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(2017/9/1)

 

【東海】連携強化へ「防災の旗振り役」担う

 

 2015年9月の関東・東北豪雨、2016年の熊本地震や8月の東北・北海道台風、2017年7月の九州・北部豪雨、そして記憶も新しい秋田豪雨と、地域の「防災力」が問われる災害が続発している。そして、その災害による被害は甚大さを増している。国土交通省中部地方整備局の塚原浩一局長は、大規模な災害に対して、「行政機関や住民、企業をはじめ、あらゆる主体が危機感を共有し、主体的に連携し、産業活動の維持・継続、早期の復旧、経済被害の最少化に備えていく必要がある」とし、防災の旗振り役を担うと話す。中部地方整備局の防災・減災対策への考え方と取り組みを聞いた。

 

塚原浩一

 

国土交通省中部地方整備局 塚原 浩一 局長

 

日本経済における中部圏の位置付けとインフラ整備の重要性


■中部のものづくりを支えるインフラ
中部圏は日本一のものづくり産業の集積地であり、14年における製造品出荷額は約81兆円と全国の4分の1を占め、日本経済をけん引する役割を担っている。
この中部のものづくりを、道路・港湾などのインフラが下支えする役割を担っているが、各地域の経済界からは物流効率化と生産性向上のため、さらなるインフラ整備への強い要望をいただいており、極めて活発な経済活動を支えるため、信頼性の高い道路ネットワークや港湾施設の整備をさらに進める必要がある。

■自然災害リスクに対してインフラ強靭(きょうじん)化が重要
一方で、中部圏は、急峻(きゅうしゅん)な山々、脆い地質、長い海岸線、日本最大のゼロメートル地帯、軟弱地盤などの地勢や、平地部分に人口・資産・産業などが高度に集積する社会情勢など、自然災害リスクの高い地域でもある。
南海トラフ巨大地震で想定される被害は中部地域が最も大きく、中央防災会議の発表では、東海3県の被害額は約67.5兆円とされており、また、伊勢湾台風に匹敵する超大型台風では、ゼロメートル地帯においては、TNT(※1)が想定した浸水想定範囲内に居住する人口は約120万人、被害額は約20兆円とされている。
さらに、特に中部圏においては、巨大な産業活動と大規模災害リスクが背中合わせになっていることを十分認識しておく必要がある。中部圏のものづくり産業が大きなダメージを被れば、日本経済そのものが大きく停滞しかねない懸念があり、そのような事態はなんとしても避けなければならない。
このため、河川・海岸堤防、ダム、砂防堰堤などの基幹的な防災インフラの整備をしっかりと進めるとともに、発災時の救援・救助活動や産業活動の維持・早期復旧の鍵を握る道路・港湾などをさらに整備・強化し、地域全体としてインフラの強靭化を進める必要がある。


防災、減災に対する中部地方整備局の考え方と取り組みについて


■まずはインフラ整備を着実に
近年、毎年全国各地で大規模災害が発生しているが、そのような中でインフラが防災・減災に果たす効果は明確である。先の九州北部豪雨では、洪水調節、流木留めなどの機能を果たした寺内ダムや、5年前の豪雨後の激特事業による減災効果など、インフラの整備が進んでいたところでは被害を大きく軽減することができた。
また、人命に関わる避難対策、発災時の救援・救助対策などはもちろん重要であるが、それもインフラの安全性・信頼性が確保され、災害時にもその機能がある程度確保されていることが前提となる。道路が通れなければ助けに行けないし物資も届けられない。
あらゆる災害を防ぐことはできないかもしれないが、被害を少しでも抑えるためには、インフラの整備、耐震化、老朽化対策、メンテナンスなどの強靭化を着実に進め、地域の安全性を高めていくことが何をおいても重要である。

