catch-up(2021年6月-7月)|建設ニュース 入札情報、落札情報、建設会社の情報は建通新聞社 中央

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Catch-up 増加する偽装一人親方 元請けが現場入場制限

 

 国土交通省が進めてきた建設業の社会保険加入対策により、企業単位の加入率は2020年10月時点で98・6%になった。対策前の1110月時点と比べると14・5ポイントの上昇だ。その一方で、社会保険料の削減を意図し、実態は社員である技能者を一人親方にする企業が特に都市部で増えているという。偽装一人親方≠ニ呼ばれるこうした技能者とはどのような存在であり、何が問題なのか

 建設業の社会保険加入対策は、技能者の雇用環境の改善と不良不適格業者の排除を目的として、1211月にスタートした。加入率の上昇に伴い、2010月に施行された改正建設業法では、建設業許可・更新時に社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)に企業単位で加入することを義務化。

 これにより、加入対策の目標である許可業者の加入率100%は、5年更新の建設業許可が一巡する25年9月末に達成されることになる。

 他産業よりも遅れていた建設業の社会保険加入が飛躍的に進んだ一方で、給与の総支給額の約15%(年収400万円で60万円)とされる社会保険料の事業主負担を嫌い、社員を一人親方にするケースが増えている。社会保険料の個人負担による見た目≠フ減収を嫌う技能者本人が一人親方を選択することもあるという。

 社会保険加入対策が区切りを迎えた今、雇用形態の実態がある技能者を一人親方として処遇する、こうした行為が偽装一人親方≠ニして問題視されている。

 一人親方が事業主負担のない国民健康保険や国民年金に加入するよりも、事業主負担のある厚生年金や協会けんぽに加入できる社員のほうが補償は手厚く、個人負担は軽い。技能者の処遇を改善するための社会保険加入対策が、むしろ処遇の低下を招く事態が起きている。

 明らかに経験の少ない1020代の一人親方が現場に従事しているという声もある。技能者を社員化して社会保険に加入させている企業と偽装一人親方を抱える企業との間に、競争上の不公平感が生まれる恐れがある。

 国土交通省は、昨年6月に偽装一人親方の抑制策を検討する有識者会議を設置。この会議がまとめた提言を受けて検討されているのが、偽装一人親方を抱えている企業の現場入場制限だ。

 国交省はまず、現場入場制限の前提として、適正な一人親方像を明確化。一人親方には本来、請け負った仕事を自らの責任で完成させる技術力があるはずだとして、適正な一人親方には「実務経験年数10年程度以上」「職長クラスや建設キャリアアップシステムのレベル3相当の実力」が必要だと定義。これらの条件に合わない一人親方を抱える企業を下請けに選ばないよう、『社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン』を改訂して元請けに指導を求める考えだ。

 一方、実際に現場で働く偽装一人親方の入場を制限した場合の現場の施工体制を懸念する声も業界内では根強い。短期間で集中的に人手が必要な内装工や型枠工などはなおさらだ。

 とは言え、社会保険加入を逃れるために技能者を一人親方化することは、個人事業主として適正に現場で働く一人親方を含め、技能者全体の処遇を低下させることにもつながりかねない。

 偽装一人親方問題は、さらにその先にある課題を建設業につきつけている。国交省は、「重層下請構造の改善や社員化といった、技能者の処遇改善のために避けて通れないテーマと向き合う時が来たのではないか」(建設市場整備課)とみている。

 

 

Catch-up 実現できるか「賃上げ2%」 成長と失速の岐路≠ノ

 

 東日本大震災以降、企業利益の増加、就業者の賃金上昇といった好循環にあった建設業が「成長」と「失速」の岐路に立たされている。2020年度の毎月勤労統計調査で、建設業の現金給与総額(事業所規模5人以上)が8年ぶりに減少。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う民間建設投資の先行き不透明感は、賃金上昇の停滞という形で表面化した。

 毎日勤労統計調査における建設業の現金給与総額は、12年度に36万6013円だったが、建設投資の増加とそれに伴う労働需給のひっ迫を受け、19年度には12年度比14・5%増の41万8968円まで上昇した。20年度は41万6024円とわずか0・6%減とはいえ、8年ぶりに減少に転じた。

