高度経済成長期に整備された多くの道路や橋梁などが整備後50年以上経過し、老朽化が課題となっている。各自治体では、適切な保全や補修などの維持管理を進めている。「道路保全課」は、浜松市が保有する道路インフラの適切な管理と保全を一体的に推進。損傷が軽微な段階から適切な修繕を実施する「予防保全型管理」を柱にした維持管理を目指している。道路法改正に伴い、義務付けられた5年に1回の近接目視による点検が2018年度で5年目を迎える。市では、リスクベースメンテナンスに基づき橋梁の維持・管理体制構築を進めてきた。道路保全課の池谷一弘課長に橋梁の保全・補修に関する取り組みなどを聞いた。
―浜松市の橋梁の保全・補修の取り組み方針について聞かせてください。
「浜松市内には、市が管理する橋梁が約5900橋ありますが、建設後50年を経過する橋梁が急速に増加しています。適切な維持管理の実施により重大な損傷を未然に防ぎ、地域社会や人命を守ることはもちろん、将来的な維持・管理コストを低減させる必要があります。当市では、リスクベースメンテナンスの考え方に基づいた維持管理に取り組むとともに、定期点検により損傷が軽微な段階から適切な修繕を実施する『予防保全型管理』への移行を進めています」
―長寿命化、維持管理の指針はどのようになっていますか。
「16年度末に策定した『浜松市道路橋長寿命化計画』において、全管理橋梁を対象にリスクベースメンテナンスの考え方を取り入れ、緊急輸送路など路線の重要度と橋長に応じた優先度区分を設定し、『予防保全』を維持管理の目標に位置付けています。計画には、法定点検から修繕に至る長寿命化計画の他、耐震補強計画や塗り替えの計画も盛り込んでいます」
―点検の進め方について聞かせてください。
「橋梁の定期点検は14年度の道路法改正に伴い、5年に1回の近接目視による点検が義務付けられました。18年度が5カ年目に当たることから、本年度中に1巡目の定期点検を全て完了する予定です。点検に当たり、平常時路線や緊急時路線の橋長15メートル以上をレベルA、橋長15メートル未満をレベルBに区分し、それ以外の路線の橋長15メートル以上をレベルB、橋長15メートル未満をレベルCの三つに分け、レベルCのうち橋長10メートル未満の橋梁を市役所職員により点検を実施しています。市内にある約5900橋のうち、橋長10メートル以上の約2200橋が外部に委託、その他の約3700橋は職員が点検を行っています。昨年度までに、約8割の点検を終了しており、18年度は外部委託・職員実施分を合わせ、約1100橋の点検を計画しています」
―耐震補強について聞かせてください。
「耐震補強は、従前から取り組んでいる1996年度より前の道路橋示方書に基づいて整備した緊急輸送路上で橋脚がある橋長15メートル以上の56橋と跨線橋20橋、跨道橋28橋の計104橋を、『浜松市道路橋長寿命化計画』に盛り込み進めています。このうち、未補強の15橋を最優先に実施していくとともに、2016年度に国から移管された国道301号の弁天大橋や中浜名橋の他、新たに耐震補強が必要な橋梁を計画に盛り込み進めていく予定です」
―18年度はどのような事業を予定していますか。
「継続事業として進めている国道473号原田橋の再建は国の個別補助事業となり、着実な事業実施の見通しが立ちました。18年度は、製作を進めている上部工の架設に着手する予定です。工期や施工環境など厳しい条件下ですが、地域の皆さんの生活のためにも着実に整備を進め、19年度の完成を目指します。 橋梁補修は、雄踏大橋など約100橋で工事を実施する予定です。耐震補強は、国道152号の横山橋など7橋を計画しています。横山橋は14年度から継続して工事を進めており、18年度は支承部分水平分担構造を設置する予定です」
―地元の建設事業者に期待することは。
「地域の安全・安心を担っている建設事業者の皆さんには、大変感謝しています。建設事業者の皆さんの支援や協力なくして道路や橋梁の適切な管理・保全を図っていくのは困難です。引き続きご協力をお願いします。また、建設業の働き方改革実現に向け、発注の平準化や完全週休2日制の導入などを積極的に進めていきたいと考えています。少しでも建設業界が活性化し、若い人たちに興味や関心を持ってもらえるように意見を出し合って改善していきましょう」