建通新聞社

建設新聞読むなら建通新聞。[建設専門紙]

【愛知、岐阜、三重】頻発・激甚化する災害への備えは

ホーム > 特集 > 特集 > 【愛知、岐阜、三重】頻発・激甚化する災害への備えは


(2018/8/31)



【愛知、岐阜、三重】頻発・激甚化する災害への備えは

〜復旧へ被災地下支え 国交省中部地方整備局TEC-FORCE〜


 



 頻発化、激甚化する自然災害に対して国や県の備えは万全か。7月に発災した「平成30年7月豪雨」では、広島県や岡山県、愛媛県をはじめ多くの地域が被災し、大勢の死者や行方不明者を出すなど甚大な被害をもたらした。災害が甚大化した原因の一つに大量の降雨による河川堤防の決壊、斜面・法面の崩壊などが挙げられる。この特集では、被災地に迅速に派遣されたTEC-FORCEの活動を紹介するとともに、愛知県、三重県、岐阜県の河川整備計画の策定状況、同豪雨災害で被災した岐阜県のBCM(事業継続マネジメント)による対応をまとめた。



 



 2008年度に創設されたTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)は、本年度で創設10年を迎えた。中部地方整備局でも約1400人の職員がTEC-FORCE隊員として任命され、被災地での支援活動を展開している。2018年度も大阪北部地震や7月に発災した「平成30年7月豪雨」に多くのTEC-FORCE隊員が派遣され、被災地の復旧・復興に向け活動を行った。ここでは、「平成30年7月豪雨」で被災した広島県や岡山県、愛媛県を始め、地元岐阜県でのTEC-FORCEの活動を追った。



国土交通省では、大規模災害発生時、迅速に被災自治体への支援体制を整えるため、2008年度にTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を組織し、これまでに東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨など81の災害に対し、延べ約6万人・日の職員を派遣し、多くの被災地の復旧支援に携わってきました(18年3月現在)。

中部地方整備局においても、現在、約1400人の職員をTEC-FORCE隊員として任命し、今年度も大阪府北部地震、「平成30年7月豪雨」時に、職員、そして協力業者が被災地に出向き、復旧への支援活動に努めています。

TEC-FORCEは、創設から10年が経過し、これまで培った経験をもとに、引き続き研修の実施、資機材などの拡充などを図り、支援体制の強化に向け積極的に取り組んでいきます。



 


岐阜県下呂市内被災状況調査(7月11日)



「平成30年7月豪雨」での対応

7月3日から降り始めた雨は西日本を中心に8日まで降り続き、中部管内でも多いところで累加雨量が1000_を越えるなど、非常に多くの降雨を観測しました。

中部地方整備局では7月5日に災害対策本部を設置し、岐阜県庁および11の地方自治体へリエゾン(災害対策現地情報連絡員)を派遣し、情報収集・連携強化に努めるとともに、排水ポンプ車の出動、直轄国道の事前通行規制を実施するなど、被害拡大防止に努め、雨雲が遠ざかった後には、多くの降雨を観測した地域を中心に、防災ヘリコプタを用いて上空より被災状況の確認を行いました。

広島県、岡山県、愛媛県などでも、土砂災害や浸水被害が発生し、被災地からは国土交通省へ支援要請が寄せられ、7日から岡山県、愛媛県、10日から関市・下呂市、18日から広島県に順次現地入りし、TEC-FORCE活動を開始しました。



 



関市、下呂市での活動

関市および下呂市からは、河川および道路施設の被災状況調査を要請され、7月10日から13日までの4日間で、合計140カ所の被害状況を取りまとめ、両市長へ報告しました。

この報告書を基に、災害復旧事業への申請が行われ、復旧工事の早期着手が図られました。



 


岡山県倉敷市内排水作業(7月8日)



岡山県内での活動

岡山県内では、7月7日朝までに倉敷市内の堤防が決壊し、広範囲で浸水する被害が発生しました。これを受け、同日午前には、中部地整から8台の排水ポンプ車と4台の照明車が出発、8日から全国より派遣された排水ポンプ車とともに、夜通しの排水活動を開始し、約1200fの浸水箇所の排水を3日間で完了させ、早期の生活再建に寄与しました。

