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地元デベロッパーに聞く

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 建設経済研究所がまとめた建設投資の見通しによると、2016年度の建設投資は前年度比1.9%減の48兆7400億円と推測している。このうち、政府建設投資は減少を見込んでいるものの、民間建設投資は増加すると予測する。中でも17年4月に予定されている消費増税による駆け込み需要の影響も加わり、住宅着工戸数は4.3%増の96.3万戸を見込む。

そこで、19年に会社創立100周年を迎える静岡鉄道の坂口智彦不動産分譲事業部長と、積極的に不動産開発を展開しているヨシコンの吉田立志社長に、16年の投資計画や経営戦略について聞いた。



 



「総合街づくり企業」を目指す




 ―マンション事業の見通しについて伺いたい。

来期(2017年3月期)は、消費増税の駆け込み需要を見込んで、8棟から10棟を計画している。駅前や中心市街地の開発を手掛けており、市街地活性化に貢献していきたい。また、管理事業もしている強みを生かし、日常生活に関連するサービスとともに、単なる住居ではなく良好な生活空間を提供していきたい。



 ―今後の投資計画は。

近年では大型用地を複数購入するなど、分譲マンションだけから商工業施設を誘致する開発にも展開している。例えば、袋井IC前では物流施設や商業施設の誘致、西友清水跡地では商業施設、ホテル、マンションなどの併設、草薙駅前では文教エリアにマッチした施設、丸子では工業団地開発を検討しており、この他にも数千坪単位の案件が複数ある。また、不動産投資以外にも、従業員一人当たりの生産性を向上させ中長期にわたって持続的発展が可能となるよう積極的に投資を行っていく。



 ―不動産事業とインフラ事業が二本柱になっている。

インフラ事業は、公共中心の土木製品では電線地中化や豪雨対策商品などに特化し、民間主体の建築資材に主力を変えていく。生産労働人口減少に伴う技能労働者の減少でプレキャストによる省力化が一挙に進むとみて、複数の会社とも提携を進めており、東京や名古屋など大都市圏からも大型案件が入ってきている。

今後はより一層「待ちの営業」から「攻めの営業」、つまり自身で市場を創造する営業に切り替えていく。来期の売り上げは300億近くになる見込みだが、見る高さが違うと風景が変わるように、企業も規模とともにその土俵が変化していく。そこに経営者や社員の意識の変化が伴わなければ企業の繁栄はない。



 ―県外進出も考えているのか。

出ていくとしたら神奈川、東京になり、すでに業務提携や人材確保には当たっている。県外企業を誘致するだけでなく、将来的には県内企業と組んで県外で開発事業を展開していきたいが、県内企業には「やらまいか」のチャレンジ精神が今一つだ。

民間企業は人材を雇用し、投資をするなどリスクをとって仕事をしており、県内がよくなければ県外に出てしまう。それに対して行政は動きが遅く、保守的になりがちだ。現在は、日本と海外・静岡県と他県・市町村同士で、投資や雇用を伴う企業の争奪戦となっている。少子高齢化が避けられない中、行政も長期的視点に立って、これまでの枠組みの見直しや規制緩和を考えるべきだ。



 ―静岡の街を皆でよくしていきたい思いが強いと聞いた。

例えば、西友清水跡地にホテルを設けるにしても、できるだけ地元を優先したい。また、駅前や中心市街地での再開発では、子育て施設を組み合わせ、0歳児から預けて職場復帰できる態勢を作れば、働きやすい環境づくりの一助になる。

私は、静岡県都市開発協会の理事長、全国住宅産業協会の副会長という団体の役員をしており、国土交通省など官僚と会話する機会があるが、国の施策は少子高齢化や財政問題からも大きく変化をしており、行政や公社が住宅地をつくる時代から、民間活力を利用したコンパクトシティが街づくりの主力となってきている。静岡県でも行政が民間とともに街づくりを考える全員参加型街づくりが必要になる。

にぎわいを無くさないためには、産業を誘致し、人を集めないといけない。行政は「規制がある」「前例がない」というだけでなく、民間と一体となって取り組む姿勢が必要だ。「総合街づくり企業」を目指すヨシコンとしての役割も、事業を通じて静岡の街をよくしていくことにあると思う。



 



草薙・藤枝で約250戸を開発




 ―マンション需要と今後の見通しをどうみるか。

直近の話で言えば、消費税10%への増税を控えており、これまでの経験則から駆け込み需要はあると思っている。これから増税半年前くらいまでは需要はあるだろう。

草薙の再開発マンションや大岩のマンションは完売しており、現在当社が販売している物件は1棟だが、立地条件などが整えば、まだまだ需要はあると考えている。



 ―魅力の創出へ街づくりも含めて取り組む考えはあるか。

当社としても人が集う街づくりは一つの目指す方向性であり、われわれ不動産分譲事業部門では市街地再開発事業などを通して街を活性化させることは重要なテーマだと考えている。

現在、静岡駅周辺で再開発手法を検討しているところは四つほどあるが、当社でも、地権者や事業者を含め一緒に勉強会を行っている。



 ―どういうマンションが売れるのか。

立地だけでなく価格なども含めたさまざまな要素がある。われわれも日々、どのようにしたら魅力を感じてもらえるかと努力している。

ただ、駅近で早期に完売する物件と郊外で時間がかかる物件もある中で、相続対策などの理由もあるのだろうが、タワー系マンションは売れ行きが好調だ。



 ―御社のマンションの特徴は何か。

タワー系のマークス・アネシスタワーとそれ以外のグランアネシスとの二本立てで展開しているが、いずれも防災力強化をうたっている。

災害に備えるのは当たり前として、災害後の暮らしに視点を置いている。ライフラインが途絶えたケースを想定し、自家発電装置を設置し各戸で電力が使用できるグリーンコンセントなどを備えている。

収納力と可変性も特長の一つだ。収納は一般的なマンションでは4〜6%と言われるが、当社では10%以上を確保する物件も供給している。可変性は、家族構成の変化に対応するスライドウォール、スライディングウォールといった可動式間仕切りを採用している。



 ―2016年はどのような投資を計画しているか。

草薙駅北口のマンション計画を今年から来年にかけて進める。また、藤枝市駅前一丁目8街区の再開発事業に参画し、マンションを販売することになっている。合わせて250戸くらいの開発を計画している。

また、厳選しながら、土地の仕入れを行っていきたい。中部地区だけでなく、沼津、三島、長泉町あたりまでは実績があり、幅広く用地を探している。



 ―2019年に会社創立100周年を迎えるが、今後の展望は。

今後、人口減少に伴い、われわれの業界でもどのように対応していけるかが重要なポイントとなるだろう。

その中で、いつまでもマンションに頼っていられないという思いもある。そのため、戸建ての建て売り分譲や、リフォームにも注力していきたい。

100周年に向けては、何か目玉となるような事業ができればと考えている。




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