先の国会で無電柱化推進法案の提出が見送られた。これに伴い次期計画の実施時期もずれ込むことになるが、安全で快適な通行空間の確保や都市景観を向上する上で、無電柱化が果たしている役割は大きく、新計画の早期策定が待たれるところだ。そして、東日本大震災からもうすぐ5年。地震発生時に、電柱・通信各約28000基が供給支障に陥り、断線した電線が道路の啓開作業を阻害したことは記憶に新しい。南海トラフ巨大地震の発生が迫りつつある関西での備えは大丈夫なのだろうか。大阪府下の無電柱化の状況を見る。
2014年に総務省が次期計画の策定に備えて全国で調査した無電柱化整備(第6期推進計画)の進捗状況によると、近畿管内では、道路管理者と電線管理者が合意した合意延長301`に対して、事業中・完了が156`(51.9%)、事業未実施が144`(48.1%)となっている。 同調査では、事業対象路線の無電柱化率が年々向上しているものの、府下にある電柱数(対象路線以外の道路含む)は減るどころか、若干増えていることも分かった=表1参照。
こうした状況も踏まえつつ、国土交通省近畿地方整備局では着々と整備を進めており、6期計画までに直轄国道延長約350`を無電柱化した。さらに15年度は39カ所、延長49.3`の整備を予定(内訳は表2参照)する。
中でも大阪国道事務所では、国道176号中桜塚電線共同溝(整備前後イメージ参照)など11事業=表3参照=に取り組んでおり、門真速水(163号)と稲牧落(171号)の2事業については、15年度中の工事契約を予定。171号西宿萱野、176号中桜塚の2事業は本年度末の完成を目指し、工事が進む。
中桜塚電線共同溝は、豊中市中桜塚3丁目〜南桜塚2丁目の1.2`区間が対象。これまでに本体工事がほぼ完了し、現在、仕上げ作業に入っている。
中桜塚で進む電線共同溝の整備イメージ前と後
安全で快適な通行空間の確保、良好な景観・住環境の形成、災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上、歴史的街並みの保全−などを目的に推進。国土交通省が1986年度に策定した「電線類地中化計画」からスタートし、現在、6期計画に基づいて事業が進められている。
無電柱化に積極的に取り組む市区町村が集まった「無電柱化を推進する市区町村長の会」(会長・山下和弥奈良県葛城市長)が10月20日に設立された。全国の市区町村長212人が参加。景観形成、観光振興の観点から、無電柱化を協力に進めるよう、政府に働きかける。
設立総会には、太田昭宏前国土交通相も出席し「大臣在任中の心残りの一つが無電柱化だ」と述べたほか、自民党・無電柱化小委員会の小池百合子委員長が「国のリードで無電柱化をすすめるよう、ともに訴えていきたい」とした。
無電柱化をめぐっては、自民党が電気事業者などに道路新設・拡幅時の電柱設置を原則として禁止する「無電柱化推進法案」を昨年まとめたが、現在まで国会に提出するまでに至っていない。
(2015/11/10)