高齢化の進行とともに、介護サービスのニーズは間違いなく増大している。その一方では、2000年に介護保険制度がスタートして以降、制度の維持と費用負担の在り方に関心が集中し、介護の現場で働く人たちの処遇はややもすると二の次、三の次にされてきた。
しかし、旧訪問介護大手コムスンの不正が社会問題化したことを契機として、マスコミが介護現場の実態に目を向けるようになり、介護労働者の処遇改善の必要性がようやく社会に理解されるようになってきている。国は09年4月に介護報酬を改定、同年10月からは介護職員処遇改善交付金を支給するようにもなった。
それでもなお介護現場の「人材不足」感は払拭されていない。
財団法人介護労働安定センターが行った「2009年度介護労働実態調査労働者調査」(複数回答)の結果からも、「人材不足」に頭を痛めながらも「良質な人材の確保」が思うにまかせない介護現場の状況が浮き彫りになっている。
介護事業所側は「今の介護報酬では、人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」(71・6%)、「経営(収支)が苦しく、労働条件や労働環境改善をしたくても出来ない」(44・2%)と嘆き、介護労働者側は「仕事内容の割には賃金が低い」(58・3%)、「業務に対する社会的評価が低い」(41・3%)ことなどを不満に感じている。
介護は「人が、人をケアする」仕事。それだけに介護労働者にのし掛かる精神的な負荷は大きい。施設系で働く人は「夜間や深夜の時間帯に何か起きるのではないか」「転倒などの事故を起こさないか」と神経をすり減らし、訪問サービスに従事する人は「法で定められたサービス以外の仕事を要求される」ことも少なくないという。
要介護者はもちろんのこと、家族の満足を得るケアをしようとすればするほど、介護労働者の健康や精神への負担が増す―どうやら、それがいまの介護の実情のようだ。