブースを設け、専門工事の魅力を発信する内容とした。体験できる業種は型枠・鉄筋、内装、とび土工・土木、左官、タイル、ダイヤモンドなど。体験業種を高校生らに指導するのは機械・土工、型枠、鉄筋、左官、タイル、塗装などの専門工事13団体。この協力団体も昨年と比べ大幅に増えた。

開催当日、各専門工事団体は、搬出入計画に基づき朝8時から機材などを搬入し、設営作業を行った。開会前から三重県四日市市や浜松市から参加する高校生がバスで続々と到着。あらかじめ決められた業種コーナーで体験を開始。できるだけ多くの業種を体験できるよう30分ピッチでローテーションを組んだ。

到着早々、左官コーナーで塗り方体験した名古屋市立工芸高校建築科1年の女子生徒2人は、「結構、簡単そうに見えたけど、めっちゃ難しい」「鏝(こて)を持っていた右手がめちゃめちゃ疲れた」と右手を回した。

当日、左官ブースで指導を行っていた愛知県左官業協同組合の伊藤充隆理事長は、「塗り壁の良さや左官の仕事は、言葉で説明することは難しい。その場で体験し、肌で感じてもらうしかない」と教えてくれた。同協組の松田誠青年部長は、「興味を持ってくれる若者が1人でもいてくれればうれしい。左官の仕事は楽しいということを感じ取ってもらえれば体験した意義があると思う」と、鏝を握る高校生の右手に自身の手を添えながら語ってくれた。



 



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小人数でも着実に人材輩出


 



当日、生徒を連れて参加した東三河高等技術専門校主任専門員の加納洋和教諭は、1948年の開校から東三河一円で大工さんを養成してきた沿革を話した後、「2014年に職業訓練全般を見直し建築総合科に転換して、専門工事へ人材を輩出する体制に切り替えた。少人数でも着実に人材育成していると自負している」と胸を張った。「職人とじかに触れる数少ない場である。気質≠感じ取ってもらえればいいかな」と、生徒を連れてきた理由を話してくれた。

静岡県立浜松工業高等学校の建築科で教える大井詳子教諭は、建築科の2年生を引率して参加した。「安全を意識した職人さんの仕事を間近で体験することができる。ほとんどが施工管理の道を選択するが、中には設計の道を志す生徒もいる。現場見学会の機会はあるが、生徒にとって現場を知る≠アとは貴重な実体験となるはず」と、参加の意義を話した。そして、「生徒のこんな楽しそうな表情を学校の授業では見たことがない。この後の学校生活にも生きてくる」と期待した。

この日、参加した同校の男子生徒は、「現場で働いている方々と触れあうのは初めての体験。危険もあり、技術の習得も難しいと思うが、現場でしか学べないことを吸収していきたい」と語ってくれた。将来は1級建築士を目指しているそうだ。

岐阜県立岐阜工業高等学校設備システム科2年の生徒を引率してきた石森大一教諭は、「実際の道具や機材を使い、原寸サイズの現場≠見ることができ、体験できることはそうはない。9割以上が建設産業に就職する生徒ばかりであり、学校の座学や現場見学会では得られないリアルな体験≠することができる」と話す。「普段の授業では眠たそうだが、今日は生き生きとしていることに驚いている」とこっそり教えてくれた。

内装工事を体験した同校の男子生徒は、「接着材を延ばすのがうまくいかなかった。将来の進路は決めていないが、今日体験したことを生かせるような仕事に就きたい」と語ってくれた。



 



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こんな楽しそうな表情、見たことない


 



この合同体験フェアの実行委員長で、東海建設躯体工業会の伊藤順一副会長は、「建設産業専門団体中部地区連合会(建専連中部)としては、ここ5年ぐらいの間に、専門工事業に対する社会的な認識が変わったと捉えている。国交省や県市町村などの地方公共団体だけでなく、高校の教諭や保護者の見方も変わってきたと感じている。以前は『大工さんがいれば建物は建つ』と思っていたと話す生徒が多かった。技能者の危機的な将来推計が出されてからは、若い技能者は自ら育てるしかないとの認識に転換したというのが実際のところだ」と話す。その上で、「われわれや取り巻く関係者の認識を変えることが、次世代を担う若者の入職率を高めることにつながる」と強調する。

後援した中部地方整備局建政部の松居孝道建設産業調整官は「本物≠フ建設業に触れる良い機会になったと思う。建専連中部をはじめ、4県の建設業協会の協力に感謝したい」と話した。



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本物≠フ建設業に触れる格好の場


 



この合同体験フェアの参加校は、岐阜県立岐阜工業高等学校、静岡県立浜松工業高等学校、三重県立四日市工業高等学校、名古屋市立工芸高等学校、名古屋工業高等学校、名古屋高等技術専門学校、東三河高等技術専門学校。

出展団体は、東海建設躯体工業会、日本機械土工協会中部支部、日本型枠工事業協会東海支部、東海4県鉄筋組合連絡会、愛知県左官業組合連合会、中日本圧接業協同組合、全国タイル業会中部支部、日本塗装工業会中部ブロック、全国建設室内工事業協会中部支部、中部建設インテリア事業協同組合、全国クレーン建設業協会愛知支部、ダイヤモンド工事業協同組合中部支部、プレストレストコンクリート工事業協会中部支部の13団体。

同協議会は、中部地方整備局管内(愛知県・岐阜県・三重県・静岡県)の教育機関、県建設業協会、建設産業専門団体中部地区連合会などが、建設産業を魅力的な産業とするため、将来にわたって社会の要請に対応できる人材を育てようと2013年11月に設立した。

これまで、建設若者塾、広報用DVDの作成、新規入職者交流歓迎会、建設業入職案内ポータルサイト、建設労働者緊急育成支援事業などに取り組んでいる。

構成員は、東海四県土木教育研究会、電波学園東海工業専門学校金山校、日本建設業連合会中部支部、建設産業専門団体中部地区連合会、岐阜県建設業協会、静岡県建設業協会、愛知県建設業協会、三重県建設業協会。

オブザーバーとして、国土交通省中部地方整備局、厚生労働省岐阜労働局、同省静岡労働局、同省愛知労働局、同省三重労働局、岐阜県県土整備部、静岡県交通基盤部、愛知県建設部、三重県県土整備部が参画している。



 



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