■巨大災害に対してはハード・ソフト総力戦で
まずはインフラの整備を着実に進めると申し上げたが、その上で、東日本大震災や近年の豪雨災害からの教訓は、インフラの防災機能を超えるような激甚な災害は常に発生する可能性があるということ。
巨大災害に対しては、ある程度の被害が発生することは避けられないとしても、少なくとも人命は守る、災害後の復旧・復興を迅速に行うなど、被害をなるべく軽減させる努力が重要である。
このためには、災害時の避難対策、発災後の救援・救助など応急対策、施設の早期復旧などへの備えが重要であり、具体的には、浸水ハザードマップなど事前の防災情報の提供、洪水情報など大雨時の避難に役立つ情報の提供、河川防災ステーションなど防災拠点の整備、粘り強い河川・海岸堤防、防波堤の整備など、文字通りハード・ソフト一体となってあらゆる対策を総合的に進める必要がある。
また、発災時においては、緊急輸送ルートの確保が最優先の課題となる。現在中部地方整備局が進めている名古屋環状2号線、東海環状自動車道、紀勢自動車道、伊豆縦貫自動車道、三遠南信自動車道などの整備は、経済効果とならんで「命のみち」として防災対策としても不可欠なものである。
さらに、緊急時の被災地支援も中部地方整備局の大きなミッションである。大規模災害時には、各地でさまざまな被害が想定されるが、一刻も早く道路や航路の啓開を行うとともに、浸水の早期解消、土砂災害など二次災害の防止対策などが被害軽減の鍵を握っている。また、早期の復旧・復興のためには迅速に被害状況調査を行い、早期の激甚災害指定や施設の復旧につなげていくことも重要である。
中部地方整備局ではTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)を組織しており、各地で発生する災害に際してTEC-FORCE隊員を派遣し、このような支援活動を行っている。発災時の応急活動から復旧・復興まで幅広く担えるのは国土交通省だけであり、専門家集団・技術者集団として、今後も被災地支援を積極的に行い、少しでも早い復旧・復興につなげていく。

■防災の旗振り役を担う
超大型災害に対しては圏域・関係機関が一体となって連携した取り組みが不可欠であり、中部地方整備局は、事前防災から発災時応急活動、復旧復興まで幅広く担う組織として、産学官の多くの関係機関からなる「南海トラフ地震対策中部圏戦略会議」「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会」などの事務局として、地域全体の防災・減災対策の推進に取り組んでいる。
また、「水防災意識社会再構築ビジョン」推進のため、河川ごとに沿川自治体とともに対策協議会を設立し、ハード・ソフト含めた総合的な減災対策を進めている。
さらに、大規模災害に対しては、行政機関や住民・企業をはじめ、あらゆる主体が危機感を持ち、主体的にかつ連携して備えていく必要があり、リスクを「見える化」し、具体的にどのような支障や危険があるのかよく認識し対策に生かしていく必要がある。また、中部圏は特に産業活動の維持・継続、早期復旧など、経済被害の軽減対策を各機関が連携して取り組む必要がある。中部地方整備局としては、防災の旗振り役として、このようなさまざまな課題に引き続き取り組んでいきたい。


建設業界の果たす役割と期待


 「いざ」という時に真っ先に災害現場の対応を担っていただくのは地元の状況に精通した地域の建設業の方々。災害直後の進入路の確保、土砂・流木撤去、施設の応急復旧、さらにその後の本格復旧から復興まで幅広く担っていただくこととなる。
その際には、人材や技術力さらには資機材の確保・維持も必要である。担い手の確保・育成、技術者の高齢化などさまざまな課題はあるものの、「地域の守り手」としての気概と使命感を高く持ち、有事の際にも対応できる力の維持・向上を図っていただくことが必要と考える。
一方で、このような災害に対応するためには各地域の建設業が元気で活力を維持していただくことが前提となる。そのためにも発注者側として、品確法に基づくさまざまな取り組みをさらに進めるとともに、公共事業予算の持続的・安定的確保などにも努めて参りたい。

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官民双方で建築物耐震化 東海3県の取り組み


 いつか、南海トラフ巨大地震が発生するとき、あなたはどこにいるだろうか。屋内にいるのなら、その建物に十分な耐震性があるかどうかは、生死を分ける重要なファクターとなるかもしれない。2013年度に改正施行された改正耐震改修促進法は、病院やホテル、百貨店など不特定多数が出入りする建物の耐震診断を義務化。近年、同法に基づいて全国の地方公共団体が診断結果を相次いで公表するとともに、公共施設も含めて耐震改修を促す計画を整備してきた。官民の双方で進む、東海3県の建築物耐震化の現状を取材した。


愛知県 補助制度創設を推進


 愛知県は、2012年度に策定した建築物耐震改修促進計画「あいち建築減災プラン2020」に基づいて建築物の耐震対策事業を進めている。多数の者が利用する建築物などについて、耐震性のない建物を5分の1に削減するという目標を掲げ、耐震化を促進している。2017年3月には、13年11月に施行された建築物の耐震改修の促進に関する法律の改正で耐震診断が義務付けられた、要緊急安全確認大規模建築物の耐震診断結果の報告を公表した。震度6強から7程度の大規模な地震の震動や衝撃に対して倒壊・崩壊する危険性があるまたは高いとされた建物は、県内に62棟あることが明らかになった。県内の市町村では、これらの建物を耐震改修する場合の補助制度創設の検討も進んでおり、9月には常滑市が補助制度を創設。南海トラフ巨大地震などの発生に備え、対策が進められている。


