「やりがいがありそう」。愛知県建設部などが主催するイブニングサロンに参加した高校生の感想だ。同部は、建設業に入職する若者を増やしていこうと、2013年にイブニングサロンをスタート。今年で5年目を迎える。また、16年度には、入職3年未満の技術者・技能労働者を対象とした研修などの担い手確保育成推進事業も実施した。建設業界の人材の確保・育成につなげようという愛知県のこうした取り組みを取材した。
イブニングサロンは、これから進路を決める学生・生徒と、ゼネコンやコンサルタント会社で働く社会人、行政職員、学校の先生など、異業種・異世代の交流の場。13年度の名古屋大学での開催を皮切りに、大学や高校などで16年度までに計15回開催してきた。これまでに研修には延べ264人、見学会には延べ92人が参加した。スタート時には工業系大学の学生や工業高校の生徒を対象に開催していたが、その後、普通科高校でも実施。16年度には初めて女子大でも開催した。徐々に取り組みを拡大してきている。
初めての女子大での開催となったのは椙山女学園大学。同大学には建築・住居分野について学ぶ学部が設置されているため、開催を決めた。同大学での開催時は、出席する社会人についても女性に限定。当日は学生16人、コンサルタント会社などに勤務する女性や県職員も含め、社会人12人が参加した。女子学生の場合、建設業界に関心・興味があっても、女性が働いていくことができるかと不安を感じているケースも多い。こうした学生にとって、実際に建設業界で働く女性に直接話を聞くことができるのは貴重な機会となったことだろう。
16年度はこの他に、豊川高校、大同大学、豊橋技術科学大学でも開催した。豊川高校では生徒7人、社会人11人、大同大学では学生10人、社会人12人が、豊橋技術科学大学では学生・社会人各11人が参加した。
豊川高校は、15年度に引き続き普通科高校での開催となった。建設業界への入職者を増やすためには、大学の学部を選択する前の段階で、建設業をPRし、興味を持つ生徒を増やす必要があると考えるからだ。
生徒らは初め、土木と建築の違いすら区別できていない状態からスタート。しかし、終了後には、「やりがいがありそう」「達成感がすごそう」「土木が楽しそうだ」などといった前向きな感想が寄せられるなど、建設業を理解してもらうための大きな一歩となったようだ。
また、社会人側も、普段は直接触れ合う機会が少ない高校生、大学生に接することで、新たな刺激を受けるケースも多いようだ。「高校生が建築に興味を持っていることが分かりうれしい」といった声が聞かれた。また、高校生が想像していた以上に「しっかりしている」と驚く意見もあった。ただ、建築に興味がある学生・生徒が多いのに対し、土木についてはよく知らない学生・生徒が多いことも明らかになった。建設業界、とりわけ土木の世界に興味を持ってもらうためには、まだまだ若い世代へのアプローチが十分とはいえないことが浮き彫りになった。一方で、イブニングサロンに参加した学生・生徒の約8割が土木の道に進んでいるという結果も出ている。これからも進路を決定する前の学生・生徒を対象としたこうした取り組みを地道に続けていく必要があるだろう。
17年度も引き続きイブニングサロンを開催していく。7月4日に愛知工業大学名電高校、7月10日に名古屋大学で開催した。今後、他の学校でも開催を予定している。