課題解決型から「価値創造型」へ
2019/6/17
土木学会第107代会長に就任した林康雄氏(鉄建建設代表取締役会長)
土木学会の第107代会長に就任した林康雄・鉄建建設代表取締役会長は17日、建設専門紙などとの共同インタビューに応じ、「土木界は、いまだかつてない大変革の時を迎えている。これまでの学会の取り組みはともすれば課題解決型だったが、これからは価値創造型に移行する必要がある」との認識を示した。その上で、「50年先、100年先の日本社会をけん引する社会基盤づくりはどうあるべきか、少しでも具体策を提言できるようにしたい」と話し、「年代・職域・性別の異なる土木技術者らで構成する学会の力を結集し、変革の時代に山積した課題に果敢に取り組んでいく」姿勢を強調した。
―就任に当たっての課題認識の一つに、適切なインフラメンテナンスの実現を挙げている。
「これまでのような会長特別委員会を置くかどうかは別として、メンテナンスの仕組みづくりについて議論、検討していきたい。建設後50年以上が経過するインフラの割合は今後、加速度的に高くなる。特に地方自治体が抱える膨大な数のインフラをどうやってメンテナンスしていくのかが最大のポイントだ」
「学会は社会インフラ健康診断特別委員会(委員長、橋本鋼太郎・元土木学会長)を組織し、道路、河川、下水道、港湾に加え、つい先ごろには水道部門の健康診断結果を公表してきている。これらはみんな公共施設で、これまで鉄道は民間事業者の施設だとしてインフラ健康診断の対象にしてこなかった。だが、140年もの長きにわたって施設を整備、運用、維持管理してきたわが国の鉄道には、効率的な仕組みも、やり方もある。人と資金をどう手当てするのか―。できれば海外の事例とも比較し、これを見える化したい。特別委員会は19年度が総括の年になる。これと合わせて何らかの方向性を示したい」
―社会構造の変化、日本経済の地盤沈下に対する危機意識を表明する一方で、日本経済の持続的成長に資するインフラ投資の必要性を指摘している。
「わが国は世界に類を見ない人口減少と少子・高齢化が進行している。19年の子どもの人口は1500万人。ピーク時から半減している。すでに産業間で人材の争奪戦は始まっており、建設業においては『担い手確保』が喫緊だ。働き方改革、生産性向上はもとより、若者、女性、シニア、外国人など広くダイバーシティを推進していく必要がある」
「今後の日本の成長エンジンとして期待されているのが、リニア中央新幹線などの鉄道インフラと高速道路ネットワークなどを組み合わせ、人口7000万人の巨大経済圏を現出させるスーパー・メガリージョン構想だ。この巨大経済圏構想の実現に欠かせないインフラ整備に集中投資を行う必要がある」
「だからといって、土木界の一人よがりになってはならない。学会の取り組みにしても広く国民に情報発信するとともに、広く国民の意見にも耳を傾け、相互理解を深めることが肝要だ。私としては、これまで培ってきた鉄道技術者としての視点から、今後のインフラ整備とメンテナンスの在り方について議論を深め、情報発信していきたいと考えている」
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