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(2017/07/14)



 


建設業の魅力伝える一助に

人材確保・育成の取り組み


 



「やりがいがありそう」。愛知県建設部などが主催するイブニングサロンに参加した高校生の感想だ。同部は、建設業に入職する若者を増やしていこうと、2013年にイブニングサロンをスタート。今年で5年目を迎える。また、16年度には、入職3年未満の技術者・技能労働者を対象とした研修などの担い手確保育成推進事業も実施した。建設業界の人材の確保・育成につなげようという愛知県のこうした取り組みを取材した。



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イブニングサロン





 イブニングサロンは、これから進路を決める学生・生徒と、ゼネコンやコンサルタント会社で働く社会人、行政職員、学校の先生など、異業種・異世代の交流の場。13年度の名古屋大学での開催を皮切りに、大学や高校などで16年度までに計15回開催してきた。これまでに研修には延べ264人、見学会には延べ92人が参加した。スタート時には工業系大学の学生や工業高校の生徒を対象に開催していたが、その後、普通科高校でも実施。16年度には初めて女子大でも開催した。徐々に取り組みを拡大してきている。

初めての女子大での開催となったのは椙山女学園大学。同大学には建築・住居分野について学ぶ学部が設置されているため、開催を決めた。同大学での開催時は、出席する社会人についても女性に限定。当日は学生16人、コンサルタント会社などに勤務する女性や県職員も含め、社会人12人が参加した。女子学生の場合、建設業界に関心・興味があっても、女性が働いていくことができるかと不安を感じているケースも多い。こうした学生にとって、実際に建設業界で働く女性に直接話を聞くことができるのは貴重な機会となったことだろう。

16年度はこの他に、豊川高校、大同大学、豊橋技術科学大学でも開催した。豊川高校では生徒7人、社会人11人、大同大学では学生10人、社会人12人が、豊橋技術科学大学では学生・社会人各11人が参加した。

豊川高校は、15年度に引き続き普通科高校での開催となった。建設業界への入職者を増やすためには、大学の学部を選択する前の段階で、建設業をPRし、興味を持つ生徒を増やす必要があると考えるからだ。

生徒らは初め、土木と建築の違いすら区別できていない状態からスタート。しかし、終了後には、「やりがいがありそう」「達成感がすごそう」「土木が楽しそうだ」などといった前向きな感想が寄せられるなど、建設業を理解してもらうための大きな一歩となったようだ。

また、社会人側も、普段は直接触れ合う機会が少ない高校生、大学生に接することで、新たな刺激を受けるケースも多いようだ。「高校生が建築に興味を持っていることが分かりうれしい」といった声が聞かれた。また、高校生が想像していた以上に「しっかりしている」と驚く意見もあった。ただ、建築に興味がある学生・生徒が多いのに対し、土木についてはよく知らない学生・生徒が多いことも明らかになった。建設業界、とりわけ土木の世界に興味を持ってもらうためには、まだまだ若い世代へのアプローチが十分とはいえないことが浮き彫りになった。一方で、イブニングサロンに参加した学生・生徒の約8割が土木の道に進んでいるという結果も出ている。これからも進路を決定する前の学生・生徒を対象としたこうした取り組みを地道に続けていく必要があるだろう。

17年度も引き続きイブニングサロンを開催していく。7月4日に愛知工業大学名電高校、7月10日に名古屋大学で開催した。今後、他の学校でも開催を予定している。




10日に名古屋大学でイブニングサロンを行った




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担い手確保育成推進事業





 建設業界では、若年層の入職者不足とともに、他産業と比べて離職率が高いことも課題となっている。愛知県内の建設業就業者数は02年には342000人だったが、16年には264000人まで減少した。一方で、入職3年目までの離職率は上昇傾向にあり、特に高卒で入職した人の入職後3年間の離職率は、09年には37%だったが、12年には45%まで上昇。4年間で1.2倍にまで増えてしまった。半数近くが入職3年以内に退職してしまっている状態だ。


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こうした状況に少しでも歯止めをかけようと、建設業界に興味を持ってもらう取り組みとともに、16年度は建設業界に入職した若い人材の育成にも取り組んだ。担い手確保育成推進事業だ。同事業では、国の交付金を活用し、企業の若手技術者・技能者向けと企業内トレーナー向けの各種研修を行った。企業に新規雇用者を指導する人的な余裕がないケースや、効果的な指導のノウハウがない企業も多いからだ。主に若手の技術者・技能者のスキルアップにつながる9種類の研修を行った。今回の事業の最大の特徴は、いずれの研修も無料で参加できたという点だ。このように県が直接研修を行うのは珍しい取り組みだという。

若手技術者・技能者向けの研修では、新入社員や内定者向けの研修を行った他、土木・建築施工管理技士の学科試験受験対策の研修や安全衛生についての研修、専門技能を学ぶ研修などを開催した。

4月の入社を前に開催した内定者向け研修では、ストローで造った構造物の高さを競うゲームや、現場見学を通じて、参加者は建設会社で働く心構えと基本技術、コミュニケーション能力などを学んだ。

一方、16年度に入職した新入社員向けの研修では、参加者は、あいさつや名刺交換などのビジネスマナー、安全管理の基本や建設業法・労働安全衛生法などについて学んだ。自信を持って現場で働けるようになることを目指し、5日間の日程で集中的に研修を行った。

また、女性技術者・技能者を対象とした研修も開催した。女性の強みを生かした建設業での働き方について、ディスカッションなどを通じて考えてもらった。女性の活躍事例として現場の見学も行い、参加者はそれぞれが今後のビジョンを明確にしたようだ。

企業内トレーナー養成研修には、建設企業内で、若手社員の上司や社内研修の講師を務める人、部下がいる幅広い年齢や立場の人が参加した。チームに分かれて点数を競うゲーム形式を取り入れながら進行。若手社員を育成し、定着させるための手法を、演習などを交えながら学んだ。それぞれの会社の社員育成に関する制度や手法などについて情報交換する場にもなったようだ。

これらの研修の結果を踏まえ同部は、建設業担い手確保・育成推進マニュアルと好事例集を作成した。同マニュアルには、新規採用、人材育成研修などの方法を盛り込んでいる。新規採用については、採用計画の立て方や新卒・中途採用の方法などをまとめた他、採用活動の好事例も紹介。また、人材育成研修については、育成のポイントや指導の基本、OJTとOFF-JTの手法やカリキュラムなどを解説している。同マニュアルと好事例集は、今後の人材育成に役立ててもらうため、建設業団体などに配布した。また同マニュアルについては同部建設企画課のホームページにも掲載している。

同部はこの他にも、小・中学生を対象とした現場見学会や出前講座の開催など、建設業の魅力のPRに努めている。また、現場で働く人の労働環境の改善を目指し、建設労働環境改善工事にも取り組んでいる。土・日曜日の2日間を休日とし、連続した2日間の休暇の取得を目指す「完全週休2日制工事」と、男女別環境改善型トイレの設置を必須条件に、環境整備を一つ以上提案する「誰もが働きやすい現場環境整備工事」を進めており、17年度も16年度を上回る件数の発注を予定している。

建設業は、社会インフラの整備やまちづくりの担い手として人々の暮らしを支える、非常にやりがいのある仕事だ。人材を確保するためには、若者に将来の選択肢の一つとして考えてもらえるよう、この魅力を少しでも多くの人に伝えていくしかない。同部はこれからも行政としてできる取り組みを地道に続けていく考えだ。

 



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内定者を対象とした研修のようす




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