要緊急安全確認大規模建築物 耐震診断結果(名古屋市除く)


 3月に公表した要緊急安全確認大規模建築物の耐震診断結果で、「安全性1.」「安全性2.」と判定された県内の建物62棟の所在地は、▽名古屋市▽岡崎市▽春日井市▽瀬戸市▽犬山市▽稲沢市▽北名古屋市▽津島市▽東海市▽豊橋市▽豊川市▽みよし市▽一宮市▽豊明市▽常滑市▽知多市▽半田市▽蒲郡市―の18市にわたる。
公共施設では、蒲郡市民センター体育館(蒲郡市緑町3-69)や、半田市立半田病院診療棟(半田市東洋町2-29)、常滑市庁舎(常滑市新開町4-1)、蒲郡市民会館ホール棟(蒲郡市栄町3-30)で、危険性があるまたは高いと判定された。
一方、民間施設を見ると、名古屋市を除く愛知県全体で、評価1.の建物が17施設、評価2.の建物が10施設あった。具体的な対策を打ち出している施設がある一方で、今後の具体的な対策を示していない施設も多い。耐震診断については、建物の所有者が負担なくできる補助制度が設けられているが、耐震改修は義務ではないため、補助制度を設けているのが一部の市に限られていることが影響しているとみられる。市が補助制度を設けている場合は、国・県・市合わせて最大で44.8%の補助を受けることができる。しかし、市に補助制度がない場合は、県の補助も受けられないため、国の補助制度のみとなり、補助率は11.5%にとどまる。
そこで県は市に対し、補助制度の創設を働きかけてきた。すでに制度を設けている名古屋市、岡崎市と、耐震性を満たしていない建物が全て公共施設だった半田市と蒲郡市を除いた14市のうち、6市が18年度に制度の創設を予定。2市は建物の所有者と協議した上で必要なしと判断した。常滑市は9月に補助制度を創設する方針を発表。残りの市についても、制度の創設を検討しているという。制度の創設が進めば、耐震改修の実施が一気に進む可能性もありそうだ。

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名古屋市 耐震化率20年度95%目指す


 名古屋市が2016年度にまとめた新たな建築物耐震改修促進計画では、住宅・建築物の耐震化率を20年度までに95%へと引き上げる目標を設定した。今後16年度から5年間で耐震改修を助成する住宅は2000戸。さらに、法改正で耐震診断が義務付けられた建物の耐震対策も盛り込んだ。
一連の取り組みを踏まえて市は3月、耐震診断が義務付けられている市内の建物193施設の診断結果を初公表。大規模地震により倒壊する「危険性が高い」とされる評価1の建物は11件、「危険性がある」評価2は19件だった。これは、愛知県内にある評価1.2の施設数の半分近くに当たる。市内で評価1.2だった建物のうち22件については、耐震改修や建て替えなど対策の内容も合わせて提示した。
市は耐震改修への助成費として17年度予算に6850万円を計上。7月31日現在では、耐震改修の設計に対して1件、工事に対して2件の補助申請が出ている。市は引き続き補助申請を受け付けており、設計については11月末が申請期限。工事については、18年3月末までに完了実績を報告できる工期であることなどを要件に受け付けている。
公共施設では、千種区役所が評価「2」、名古屋城天守閣が「1」となった。千種区役所はUR都市機構の住宅との合築となっており、住宅部分の耐震性が不足。建て替えを計画しており、市は17年度に建設地の絞り込みなどを予定している。名古屋城天守閣については木造復元を進めている。
この他、緊急輸送道路などの避難路の沿道にあり、倒壊すると通行の障害となるような建物についても「要安全確認計画記載建築物」に位置付け、耐震診断を義務化。耐震改修促進計画では、15年度時点で市内1500建物が耐震性を確保できておらず、耐震化率は75%だとしていた。診断結果の市への報告期限は18年度末。このため、市は建物所有者への周知を進めており、補助の活用なども順次、働き掛けていく。

