2012年9月に大垣西インターチェンジ(IC)から養老ジャンクション(JCT)間の延長約6`が開通し、早期の全線開通が望まれている国道475号東海環状自動車道。16年度の補正予算では、東海環状自動車道西回りルートの岐阜県内区間に45億3000万円が配分された。当初予算分の345億6000万円と合わせた事業費は約391億円となり、過去最高となった。全線開通による事業効果や地元の期待と要望、さらには今後の事業の取り組みなどについて、地元を代表して東海環状自動車道岐阜県西部地域建設促進期成協議会の村瀬幸雄会長と東海環状自動車道西濃地域建設促進期成協議会の堤俊彦会長、整備を推進する国土交通省岐阜国道事務所の水谷和彦事務所長に登場していただき、紙面鼎談(ていだん)した。
(2016/10/31)
広域NWの形成で高まる期待
〜国道475号 東海環状自動車道西回り〜
――全線開通に向け伺いたい。
水谷 国道475号東海環状自動車道は、名古屋市中心部から30〜40`圏に位置する愛知・岐阜・三重3県の豊田市から岐阜市、大垣市、四日市市などの都市を環状に連絡し、広域的なネットワークを形成する延長約160`の高規格幹線道路だ。このうち、東回り区間の豊田東ジャンクション(JCT)から関広見インターチェンジ(IC)間の延長約76`に加え、12年9月に西回り区間の大垣西ICから養老JCT間の延長約6`が開通済みで、残る西回り区間の延長約71`のうち、岐阜県区間の延長約47`を当事務所が担当しており早期の完成が望まれている。
開通した区間以外では、関広見ICから高富IC(仮称)で、延長1324bの三輪トンネル(仮称)など4本のトンネルが貫通するとともに、延長1117bの山県トンネル(仮称)の工事に着手するなど、19年度の開通を目指して着々と工事を推進している。高富IC(仮称)から糸貫IC(仮称)間では、14年6月から用地取得を継続するとともに、14年10月から本巣市内で橋脚工事を進めている。糸貫IC(仮称)から大野・神戸IC(仮称)間では、本年度は延長約500bの根尾川渡河部の下部工工事を継続する。大野・神戸IC(仮称)から大垣西IC間では、19年度の開通を目指し延長約730bの揖斐川渡河部の上部工工事を継続し進めている。養老JCTから養老IC(仮称)間では、17年度の開通を目指して上部工や養老IC(仮称)など全面的に工事を推進している。養老IC(仮称)から岐阜県・三重県境間では、13年から用地取得を継続している。現在、全体の用地取得率が9割を超えており、一日も早い全線開通に向け事業を進める。
村瀬 東海環状自動車道は、新東名・新名神、東海北陸道などと連携し広域的な高速交通ネットワークを形成し、東海地域の産業・観光・文化をつなげる重要な高速交通アクセスだ。産業の高度化や新たな創出を目指す岐阜県に果たす役割は、極めて重要であり、その早期完成はわれわれ経済界にとっても長年にわたる悲願となっている。幹線道路は、結節して初めて外部効果を含めたネットワークとしての機能を発揮する。西回りルートを含めた全線供用が地域に与える経済効果は計り知れない。岐阜市北部にICが新設され、新たな玄関口ができれば、近隣県へのアクセス時間が短縮され、既存企業の業務拡大や企業誘致の増大に加え、観光客の増加や新たなライフスタイルの実現などの可能性が広がる。大野・神戸ICから大垣西IC、関広見ICから高富ICなど各地域において整備が進んでいる。今後も他区間の早期供用が図れるよう要望をしていきた。
堤 西濃地域には、名神高速道路をはじめ国道21号、258号をはじめとする多くの幹線道路が通っている。しかし、現状では十分な整備が行き届いているとは言いにくい。高速道路の建設は、目的地までの所要時間を大幅に短縮することによる、地域経済への波及効果が極めて大きく、産業基盤強化の面からも非常に重要である。
