無電柱化が新しい時代に入った―。現在、全国に先駆けて、京都・先斗町通と新潟・見附市の2カ所で新たな整備手法「小型ボックス」による無電柱化事業が進められている。中でも、国内有数の観光スポットでもある先斗町通は、対象となる路地の幅員が最少1.6メートルと極端に狭い上、国内外からの観光客が曜日を問わず訪れるといった施工上の制約が多く、従来手法での無電柱化は不可能とされていた場所だ。その路地で京都市、関西電力、NTT、先斗町まちづくり協議会が協力し、小型ボックスによる施工を実現。2017年2月に起工式を行い、着手にこぎ着けた。先斗町通の事業の概要と見えてきた課題を紹介する。
先斗町通は京都の五花街の一つ、お茶屋や飲食店など伝統的な建物が立ち並び「先斗町界わい景観整備地区」にも指定されている。無電柱化事業の対象区間は、京都市中京区の四条通から通称龍馬通までの延長490メートル(幅員1.6〜4.4メートル)。既設の電柱18本を取り除く計画だ。
きっかけは、景観条例で広告看板を撤去したところ電線が目立つようになったことだという。独特の風情のある観光地。景観面から電線をなくそうという声が上がった。だが、従来手法では、道幅の狭さから、電気や通信の管を地下に埋設すると、既設のガス・水道・下水道管のメンテナンス用スペースを設けることができなくなる他、地上機器の設置場所もなく、具体化に向けた話し合いも暗礁に乗り上げていた。
そこに登場したのが小型ボックスだ。道路面の浅層に設置する小型ボックス内に電力線や通信線を集約し配置することで、既設の地下埋設物のメンテナンス用スペースが確保できる=図参照。市は2015年度から関西電力やNTTと検討に着手。通信系の小型ボックス、管路の実証実験(地上シミュレーション)を行い、性能を確認した。併せて、地上機器直下の電力桝の小型化に成功、周辺の景観に合わせた美装化も検討しており、京都市・関西電力・先斗町まちづくり協議会の三者で、民地への機器設置の協力も取り付けた。地上機器は全30基。このうち8基が民地への設置となる。
電力・通信スペースや電力桝も小型化されることから、従来手法よりコストが縮減できるとされる小型ボックスだが、新しいが故の難しさも垣間見える。
京都市建設局の岩村謙次事業促進担当課長(道路建設部道路環境整備課)は、「新しい取り組みのため製品のほとんどが特注になる。また、狭い路地で車両が入れず大半が人力施工で、観光地であり飲食店街という面から施工時間は午前1時から9時までという制約を受ける。トータルで考えると低コストとは言えない」という。
ただ、「従来手法より低コスト化できる整備手法であることに間違いはない。今後の普及に向けては製品の規格化が必要だ」とも付け加える。
早ければ本年度末から順次、入線、切り替えに着手し、19年度末の事業完了を目指すという。全国に先駆けた取り組みを成功に導き、小型ボックス製品規格化の先鞭(せんべん)をつけてほしい。
(2017/11/10)