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岐阜県要安全確認計画記載建築物 新たに20施設


防災拠点としての機能も充実する岐阜市庁舎建て替えは本年度着工


 岐阜県では、特に大きな被害をもたらすと見られる南海トラフの巨大地震や主要な四つの活断層による内陸直下型地震(阿寺断層系地震、跡津川断層地震、養老−桑名−四日市断層帯地震、高山・大原断層帯地震)を今後、想定される地震としている。いずれも震度6弱から一部では震度7になるという予測だ。県は有事に備え、防災拠点となる公共施設がしっかり機能するため、県を中心に県内市町村の公共施設の耐震化に取り組んでおり、本年度「耐震改修促進計画」を改定した。
今回の改定で、県が防災拠点に位置付けている施設のうち、耐震性が無いか、不明な施設として新たに20施設を「要安全確認計画記載建築物」に指定している。また、第1次緊急輸送道路の国道19号など5路線の沿線に、倒壊時に道路の過半をふさぐ恐れがある民間建築物が50施設あることも分かった。ともに該当する施設に対しては耐震診断の実施と結果報告を義務化する。
同計画は、今回の改定以前、熊本地震による災害状況などを踏まえ、2016年8月に改定している。その中では、市町村庁舎で本庁機能を有する建築物で、耐震性が無い、または不明な建築物について、「要安全確認計画記載建築物」に指定し、耐震診断と結果報告を義務付けた。
特に優先度の高い県庁舎や大垣、中津川、瑞浪、羽島、土岐、各務原、下呂(下呂庁舎)、垂井、安八、七宗、白川、御嵩の計13県市町舎施設に対し、耐震診断の結果を17年7月末の期限で報告することとした。これについては県内全ての市町村が報告を終えており、現在その結果を精査している。
本年度に改定した内容は、これまでの計画に加え、支所や振興事務所、体育館など15施設と、民間の災害医療拠点5施設の計20件を「要安全確認計画記載建築物」に指定した。民間の医療拠点5施設は未公表となっている。
民間医療拠点施設を除く新たな「要安全確認計画記載建築物」に指定された施設は、▽山県市美山支所▽揖斐川町谷汲振興事務所▽揖斐川町久瀬振興事務所▽揖斐川町藤橋振興事務所▽大野庁舎(西棟)▽関市役所上之保事務所(本館棟)▽郡上市役所鷲振興事務所(本館)▽郡上市役所美並振興事務所(本館)▽中津川市加子母総合事務所▽下呂市小坂振興事務所▽下呂市馬瀬振興事務所▽高山市高根支所▽養老町消防本部庁舎▽不破消防組合東消防署(垂井町)▽朝倉運動公園町民体育館(垂井町)―の15施設。
これらの施設については耐震診断と結果報告期限を20年3月31日としている。
また、同計画では、1次緊急輸送道路のうち国道19、21、22、41、258号など5路線沿道で、1981年以前に建てられ、倒壊時に道路の過半をふさぐ恐れがある民間建築物の耐震診断を義務化した。調査の結果、これに該当する施設は50施設あった(施設の詳細は未公表)。これについても報告期限は20年3月31日としている。


揖斐厚生病院は耐震対策を検討


 一方、民間の施設で一定規模以上の不特定多数の人が利用する建築物(病院・店舗・ホテルなど)についてはどうか。17年3月に耐震改修促進法の改正により耐震診断が義務付けられた要緊急安全確認大規模建築物について、岐阜県内の耐震診断結果が岐阜県などから公表された。公共施設を含む県内の対象118棟のうち、震度6強から7に達する程度の大規模な地震の震動や衝撃に対して倒壊、または崩壊する危険性が高い「安全性1.」と判定された建物が16棟、倒壊・崩壊する危険性がある「安全性2.」と判定された建物が7棟あった。
「安全性1.」と判定された16棟のうち民間の施設は10棟で、▽揖斐厚生病院の本館・外来棟(揖斐川町)▽プラスリビング岐阜店(岐南町)▽高山グリーンホテル(高山市)▽飛騨数河ホテル(飛騨市)▽鷲ケ岳高原ホテル本館(郡上市)▽望川館本館(下呂市)▽岐阜グランドホテル本館・西館A棟・東館(岐阜市)▽ホテルパーク本館(岐阜市)―などとなっている。
また、「安全性2.」と判定された7棟のうち、民間施設は4棟で、▽羽島Wing151(羽島市)▽岐東ファミリーデパート(土岐市)▽ピアゴ穂積店(瑞穂市)▽水明館飛泉閣(下呂市)―などとなっている。
弊社調べによると、耐震対策の予定としては、岐阜グランドホテルが名古屋鉄道グループで愛知県のホテルを含めて対策を検討している。揖斐厚生病院や鷲ケ岳ホテルなども同じだ。
高山グリーンホテルの一部や飛騨数河ホテル、ホテルパークは建て替えを予定しており、17年度内に工事着手する。
その他、岐東ファミリーデパートや水明館などは改修工事に向けた設計などを順次進めている。