また、倉敷市長からの要請により、民地に流入した土砂を運び出す際に必要な土のう袋を約11万袋送り届けるなど、被災地の要請に応じた復旧支援を実施しました。



 



広島県内での活動

広島県内では、砂防施設の被災状況調査やドローンによる河川内の堆積土量・樹木繁茂状況調査を実施したほか、普段は名古屋港内の航路浚渫を行っている船舶の清龍丸を活用し、呉市への緊急物資輸送支援を行い荷下ろし後、現地での被災者入浴支援(約1200人の利用)を実施しました。



 


広島県三原市内ドローンによる被災状況調査(7月21日)



愛媛県内での活動

愛媛県内でも、7月7日から先遣隊、8日から河川・道路施設の被災状況調査班を派遣し、約3週間にわたり被災調査の支援をしたほか、散水車を2台派遣し、西予市での路面清掃活動、宇和島市での生活雑用水の供給を行い、上水道被災地域での給水活動を実施し、被災地での生活再建を下支えしました。

今回の災害では、現時点で、職員135人と協力業者(32社132人)とともに、TEC-FORCE活動を実施し、復旧への支援活動に努めてきました。各地で猛暑となる厳しい環境下での活動となりましたが、外業を早朝と夕方に集中させるなど健康管理も行いながら、8月6日までに活動を終え、無事帰還することができました。この場を借りて、ご協力いただいた関係者の皆さまにお礼申し上げます。



 



大規模災害への備え

2018年2月、政府の地震調査委員会が、関東から九州・沖縄地方までの広い範囲で被害が想定される南海トラフ巨大地震について、2018年1月時点での今後30年以内の地震発生確率を、従前の「70%程度」から「70〜80%」に引き上げを行うなど、当該地域で大規模災害発生の可能性が高まってきています。

中部地方整備局では、この地震に備え、11年10月「南海トラフ地震対策中部圏戦略会議」を立ち上げ、130を越える団体と共同で南海トラフ巨大地震発生時の対応を考えるとともに、連携を強め、対応力向上に努めています。

また、2018年6月には、全国で初めて南海トラフ巨大地震発生を想定した「南海トラフ巨大地震におけるTEC-FORCE活動計画(受援計画)」を策定し、全国から集結するTEC-FORCE隊員の最大人数、災害対策車両台数、それら部隊を円滑に受け入れる体制や活動拠点などを具体的に定め、迅速かつ的確な派遣と災害対応が実現するよう進めています。

この他、道路管理者が連携し、啓開作業を行う中部版「くしの歯」作戦や、濃尾平野が津波により広域に浸水した場合の排水計画の具体化を進めるとともに、業界団体とも意見交換・調整を行いながら、発災時の被害の最小化・早期復旧に向け取り組んでいきます。(寄稿国土交通省中部地方整備局)



 



愛媛県宇和島市内散水車による生活雑用水の支援(7月28日)



このページのトップへ


 


豪雨に備え整備進む

〜東海3県の河川整備取り組み〜


 



 2018年も全国各地を豪雨が襲った。被害状況の報道に触れる度、自分の住む地域の安全性に不安を覚えた人も多いのではないだろうか。浸水被害をもたらす規模の豪雨が頻繁に発生する中で、河川整備の重要性はますます高まっている。愛知県・岐阜県・三重県の河川整備の進捗や今後の展開を取材した。また、平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けた岐阜県の応急復旧の取り組みを紹介する。



 



愛知県



日光川水閘門



 愛知県が管理する河川は284河川、1800`ある。このうち河川整備計画の策定の対象となる河川は254河川。176河川についてはすでに計画を策定済みで、汐川水系については現在、国土交通省に申請中だ。また、梅田川水系などは現在、策定作業を進めている。

河川整備計画の目標は、「年超過確率5分の1の規模の降雨による洪水を安全に流下させる」ことが基本だ。これは名古屋地区でいうと、1時間雨量52_に当たる。ただ、流域に人口密集地を抱えるなど、浸水被害が起きた場合に影響が大きい主要河川については、年超過確率20〜30年の規模の降雨を計画規模として対応を進めることとしている。

