橘大地氏(たちばな・だいち=弁護士ドットコム(東京都港区)取締役クラウドサイン事業部長、クラウドサインNOW事業責任者)
2019/9/17
弁護士ドットコム(東京都港区)取締役クラウドサイン事業部長、クラウドサインNOW事業責任者 橘大地氏
契約手続きに紙や印鑑を使用せず、インターネットを介したクラウド上で完結させる電子契約。見積もり書・発注書・納品書などとさまざまなシーンでペーパーレス化を実現することで、業務の効率化やコストの削減が期待できる。IT業界などを中心に普及してきた契約書などの電子化は、建設・不動産業界においても、会社の規模や所在地に関わらず導入の効果が見込める。
電子化支援サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコム(港区)の橘大地氏に、電子化の意義などを聞いた。
◇ ◇ ◇
―クラウドサインの登録企業数は、延べ5万社を突破している。
「電子化は、既に大手企業やIT業界を中心に浸透しており、そうしたユーザー間では使うのが当たり前≠ノなりつつある。全体的に見て、電子化はこれから検討≠ニいう段階から今、まさに使用する<tェーズになってきたと感じている」
―導入の効果は何か。
「取引のスピードが変わる。いち早く取り組みが進んだIT業界を例に挙げると、重要な業務提携をする際に結ぶ秘密保持契約(NDA)の締結までに、書面だと2、3週間掛かるため、次回のミーティングは約1カ月後になる。これに対し、電子化を導入した企業は今日NDAを締結して、明日にはミーティングを行い、1カ月後に提携のプレスリリースを発表している。このように、電子化しているかどうかで企業競争力に大きな差が生まれる」
「また、電子契約にすると日本の税法上、印紙代が一切不要だ。さらにスマートフォンやタブレットを使えば、建設現場などでも簡単に契約行為が可能となる」
―地元、中小の建設業者にも電子化は有効か。
「追加・変更工事などが発生した場合、紙で正式に契約書を取り交わそうとすると、郵送の時間なども必要で、どうしても時間が掛かってしまう。それを避けるため口頭発注で済ませた結果、後になって聞いていた金額と違う∞別途工事として認めてもらえない≠ニいったトラブルにつながる場合がある。電子化すれば、こうした行き違いを解消できる。公正で透明な取り引きが実現する」
―不動産業界で取り組みが増加してきたと聞く。
「昨年、賃貸取引でITを活用した重要事項説明が一部解禁となった。10月には個人を含む売買取引のIT重説などに関する社会実験が始まる。これを契機に、中小も含め、導入に向けた動きが着実に広がっている」
―電子化をより普及させるには何が必要か。
「まず、業界全体で認知度を高めることが重要だ。ある企業が電子化を進めるとき、契約を結ぶ相手先にも電子化を理解してもらう必要があるからだ」
「さらに地域差もある。傾向として、東京・名古屋・大阪などの都市圏や、本社機能があるエリアで、電子化に取り組む企業は多い。しかし今、契約行為などで課題を抱えるのは地方や中小企業ではないか。人手不足、働き方改革など、さまざまな問題に直面している地方の方にこそ、ぜひ利用してもらいたい」
―今後の事業展開は。
「メールアドレスでやり取りしているクラウドサインに、ショートメッセージ(SMS)でも実行できる機能を追加する予定だ。9月末には対面型のペーパーワーク(来店時の申込書、雇用契約書など)をその場でタブレットなどに書き込めるサービス『クラウドサイン NOW(ナウ)』をリリースする。さまざまな選択肢を増やすことで、ユーザーの利便性の向上につなげたい」
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