2004年に重信町と川内町が合併し誕生してから12年が経過した東温市。今年の10月23日に投開票が行われた市長選挙で新人の加藤章氏が初当選、第4代市長に就任した。地域のさらなる活性化に取り組む加藤市長に目指すまちづくりについて聞いた。
【略歴】加藤 章氏(かとう・あきら)1948年10月生まれ、68歳。旧重信町(現東温市)出身。神戸大学卒、73年重信町役場入庁、合併対策室長、東温市保健福祉部長、東温市総務部長、東温市副市長などを歴任し、2013年3月退任。14年4月から16年3月まで愛媛県生涯学習センター副所長。
―道路網の整備について見通しをお聞かせください。
「事業継続中の愛媛医療センター前の市道横河原10号線について拡幅整備と通学路の安全確保のため2018年度の完成を目指して事業を進めます。また市内の道路、橋梁などの既存インフラについては長寿命化を図るため、従来の事後的な管理から計画的かつ効率的な予防管理へ転換し、修繕などにかかる経費のコスト縮減を図るとともに地域の道路網の安全性・信頼性の確保を進めます」
―上下水道については。
「ライフラインとして特に重要な上水道につきましては近い将来発生が予想される南海トラフ巨大地震などの災害に強い水道施設の構築が急務であるといわれています。市民の方々に安心で安定した水道水を供給するため水道施設の整備・改良を実施しています。重信地区についてはすでに整備が完了し、現在は川内地区の山間部において事業を展開しており、17年度の事業完了に向け引き続き整備を進めます。公共下水道については16年度末の全体計画に対する面積整備率の見込みが重信処理区で約62%、川内処理区では約74%となり、市全体で約65%の進捗ですが、引き続き投資効果の高い住宅密集地から整備を進めます。また公営企業の一つである公共下水道事業も上水道事業同様に地方公営企業法の適用を行うよう要請があり、20年度からの企業会計化を目指して移行事務に取り組んでいます。
―安全・安心なまちづくりを目指しているとのことですが公共施設の整備については。
「地域のコミュニティー活動の拠点となる集会所について耐震化の推進が課題となっており、12年度に実施した地区集会所の耐震診断結果において耐震補強や改築工事が必要と診断された施設のうち本年度は横河原、播磨台団地、吉久、上樋、三軒家の計5カ所の集会所の耐震補強や改築工事を行っています。市としても補助率を嵩上げして地区集会所の耐震化の促進に向けて取り組んでまいります。17年度えひめ国体・大会の会場となる総合公園については園内5カ所のトイレのバリアフリー化などの改築を行い、国体などに向けた施設整備を進めます」
「本市の移住定住の受け皿となる志津川土地区画整理事業については16年度が工事最終年であり、組合への助成と道路舗装の整備を行ってまいります。現在までに完成した区画には住宅建築が進み、住宅地としての街並みが次第に形成され、地域経済への波及効果も大変大きいものがあると思っております。学校、幼稚園、保育所施設におきましては15年度に耐震化率100%を達成した後も引き続き大規模改修工事やエアコン設置工事など本市の未来を担う子どもたちのために環境整備を行ってまいります」
―スマートIC整備に向けた構想については。
「スマートIC整備により本市や松山都市圏のみならず広域的な整備効果が期待されます。
@本市から松山市東部にかけて約200の物流事業者が集積していることから「松山都市圏の物流活動の活性化」
A市内企業の高速アクセス性の向上や企業誘致による「地域経済活動の発展」
B交通渋滞が著しい松山ICへのアクセスルート(国道33号)の交通量分散による「松山都市圏の渋滞緩和」
C市内に複数立地している中核医療施設への「アクセス性向上による医療活動の支援」
D陸上自衛隊松山駐屯地や愛媛県警察機動隊の迅速な被災地への到着に寄与する「災害発生時の救急活動の支援」また、さらなる企業誘致を進めていくため新たな商・工・流通業の土地利用に向けた雇用創出構想やスマートIC構想の策定に合わせて企業立地の受け皿となる工業団地についても基本計画を策定し、実現に向けてまい進します」
―地方自治体は人口減・超高齢化社会への対応を迫られています。
「昨年策定した『東温市まち・ひと・しごと創生総合戦略』に掲げた施策をさらに推進し“移住定住地として選ばれる東温市”を目指し新しい人の流れをつくります。西日本で初の常設型劇場である『坊っちゃん劇場』を市の文化芸術発信拠点と位置付け、舞台芸術を生かしたオンリーワンのまちづくり施策『アート・ヴィレッジとうおん』構想の実現に向けて取り組みます。中山間地域の住民が主体となって発足した地域運営組織の取り組みを支援し、地域住民との連携を深めながら集落の活性化を図るとともに、集落の維持・活性化に必要な人材を育成する『人づくり』を進めます」
―企業への支援については。
「中小零細企業振興基本条例を愛媛県の市町で最初に制定したことから、振興条例の先進地としての地位を確立するため、本年度5年ぶりに市内全事業所約1300社の訪問調査を行っています。本年度単純集計を行い来年度立教大学社会情報教育研究センターによるクロス集計や分析により、今後の中小零細企業の振興施策に反映する予定としております。また本年度は市内事業所に向け市の支援事業や支援機関についてのパンフレットを作成し事業所や金融機関に配布しました。さらに昨年度東温市・松山市合同で開催した逆商談会は事業が好評であったことから、本年度中予圏域に拡大し逆商談会を開催することとしています。その他、起業支援としてステップアップセミナーの開催や市内事業所が大都市などでの商談会、見本市に参加する際の出展料、借上げ料、旅費などについて補助を行っています」
―三世代同居支援を推進していますがその狙いは。
「三世代同居への支援として子どもを安心して産み育てられ、高齢者も安心して暮らせる住環境をつくるため、住宅の新築や購入、増改築、リフォームの費用の一部を助成する、三世代同居支え愛(あい)家族支援事業を実施しています。三世代同居のメリットとしては、育児や家事の担い手が増え、地域の伝統行事の継承もされ、地域を担う後継者の育成にもつながります」
「11年に起こった大震災の復興事業や東京五輪の決定で建設業界の需要は高まり続けています。業界にとっては大変好ましい傾向と思われますが、それに伴い業界は人手不足に陥っています。特に技術者や技能者の不足が深刻で、震災の復興事業は予定よりも進捗が遅れているとされています。また業界に就職する若者は減少の一途をたどっているとされ、東京五輪が開催される20年までに合計15万人もの労働力が不足すると予想されており、長期的な目で見ると業界は厳しい経営環境に置かれていると考えています。しかしながら地方の業界においては、基幹産業として良質なインフラ整備や地域経済の活性化、雇用の確保はもとより、災害時における救援・復旧活動など市民の安全・安心のためにも必要不可欠な産業であり、業界が担う役割は大変重要であります。このため、市では歳入の増加が見込めない厳しい状況下においても、必要不可欠であるインフラ整備として、スマートICの整備をはじめ、学校施設などの環境整備、道路・橋梁施設の長寿命化、上下水道事業などの公共事業を積極的に展開することにより、建設業界の下支えになればと思っています」
(2016/12/16)