無電柱化事業に追い風が吹いている。国に無電柱化推進計画の策定を義務付けた無電柱化推進法の成立や、低コスト手法の試行、PFIの導入と、この1年ほどの間に無電柱化事業を取り巻く環境は大きく動いた。中部地域でも直轄国道で低コスト手法の試行対象を検討中だという。新たな段階に入った無電柱化事業の現状を取材した。
大規模地震で電柱が倒れて道路がふさがれるのを防ぐ、歴史的な景観を保全する、歩道の通行性を改善する――。こうした無電柱化の必要性とは裏腹に、整備事業の進捗は緩やかだ。ケーブル延長ベースで無電柱化率100%を達成しているロンドン・パリなど海外主要都市と比べると、名古屋市は国内3位であっても5%(道路延長ベース)をわずかに超えたところ。立ちはだかるのは大きな整備コストだ。
こうした状況が今、変わろうとしている。鍵となるのは管路を従来より浅い場所に設置する「浅層埋設」と、ケーブルを収納するボックスの小型化だ。国は2016年、浅層埋設基準を緩和するとともに、電力・通信ケーブル間に必要な距離基準を見直し、小型ボックスの活用に道を開いた。この3月には低コスト手法導入の手引き案を作成。無電柱化事業のネック解消に取り組んでいる。
中部地域はどうか。国土交通省中部地方整備局は17年度、道路関係の各事務所で、無電柱化の低コスト手法について電線管理者などの関係者との協議に着手。その後に設計を実施するとしている。
モデル的な取り組みが進む地域もある。新潟県見附市は16年度、浅層埋設と小型ボックスを併用して電柱のない住宅地を整備するモデル施工に着手。小型ボックスが約130b、浅層埋設が約1`で、事業延長は約1.3`に及ぶ。
事業実施に際しては技術検討会を設置した。市の他、技術的な支援のため北陸地方整備局長岡国道事務所が参加。東北電力やエヌ・ティ・ティ・インフラネットなどとともに整備手法を検討した。
京都市でもこの2月、小型ボックスによるモデル的な無電柱化に着工した。現場は観光客でにぎわう花街、先斗町だ。歴史的な景観を取り戻すとともに、幅員1.6b〜4.4bという狭隘(きょうあい)な道路の通行を改善する狙いもある。事業延長は440bで、舗装復旧まで含めて19年度柱の完成を目指す。
地上機器を民地内に設置するなど、地域の協力を得ながらの事業となった。
見附市・京都市の担当者のどちらも、本紙の取材に対し、現在がモデル的な施工段階であることを強調した。工事の進行に応じて施工性を確認していくのだという。低コスト手法を一般化させる上でも、施工事例の蓄積と検証が重要になりそうだ。