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三重県 15年度末で耐震率96.4%


 三重県では、予測される南海トラフ地震による建物の倒壊と、津波浸水への対応が喫緊の課題となっている。特に災害対応の防災拠点、避難場所となる公共施設の耐震化に積極的に取り組んでおり、消防庁がまとめた2015年度末の耐震化推進状況では、三重県の耐震率が96.4%と、東京都、静岡県に続いて3番目に高い結果となった。今回は、同調査結果に基づく県下の耐震化状況と、明和町など3市町の庁舎の耐震化への対応、「耐震改修促法」に基づく要緊急安全確認大規模建築物に焦点を当てた。

〈公共施設等の耐震化推進状況調査結果(消防庁まとめ)から〉
三重県の公共施設の耐震化状況を見ると、15年度末の全棟数は2960棟で、このうち耐震改修などにより耐震性を有する施設は2854棟で、耐震率は96.4%(全国平均90.9%)となった。14年度末の94.8%に対し、1.6ポイント上昇した。
施設別で見ると、文教施設が1560棟のうち1550棟が耐震性を有し、耐震率は99.4%、警察本部・警察署などが、70棟のうち68棟が耐震性を有し、同97.1%、県民会館・公民館などが321棟のうち307棟が耐震性を有し、同95.6%と高く、一方、庁舎が166棟のうち155棟が耐震性を有し、同93.4%、診療施設が58棟のうち48棟が耐震性を有し、同82.8%と相対的に低い率となった。
市町の耐震化状況を見ると、15年度末の全棟数は2713棟で、このうち耐震性を有する施設は2609棟で、耐震率は96.2%となった。耐震率100%は、四日市市、鈴鹿市、亀山市、東員町、菰野町、朝日町、川越町、多気町、明和町、度会町、大紀町、紀宝町の3市9町となった。明和町は庁舎の耐震改修を一度実施済みのため、調査上は耐震済みに該当する)。主な施設では文教施設が99.3%と高く、庁舎が92.1%、診療施設が81.1%となった。

〈三重県建築物耐震改修促進計画〉
三重県は「三重県建築物耐震改修促進計画」の一部を3月に改定し、住宅の耐震化促進と、市町庁舎の耐震診断の義務化という二つの施策を盛り込んだ。庁舎については、明和町本庁舎、尾鷲市本庁舎、伊賀市青山支所庁舎の3施設が耐震性を満たしておらず、21年3月末までに診断結果を報告することを義務付けた。
対象の3庁舎のうち、明和町役場本庁舎〈旧館〉(明和町)は、60年に建設。0000年に耐震補強改修を実施した。17年度に再度、耐震診断を実施しており、現在計画中の明和中学校の建て替えを実施後に庁舎整備が具体化されるものと見込まれる。尾鷲市本庁舎(尾鷲市中央町)は、61年に完成。同市では、小中学校などの耐震化を優先させ、市庁舎や中央公民館の耐震化が遅れ、耐震診断自体も未実施の状況。今後、耐震化に向けての対応が見込まれる。伊賀市役所青山支所庁舎(伊賀市青山)は、75年に完成。同市では、耐震性がなく建て替えにより機能集約するものと位置付けている。

〈要緊急安全確認大規模建築物の耐震診断結果〉
三重県と桑名市、四日市市、鈴鹿市、津市、松阪市の5市は1月、「耐震改修促進法」に基づく要緊急安全確認大規模建築物の耐震診断結果を公表した。評価区分(1.〜3.)のうち、〈評価区分1.〉「倒壊・崩壊する危険性が高い」と評価されたのは、県所管の区域から5施設、5市が所管する区域から5施設の計10件の民間施設だった。
対象の施設の状況(一部は1月公表時点の状況)を見ると、「医療法人全心会伊勢慶友病院」(伊勢市常磐2)では本館棟など全棟を用途廃止する予定。「社会医療法人畿内会岡波総合病院」(伊賀市上野桑町)では10年以内の建て替えを検討中。「鳥羽彩朝楽」(鳥羽市小浜町)では、18年度までに耐震改修を計画。「戸田家」(鳥羽市鳥羽1)では、耐震工事を2期に分け、17年度に第1期を実施済みで、18年度に第2期工事を行う計画。「鳥羽一番街」(鳥羽市鳥羽1)では、店舗の耐震改修方法を検討。「NTN桑名製作所熱処理工場」(桑名市東方)では耐震改修を実施(一部で未実施)。「インベス四日市日永店舗」(四日市市日永5)では検討中。「四日市諏訪商店街振興組合駐車場〈スワセントラルパーキング〉」(四日市市諏訪町)では耐震改修を検討中。「ジェイエスピー四日市第1工場EPSプラント」では、耐震改修を検討中。「津松菱百貨店南館」(津市東丸之内4)では、耐震改修を検討中。


現在の明和町役場本庁舎

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