県管理の284河川、1800`のうち、山間部などを除いた改修が必要な延長は1200`。このうち54.2%は年超過確率5分の1の規模の降雨への対応が完了している。県内を四つの圏域別に見ると、庄内川・木曽川圏域は48%、知多半島圏域は72%、矢作川圏域は54%、豊川圏域は57%の対応が完了している。知多半島圏域が突出して高いのは、災害対応で一気に対策が進んだためだ。

ハード整備は、床上浸水被害などの大きな被害が発生した箇所に重点を置いて進めている。2011年度に越水が発生した地蔵川・八田川では、17年度に床上浸水対策特別緊急事業に着手。5カ年で地蔵川に排水機場を整備する他、八田川の堤防の嵩上げと拡幅を行う計画だ。18年度は堤防の拡幅工事に着手する予定となっている。

また、国が17年度の補正予算で計上した中小河川緊急治水対策プロジェクトを活用し、青木川の第3調整池の整備や、五条川・合瀬川の整備も進めており、18年度に供用を開始する予定だ。

この他、青木川放水路については、未着手となっている最上流部の昭和川〜奈良子川間の区間について、18年度に着工する。5カ年で整備を完了させる計画だ。また、境川では、17年度に年超過確率5分の1の規模の降雨に対応する改修が完了したため、18年度から年超過確率20分の1の規模の降雨に対応した改修事業をスタートする。18年度は、中堤を撤去する工事に着工する。豊田市中心部を流れる安永川では、ラグビーワールドカップの開催に向けて改修事業を進めており、19年度に完了させる計画だ。

こうしたハード整備と合わせて、ソフト対策も欠かせない。愛知県では、28河川の浸水想定区域を公表している。現在、想定し得る最大規模の降雨による浸水想定の検討を進めており、20年度までに示す予定でいる。示された浸水想定区域を踏まえ、市町村はハザードマップを作成していくことになる。

また、中小河川緊急治水対策プロジェクトの対策の一つとして危機管理型水位計の設置にも取り組んでいる。18年度は50基程度の設置を予定している。

17年度には県内を庄内川・木曽川圏域、豊川圏域、矢作川圏域、知多半島圏域―の四つの圏域に分けて水防災協議会を設立。取り組み方針を策定した。この方針に、「みずから守るプログラム」の取り組みを盛り込んだのが特徴だ。住民が街歩きをして、雨の降り始めに危険な場所などを把握。手作りハザードマップを作成し、それを基に訓練を行う取り組みだ。こうした取り組みをさらに充実することで、被害を少しでも軽減させる考えだ。

豪雨の発生頻度が高まり、規模も大きくなる中で、治水対策の重要性はますます高まっている。一方で愛知県は現在、第3次あいち地震対策アクションプランに基づき、地震対策を重点的に進めている。治水対策と地震対策をバランスよく並行して進めていくことが求められている。



 


このページのトップへ



三重県



工事が進む志登茂川



 三重県では、毎年のように台風などに伴う豪雨や局所的な大雨に見舞われ浸水被害が発生している。近年では、2011年9月の台風第12号〈紀伊半島大水害〉や17年10月の台風第21号に伴う豪雨により甚大な浸水被害が発生した。河川堤防の緊急の補強などを進めているが、さらなる防災・減災に向けた河川堤防などの河川整備が求められている。そこで、河川整備の状況に焦点を当てた。



〈ハード対策河川〉

県が管理する河川は、1級河川が354河川、2級河川が192河川の計546河川。河川整備に当たっては、30河川を「ハード対策河川」、ハード対策河川として取り組んでいく候補として71河川を「ハード検討河川」と位置付けている。



〈河川整備進捗状況〉

河川整備の進捗を表す河川整備率は、5〜10年に1度起こりうる洪水に対応した整備の状況を示している。三重県における対象河川数546河川に対しては、05年度末時点では37.1%で、ここ数年の状況を見ると、14年度末が39.1%、15年度末が39.1%、16年度末が39.2%となっている。