12年9月に大垣西ICから養老JCT間が開通し、企業の事業活動や観光事業などに役立てられており、今後の全線開通に向けて、大きな弾みとなっている。現在、養老JCTから養老IC(仮称)間については17年度に、大野・神戸IC(仮称)から大垣西IC間および関広見ICから高富IC(仮称)間については、19年度末までの開通が公表され、地元経済界を中心に全線開通への期待感が高まっている。残る区間についても一日も早く開通見通しが発表され、事業が確実に推進されることを地域の住民は強く望んでいる。西回りルートの機能を最大限に活用することができるよう、一日も早い全線供用を目指し、関係団体との連携による要望活動を今後も強力に推進する。
また、岐阜県および三重県の東海環状自動車道を利活用する自治体や企業などが協力し、アクセス道路や地域開発計画などを含めたストック効果について情報を共有しながら、地域の持続的なまちづくりを支援していく事を目的に、「東海環状西回り利活用促進会議」が設立されるなど、早期の全線開通に向けて、岐阜、三重両県が連携を深めている。
――17年度に開通する養老JCTから養老IC(仮称)間の開通と全線開通による経済効果は。
水谷 現在、国土交通省では公共事業が発揮するストック効果を重視して事業を推進しており、特に企業活動の活性化や物流の効率化など生産性の向上による経済成長の実現に取り組んでいる。東海環状自動車道の東回り区間では開通後10年を経過し、道路沿線で企業や工業団地の数が飛躍的に伸び、その結果岐阜県の有効求人倍率が全国3位になるなど、ストック効果の発現により地域の活性化に貢献している。
さらに現在事業中の西回り区間においても、沿線市町の工業団地では開通を見越して企業が進出するなど、既に今後の開通を期待したストック効果が高まってきている。また、観光産業・農水産業・商業の支援、災害時・救急医療の支援など、さまざまな効果に対する期待の声も聞こえてきている。
村瀬 供用開始から10年が経過した東回り区間の沿線では、工業製品出荷額が約6兆円増加、雇用も約3万人が創出されるなど、各地域に大きな効果をもたらしている。
西回りルートも、これまでに複数の物流施設が立地するなど、開発が活発化している。この地域には自動車関連産業や繊維産業などの地場産業が多く集積している他、航空宇宙産業や食品関連産業など今後の成長が期待できる産業も多数存在する。これらの産業の高度化に加え、産業の多軸化、異業種同士の交流により新たな産業の創出も期待できる。
さらに岐阜県では、観光産業を今後の成長・雇用戦略の基幹産業と位置付けており、広域ネットワークの形成は国内外の観光誘客の促進、雇用創出に大きな役割が期待できる。17年度に開通を控える養老JCT〜養老IC(仮称)間は、これらの端緒となるため、大きな注目が集まっている。
堤 17年には養老町で、「養老改元1300年祭」が開催される。養老IC(仮称)の開通により、東海環状自動車道西回りルートを経由して、岐阜県外から養老町にたくさんの人が来場されることが見込まれている。
西濃地域にとって、西回りルートが全線開通することは、愛知県、三重県などへのアクセス時間が短縮され、既存企業の業務拡大や企業誘致の可能性の増大、観光客の増加、新たなライフスタイルの実現など、多くの可能性を秘めている。さらに、雇用促進や人材育成の観点からも重要な道路であり、計り知れない経済効果が期待できる。
また、新名神高速道路に接続されることによって、名神高速道路の降雪による通行止めの影響を回避でき、物流を遅滞なく行うことができるとともに、交通渋滞の解消にも貢献するものである。さらに、物流ネットワークや観光地アクセスの面では、西濃地域と四日市が結ばれ、伊勢湾岸道から中部国際空港や名古屋港への接続が格段に向上し、関西圏へもつながる意義は大きい。加えて、北への延伸においては、各市町間の所要時間が大幅に短縮されることにより、地域間連携の強化、企業進出の促進、新たな雇用機会の創出、観光地への利便性向上に大きな効果がある。
――地元自治体や産業界、建設業界がとるべき対応について。
