国土交通省が4月から導入したi-Construction対応型工事の「ICT土工」が、現場で稼働し、ICT建機による施工などが始まっている。ICT土工は、ドローンによる写真測量で得られた3次元データを使い、ICT建機を使って自動制御により施工する。従来施工に比べ、3次元データを活用することで、出来形管理や検査を効率化することもできる。国交省は2016年度中に直轄工事約410件でICT土工を発注するとともに、全都道府県で合計200カ所に上る講習・実習を開くなど、ICT土工に熟練した技術者・技能者の育成も推進している。
一方、静岡県でも積極的な導入を図るため試行方針を定めた。対象工事となる86件を抽出し、9月末現在で3件の工事で採用している。建設施工の生産性向上、品質確保、安全性向上、熟練労働者不足など、建設業界が直面している課題に対応するための「ICT施工技術(情報化施工)」。今後も普及・促進が図られることが予測されることから今回、国、静岡県のICT活用工事の状況などについてまとめた。
(2016/11/07)
国交省直轄工事 ICT土工が本格化
〜品質確保、生産性・安全性向上に対応〜
中部地方整備局では、発注方針で独自の取り組みを実施し、ICT土工の発注者指定型をCランク(2万立方メートル以上)に拡大(6月公告工事から)した。6月15日に16年度発注工事におけるICT活用工事82件を公表(6月10日時点)した。
ICT活用工事は、(1)3次元起工測量(2)3次元設計データ作成(2)ICT建機による施工(4)3次元出来形管理等の施工管理(5)3次元データの納品―の全てを全面活用するもの。中部地方整備局の発注方針では、発注者指定1.型(ICT活用を義務)が、A・Bランク対象の予定価格3億円以上の土工。総合評価の対象としない。工事成績で加点評価。必要経費は当初設計で計上。
発注者指定2.型(ICT活用を義務)が、Cランク対象で2万立方メートル以上の土工。総合評価で加点評価。工事成績で加点評価。必要経費は当初設計で計上。
施工者希望1.型(ICT活用を評価)が、Cランク対象で5000立方メートル以上2万立方メートル未満の土工。(1)〜(5)を全面活用する場合、総合評価で加点評価(実施の有無を評価)。工事成績で加点評価。必要経費は変更計上。
施工者希望2.型(ICT活用を協議)が、Cランク対象で500立方メートル以上5000立方メートル未満の土工。総合評価の対象としない。(1)〜(5)を全面活用する場合、工事成績で加点評価。必要経費は変更計上。
静岡県内関係では、静岡河川事務所が8件、沼津河川国道事務所が4件、浜松河川国道事務所が8件の計20件が対象工事としてリストに挙がっている。このうち、発注者指定1.型が2件、発注者指定2.型が1件、施工者希望1.型が11件、施工者希望2.型が6件となっている。
各事務所の状況を見ると、静岡河川事務所では、8件のうち7件を発注(10月5日現在)し、3件を施工者希望1.型で契約した。3件の工事は、「安倍川下川原護岸災害復旧工事」の土工量が掘削2700立方メートル、盛土2900立方メートル。施工者は石福建設(静岡市葵区)。「安倍川門屋護岸工事」の土工量は掘削4700立方メートル、盛土4000立方メートル。施工者は平井工業(静岡市葵区)。「大井川牛尾地区河道拡幅工事」の土工量は掘削5900立方メートル、盛土12800立方メートル。施工者は特種東海フォレスト(島田市)。また同事務所では、対象工事公表以前にICT活用工事を契約し、「駿河海岸保全工事」の養浜工事を大石建設(吉田町)の施工で実施した。
浜松河川国道事務所では3件を契約(10月19日現在)。1号島田金谷旗指地区道路建設工事(土工量は掘削5000立方メートル)をグロージオ(島田市)、1号潮見坂地区整備工事(土工量は掘削3000立方メートル、盛土6800立方メートル)を須山建設(浜松市中区)、天竜川河道掘削工事(土工量は掘削13300立方メートル)を元建建設(浜松市浜北区)がそれぞれ施工する。
また、沼津河川国道事務所では2件を契約(10月13日現在)。狩野川塚本地区防災ステーション整備工事を加和太建設(三島市)、1号笹原山中BP笹原新田地区道路建設工事を山田組(長泉町)が施工する。
静岡県交通基盤部では、従来からICT(情報通信技術)を活用して建設工事の生産性の向上や品質確保を図る情報化施工の普及に取り組んできた。国が進めるi-Constructionの重点施策の一つである「ICT活用工事(ICT土工)」の積極的な導入を図るため試行方針を定め、対象工事となる86件を抽出。2016〜17年度を試行(受・発注者がICT活用工事に慣れる)期間として取り組みを展開している。9月末現在、3件の工事で採用している。
県のICT活用工事は、原則として「土工量1000立方メートル以上で、河川土工・海岸土工・砂防土工・道路土工のいずれかの工種を含むもの」を対象とし、(1)3次元起工測量(2)3次元施工用データ作成(3)ICT建設機械による施工(4)3次元出来形管理等の施工管理(5)3次元データの納品−の全ての施工プロセスでICTを活用する。
対象工事は、特記仕様書に適用対象であることを明示する。契約後に受注者がICT活用を希望する場合に発注者との間で協議。実施となれば、ICT土工用の積算基準を適用し、設計変更を行う。
県工事でのICT活用工事の取り組みは、第1号となった焼津漁港管理事務所の水産技術研究所等整備用地整備工事(新井工業の施工)が9月末で完了。この他、島田土木事務所の大代川豪雨対策緊急整備事業(河川)工事<河床掘削工>(山岸建設の施工)、熱海土木事務所の伊東大仁線東京五輪会場アクセス道路整備事業工事<切土法面工>(斉藤組の施工)−の2件が実施中となっている。
県では、16〜17年度を試行期間とするとともに、18〜20年度を普及期間、21年度以降を浸透期間として導入ステップを進めていく。このため、試行期間では工事受注者の「手上げ方式」でICT活用を決めているが、普及期間では発注者の工事指定型の活用を視野に入れている。
試行期間の16年度は、受・発注者で現場での研修会や見学会が行われている。10月12日には、焼津漁港管理事務所の水産技術研究所等整備用地整備工事の現場見学会が行われた。
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