 「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための5か年加速化対策」が昨年12月に決定し、今後5年間の公共投資に見通しが立った反面、コロナ禍の長期化による民間建設投資の不透明感が企業のマインドに悪影響を与えている。

 今年2月に発表された公共工事設計労務単価でも、すでにその影響は現れていた。昨年10月時点で施工中の公共工事に従事する労働者の賃金を調査した結果、地域別・職種別に2000以上ある単価のうち、42%が前年度の単価を下回った。労務単価は、13年に法定福利費の事業主負担分を計上するなど、国交省が政策的に単価を伸ばしてきた側面もあるものの、上昇基調は明らかに失速した。

 国交省は、今回の単価の下落がコロナの影響による一過性のものだとみて、前年度額を下回った42%の単価を同額に据え置く特別措置を適用。これにより、3月に改訂された労務単価は、全国全職種平均1・2%増と上昇基調を政策的に維持させた。

 翌3月30日には、国交省と建設業4団体が21年度の1年間で建設技能者の賃金上昇率を「おおむね2%以上」を目指すことで合意。行政・発注者・元請け・下請けが一体で賃金上昇の流れを維持し、労務単価の上昇、適正利潤の確保、さらなる賃金の引き上げという好循環を継続することでも一致した。

 国交省は、この合意に基づいて受注者が技能者の賃金を引き上げられるよう、まず公共工事でのダンピング対策を強化。6月15日に地方自治体に通知し、受注者が適正な利潤を確保できるよう、対策をさらに強化するよう要請した。

 この中では、低入札価格調査を行っていても、調査対象となった入札者の排除率が著しく低い地方自治体があることを問題視。こうした自治体には個別に改善を指導する考えを示した。メーカーからの見積もりを予定価格に反映する際、見積価格を根拠なく引き下げる行為を取り止めるなど、適正に予定価格を設定することも求めている。

 加えて、企業が将来の見通しを持ちながら安定的な雇用を確保できるよう、自治体に「安定的・持続的な公共投資の確保」を初めて要請した。

 ダンピングの横行、企業の利益の減少、従業員の賃金の低下という2000年代の負のスパイラルは、現在につながる担い手不足の要因にもなった。いったん賃金上昇の流れを絶やしてしまえば、建設産業がその後の10年の成長軌道を維持することはできない。

 

 

Catch-up 実務経験の虚偽申請に厳罰 技術検定の不正受験

 

 技術検定の受験要件として求められる実務経験年数を偽り、受験要件を満たしていない受験者の不正受験が相次いで発覚している。実務経験年数は、所属企業による証明、受験者自らの誓約によって信頼性を担保しており、この実務経験を偽る不正受験は、性善説に立ち、受験者からの自己申告で成り立つ技術検定制度の根幹を揺るがしている。

 一連の不正受験はどのように行われたのだろうか。施工管理技士資格を持つ社員357人(退職者含む)に実務経験の不備が見つかった大和ハウス工業は、20年4月に外部調査委員会の報告書を公表している。

 この報告書によると、同社には、資格取得時の祝い金の支給といったインセンティブの他、資格取得(2種目)を管理職への昇格要件にするなど、「資格取得への意識が高い企業文化」があったという。ただ、本来は実務経験として認められない他工種の実務経験を重複してカウントしていたり、自らの記憶と照らし合わせて実務経験を申告するなど、社内体制の不備が300人を超える社員の不正取得につながったとしている。

 一方、東レ子会社の水道機工は、会社として不正を後押していた事実が明らかになっている。同社の役員(当時)が実地試験の記述式の問題に実際には経験していない実務経験の記載方法や、試験機関に対する不正の発覚防止策を指導していた。また、西武建設は、経営事項審査への加点を目的として、実務経験のない事務系職員に資格取得を指示・推奨していたことが分かっている。

 国土交通省は、不正受験が立て続けに明るみにでたことを重くみて、不正受験を防止するための有識者会議を設置。この会議は昨年11月までに申請ミス防止や虚偽申請の抑止を柱とする再発防止策を提言。この中では、建設業法上の監督処分の厳格化も求めた。

受験要件である実務経験がなく、不正に資格を取得した施工管理技士は、主任技術者・監理技術者や営業所専任技術者の要件も満たさないため、所属する企業が建設業法違反を問われる。現行の監督処分基準では、不正に資格を取得した技術者を現場に配置した企業は、主任技術者・監理技術者の不設置とみなされ、15日以上の営業停止になる。 