〈河川整備計画の策定状況〉

河川法に基づく「河川整備計画」の策定に当たり、県では、河川の優先度を評価し、計画的に河川整備を実施する河川を対象に作成を行っている。計画策定の対象河川数は44河川で、このうち、18年7月時点では、39河川で計画を策定した。残る5河川についても、順次、策定に向けての手続きを進める。



〈18・19年度整備予定箇所について〉

18・19年度に県土整備部各事務所が予定する主要な18河川の事業の各年度の概要は次の通り(@18年度事業A19年度事業)。

◇桑名建設事務所

▽員弁川(桑名市稗田)―@河川改修工、用地買収A河川改修工、用地買収

◇四日市建設事務所

▽朝明川(四日市市高松他)―@河川改修工A河川改修工

▽三滝川(四日市市新浜町〜西浦)―@河川改修工A河川改修工、地質調査、詳細設計

◇鈴鹿建設事務所

▽芥川(鈴鹿市加佐登町〜庄野町)―@河川改修工、橋梁詳細設計、用地測量、用地買収A河川改修工

▽椋川(亀山市川合町)―@橋梁工、河川改修工A橋梁工、河川改修工▽堀切川(鈴鹿市白子町)―@河川改修工A河川改修工

◇津建設事務所

▽安濃川(津市野田)―@河川改修工A河川改修工

▽志登茂川(津市江戸橋他)―@河川改修工A河川改修工、詳細設計

▽相川(津市高茶屋小森上野)―@河川改修工、用地買収A河川改修工、建物調査

◇松阪建設事務所

▽三渡川(松阪市小津町〜六軒町)―@橋梁工、河川改修工A橋梁工、河川改修工

▽百々川(松阪市松ケ島町〜松崎浦町)―@建物調査、用地買収A迂回(うかい)路工、水道管補償

◇伊勢建設事務所

▽五十鈴川(伊勢市楠部町)―@河川改修工、用地買収A河川改修工

▽大内山川(大紀町崎)―@河川改修工A河川改修工

▽桧尻川(伊勢市船江)―@河川改修工A用地買収▽奥川(大紀町錦)―@詳細設計A水門工

◇伊賀建設事務所

▽木津川(伊賀市大内〜比土)―@詳細設計、用地買収A河川改修工、地質調査

◇熊野建設事務所

▽志原川(御浜町志原〜熊野市久生屋町)―@用地測量、用地買収A橋梁予備設計、用地買収

▽熊野川(熊野市紀和町和気)―@河道掘削工A河道掘削工





〈西日本豪雨を受けての対応について〉

18年7月に発生した西日本豪雨を踏まえ、県では河川堤防脆弱(ぜいじゃく)箇所の緊急点検を7月12〜30日に実施した。17年度の法定点検の結果により、「補修又は更新等の対策が必要な状態」の52カ所、または「対策を実施することが望ましい状態」の50カ所の計102カ所を対象に点検した結果、「波瀬川(津市一志町波瀬)」の1カ所で「変状」があり、応急対策を8月上旬に実施した。本復旧については、18年度の非出水期に対策を行う予定。



 


このページのトップへ



岐阜県



広域河川改修を進める鳥羽川



 岐阜県には6水系あり、このうち、河川整備が必要な4水系(木曽川、庄内川、矢作川、神通川)の指定区間を対象に、流域・地域特性から県内を14の圏域に分け圏域単位で河川整備計画の策定を進めている。2001年度〜15年度までに11圏域で策定しており、災害の発生などに応じた整備計画の変更も行っている。

04年10月の台風第23号では、県内河川に甚大な浸水被害や、河川管理施設への被害が出た。これを受け、県内の主要な五つの流域(長良川、揖斐川、木曽・飛騨川、土岐川、宮川)において、水害に対する安全・安心を高めていくための「岐阜県新五流域総合治水対策プラン」(新五流総)を07年度に策定し対策を進めている。

新五流総は、東日本大震災や12年の九州北部豪雨災害などの大災害を踏まえ、13年度に河川構造物の耐震化や長寿命化などの維持管理の観点も追加した。また、流域ごとに学識者、関係首長、河川活動団体代表者、水防団・消防団長、関係行政機関などで構成する「新五流総地域委員会」を設け、14年度から23年度の10年間を目標に定め整備区間の進捗状況などを確認している。