水谷 国、県の財政が厳しい中で、東海環状自動車道の必要性、重要性、緊急性を幅広く多くの方々に理解していただくことが大切と考えている。地元自治体、経済界、建設業界と一体となり、また地元の皆さんの理解と協力を得て事業を推進していく。地元の建設業の方々には、これからも引き続き、技術力を生かしながら事業を進めていきたい。このことは地域の雇用機会を高めるなどの経済的な効果に加えて、災害時には地元に精通した能力を生かし、機動的に地域の安全・安心を守っていただく効果にもつながると考えている。
村瀬 西回りルートの完成は、沿線地域の地域経済化、岐阜県西部地域の緊急医療ネットワークの強化につながる。ポテンシャルを最大限に引き出すためには、ミッシングリンクを解消し地域におけるネットワークの代替性・多重性の確保が重要だ。今年7月に「東海環状西回り利活用促進会議」が発足した。これには当協議会をはじめ、岐阜県と三重県の40市町村や16経済団体の他、民間企業や行政機関が多数参加しており、ストック効果を最大限に活用するため、官民一体となった動きがこれまで以上に活発化している。
堤 地元自治体は、地元住民の意見を取り入れながら、地域の利益に直結する事業について十分検討する必要がある。当会議所はIC周辺開発について、市街地活性化と地域資源・資産を活用した地域活性化に資する点、行政による積極的なプランニング・マネジメントと適切な公共投資が考慮されるべき点を提言している。また、高速道路が通過交通とならないよう配慮するとともに、人口流出などのデメリットも十分に考慮した上で、総合的な戦略を考える必要がある。
産業界においては、地元自治体と協調し、東海環状自動車道を有効に活用する手だてを考える必要がある。西回りルートだけでなく、東海北陸自動車道など、他の道路とのネットワークによるアクセス短縮効果を生かした戦略を考えていくことが求められる。例えば、知名度の高い観光地に地域の特徴を絡めた、『車で回れる新たな観光ルート』の創出などである。
建設業界については、当事業は期間が限定されていることから、計画的な事業推進をお願いしたい。また、道路周辺、特にIC周辺は、多種多様な施設の建設が進むと思われるが、地元自治体などの方針に基づく秩序ある開発に努めてほしい。
――その他について。
水谷 今年7月に「東海環状西回り利活用促進会議」が新たに発足し、岐阜・三重両県の多数の行政や経済団体の他、協力機関として民間企業も参画いただいて意見交換を行った。今後も本会議を継続し、東海環状自動車道を利活用した地域の持続的なまちづくりを支援していきたい。
村瀬 東日本大震災で国土の脆弱(ぜいじゃく)性を認識したが、早期復旧した道路交通が、被災の大きかった鉄道・港湾の機能を補完したことで、複合的な機能やネットワークの重要性について世間の認識が高まっているのではないか。
南海トラフ巨大地震が想定される当地域では、災害時における住民避難や災害復旧時における支援物資輸送ルートとしての道路インフラが果たす役割は大きい。巨大地震に伴う大規模な津波が来ると、被災地域外からの支援が限定的になる可能性も高い。県境を越えて被災地域の負傷者や行方不明者の救助救援、支援物資や必要機材の輸送網の確保に加え、各地域の防災拠点が連携するためにも、高規格幹線道路網のさらなる耐震化は欠かせない。今後も国土強靱(きょうじん)化に向けた重要なインフラとして、東海環状自動車道の耐震強化と西回りルートの早期開通を強く求めていきたい。
堤 整備が滞ることがないよう安定的な予算を確実に確保することなどを、各種関係団体が一丸となって要望していきたい。本自動車道が完成すると、観光客誘客はもとより、農業生産物などの生産高にも大きな影響を与えることが予想される。さらに、沿線都市の救急医療施設へのアクセス時間短縮による地域住民の安心感の向上や、緊急時・災害時における緊急輸送道路としての役割を果たすことなども期待される。
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