有識者会議の提言を受け、7月中に改正される監督処分基準では、技術検定の受験時に虚偽の実務経験を申請し、不正に資格を取得した技術者を「1度でも」現場に配置すると、営業停止期間を現行基準の2倍に当たる30日以上にする。仮に不正に資格を取得した技術者を「複数」の現場に配置した企業は、営業停止をさらに1・5倍の45日以上とすることもできる。

 受験者本人に対する処分も厳罰化する。悪質な虚偽申請だけでなく、申請内容の記載ミスなどでも1年間の受験禁止措置を適用。所属企業に社内のチェック体制を強化してもらう狙いもある。

 建設業法では、建設工事の品質を確保するため、建設業者が組織として持つ技術力と技術者個人の技術力を求めている。技術者個人の技術力は、現場の応用能力が身に付く実務経験を重視する。

 技術検定の再編により、実務経験の少ない技術者が「技士補」を取得できるようになった。若手技術者が現場で活躍できる環境を整える今だからこそ、業界全体が襟を正す必要がある。

 

 

Catch-up 更新財源確保への道筋は 高速道路の償還制度見直しへ

 

 高速道路の整備には、建設費と維持管理費に利用者が支払う料金を充当する「償還制度」が採用されている。現行の償還期間が終了する2065年以降は、無料開放されることが原則だ。ただ、膨張する更新・修繕費の他にも、激甚化する災害や自動運転への対応など、高速道路のサービス水準を維持するための追加投資の必要性が高まっており、65年以降の料金徴収期間の延長や料金の引き上げなどによる財源確保の議論が進んでいる。

 償還制度は、財政投融資や金融機関からの借り入れで高速道路を整備し、利用者からの料金を返済に充てる仕組みで、1952年に創設された。小泉政権下で不採算路線の建設に歯止めがかからないとの批判を受け、道路公団の民営化時に償還期間の期限を2050年と定めた。

 ただ、民営化後の1212月に中央道笹子トンネル天井板落下事故が発生。高速道路の老朽化が抜き差しならない状況に追い込まれていることが浮き彫りになった。国土交通省はこの事故を受け、老朽化対策の財源を確保するための道路整備特別措置法を改正し、償還期間を2065年まで15年延長。この償還期間の延長によって、全国の高速道路の更新財源は現在までに約5・2兆円が確保されている。

 しかし、ここにきてこの更新計画に追加投資の必要性が指摘され始めた。高速道路の更新・修繕を進める中で、構造物の補修を繰り返すと性能回復が小さくなるため、補修間隔を短くする必要があることが明らかになった。性能が限界に達する前に抜本的に性能を回復させる大規模更新・修繕を繰り返し実施する必要があることも分かっている。

 高速道路には、一般道の10倍以上の大型車両が通行しており、劣化が進みやすい環境にもある。

 高速道路の更新・修繕費が増加する見通しを踏まえ、社会資本整備審議会の国土幹線道路部会では、今夏に更新・修繕の財源に関する提言をまとめる。災害に備えて暫定2車線区間を4車線化し、ネットワーク機能を強化したり、自動運転車両にインフラとしても対応するなど、社会変化を見据えた投資のための財源確保も必要だという。

 国交省は6月に開いた部会で、追加投資の財源を確保するための償還制度の見直しに向けて、「料金引き上げ」と「料金徴収期間の延長」の両案を提示した。

 このうち、現在の世代に負担増を求めるのが料金の引き上げだ。更新計画を含めて高速道路会社が抱える債務に追加投資分の費用を上乗せするため、現在の利用料金を値上げする形で追加投資分が反映される。

 2065年としている料金徴収期間の延長には、14年と同じ法改正が必要になる。現在の債務は65年の償還期間までの料金で返済し、追加投資額に応じて料金徴収期間を延長する。料金は据え置きのままだ。

 期限を定めずに償還期間を延長する、いわゆる「永久有料化」の導入は「引き続き議論する」として当面は先送りする。償還制度の見直しがいずれに落ち着くにせよ、債務返済後に無料開放する原則は現時点では維持されるようだ。


 

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