流域別にソフト対策を含む河川の整備進捗状況(2016年度末現在)を見ると、長良川流域は、改修対象延長35.75`に対し進捗率は20%。揖斐川流域は、改修対象延長が15.7`で進捗率は24%。木曽・飛騨川流域は、改修対象延長が28.71`で進捗率は43%。土岐川流域は、改修対象延長が3.71`で進捗率は30%。宮川流域は、改修対象延長が9.2`で進捗率は22%となっている。

河川構造物の耐震化状況としては、長良川流域と揖斐川流域で排水機場がそれぞれ2基ずつあるが未整備だ。樋門・樋管は、長良川流域で15基に対し47%の進捗となり、揖斐川流域で5基に対し40%の進捗となっている。木曽・飛騨川と土岐川流域は対象構造物の耐震化は完了しており、宮川流域での対象はない。

17年度末時点での5流域別の主な河川整備状況を見ると、長良川の関市戸田や、水門川の大垣市船町、飛騨川の下呂市湯之島、土岐川の瑞浪市土岐町、江名子川の高山市大新町等などで、河道掘削や築堤、で橋梁の架け替え、護岸工を進めてきた。

ソフト面では、過去に浸水被害のあった箇所などに水位計や河川監視カメラを設置するとともに、浸水の高さを示す表示板の設置も順次進めてきた。



 


このページのトップへ


杭瀬川



 さらに18年度の河川整備としては、「広域河川改修事業」、「総合治水対策特定河川事業」、「特定構造物改築事業」「総合流域防災事業」、「総合河川環境整備事業」、「ダム事業」でそれぞれ整備を進める。

広域河川改修事業では、鳥羽川(山県市高木)や石田川(岐阜市北野北)、伊自良川(岐阜市安食)、水門川(大垣市北方町)、杭瀬川(大垣市赤坂町)、津屋川(海津市南濃町志津)、長良川(関市戸田、美濃市立花、郡上市美並町三戸・美並町上田・美並町高砂・八幡町稲成)、久々利川(可児市久々利)、土岐川(瑞浪市土岐町)を対象に整備を進める。

総合治水対策特定河川事業では、境川(岐阜市下川手他)を整備する。

特定構造物改築事業では、旧水門川排水機場(大垣市横曽根)や山田川排水機場(岐阜市祇園)を対象に整備する。

総合流域防災事業で整備対象となる河川は、荒田川(岐阜市六条江東)や加茂川(美濃加茂市太田町)、肥田川(土岐市肥田町)、小里川(恵那市山岡町田沢)、苔川(高山市西之一色町)、江名子川(高山市大新町)などとなる。

総合河川環境整備事業は、川浦川(富加町滝田)の整備を、ダム事業としては内ケ谷ダム(郡上市大和町内ケ谷)の整備を促進する。

岐阜県内では、7月3日〜9日までに降った「平成30年7月豪雨」により、河川や道路、農・林業施設などに大きな被害が出た。各土木事務所から概算された被災件数は700件を超えており、その中には多くの河川の被害も報告されている。県は国に対し査定を要望しており、8月に査定決定した18件に続き、9月10日以降も順次査定し、予算決定後に工事を発注する。



 


岐阜県建設業広域BCM認定制度について

〜2018年7月豪雨対応、災害時に円滑な応急対応〜


 



 西日本を中心に全国各地で甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」。中部地域では岐阜県が大きな被害を受けた。応急復旧に迅速な対応をした岐阜県は、各種団体と連携を図るだけでなく、2017年度に県内7カ所に設けた災害時応急対策用資機材の備蓄拠点が機能した。さらに、14年度に運用を開始した他県にはない「岐阜県建設業広域BCM認定制度」を持っている。建設業の事業継続力を高める取り組みが重要なことは今回の災害からも分かった。7月豪雨対応について岐阜県の建設業広域BCM認定制度を中心に紹介する。



 



豪雨と被害状況

今回の災害の特徴は長時間にわたって大雨が継続したこと。県内で観測史上1位となる72時間雨量を記録した観測地点は9市町村の16カ所、累積雨量が1000_を超えた観測地点は郡上市内で3カ所あった。

県内全域に影響があったが、被害は特に中濃、飛騨地域で大きかった。1人が亡くなり、重軽傷は3人。住家被害は全壊が12棟、半壊が236棟、一部損壊が5棟あった。

土木被害(国を除く)は工種別に河川が380カ所(県202、市町村178)、砂防が53カ所(全て県施設)、道路・橋梁が261カ所(県90、市町村171)、下水道などが6カ所(全て市町村)だった。



災害応援協定を結んでいる団体の出動状況

県と災害時応援協定を結ぶ16の建設業関連団体(表@参照)のうち、岐阜県建設業協会(岐建協)傘下の各地区建設業協会、岐阜県測量設計業協会、全国特定法面保護協会岐阜県事務所(特法面岐阜事務所)が応急復旧や災害調査を行い、迅速な応急復旧が行われた。



 


このページのトップへ



災害時応援協定を結ぶ16の建設業関連団体



このページのトップへ


 



岐阜県建設業広域BCM認定制度と効果など

岐阜県では、大規模災害時に社会資本の早期復旧を支える建設業の事業継続力を高める取り組みを進めることで地域防災力の向上を図るため、災害応援協定を結んでいる建設業関連団体の事業継続計画(BCP)とその改善に向けた継続的な活動を含めた事業継続マネジメント(広域BCM)の認定制度を創設し、14年4月に運用を開始した。第1号の認定は岐建協。8月1日現在で6団体(表A参照)が認定を受けている。

認定団体の7月豪雨での活動状況は、岐建協と特法面岐阜事務所が出動している他、各団体が事前に定めたBCPに基づき、各団体内の災害対策本部の設置や、災害情報の収集、体制確保に向けた従業員の安否確認を行っている。



 



岐阜県建設業広域BCM認定団体



 



今回の災害対応について、県が認定団体へ聞き取りをしたところ「緊急時の行動や体制がマニュアル化されたことにより、活動の流れが確立され、災害時には迅速で的確な対応が可能となった」とし、さらに「災害を具体的に想定した訓練を行うことで、認定前よりも防災意識が向上した」の意見があった。

県の担当者は「認定団体の職員がBCMに基づき自動参集し災害対策本部を設置したと聞いている。団体が県内全域の協会員の安否確認や災害発生状況を随時把握していることは、万が一の大規模な災害発生への備えとして、組織力・機動力の強化につながっている」と話す。

広域BCM認定の課題とメリットについては、「災害応援協定を結ぶ16団体のうち、認定を取得しているのは6団体にとどまっていることが課題」(県担当者)としている。今後「BCMの制度を改めて周知し、より多くの団体が取得できるようにサポートをしていく必要がある」と話す。

メリットについては「広域BCM認定は、各団体における事業継続力の向上を通して、広域的な災害発生時に円滑な応急対応を目的とするもの。官民両者に役立つ」(県担当者)。

岐建協の佐竹武会長は、広域BCMや地域の安全を支える力について「BCP、BCMへの取り組み効果などもあり、今回は人員や重機を確保できたが、これ以上の災害が発生した場合、建設業界は以前に比べて業者数や作業員数も減っており、対応が困難になることが予想される」と、自然災害拡大への懸念を示した。さらに「災害時の応急工事に対応できる技術者や指導者の育成も必要だ」とした。



 



災害応急対応の様子



このページのトップへ


 


建通新聞をご購読いただいていない方へ

建通新聞とはこんな新聞です!!

「信頼と実績」建通新聞の購読 建設産業界の専門紙。完全な地域密着の報道を心がけ、読者に最も必要な情報を的確に伝える本紙。各支局の記者たちが足で探し、目で確かめ、報道する。読者が今、どんな情報を求めているのか、建設産業界の新聞として何を伝えていかなければならないのか、その地域に即した内容を伝えている。 建通新聞サンプル

>>建通新聞の購読申込はこちら
>>建通新聞電子版はこちら