求められるダンピング対策 最新モデル採用5割に満たず
2021年度の技能労働者の賃金上昇率を「おおむね2%以上」とする目標が、今年3月に国土交通省と建設業4団体との間で決まった。国交省は、企業が技能労働者の賃上げに踏み切れるよう、公共事業量の確保とともに、ダンピング対策を前面に打ち出した。ダンピング対策の柱となるのが低入札調査基準価格と最低制限価格の適切な設定だ。
調査基準価格と最低制限価格は、予定価格を構成する直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等に一定の算入率を掛け合わせて算出する。受注者の現場コストや経営環境にも直結するため、公共事業の受注者にとって最大の関心事の一つと言える。
その算出に当たり国交省が自治体に求めているのが、国の省庁などで組織する中央公契連(中央公共工事契約制度運用連絡協議会)の最新モデル(2019年3月)の採用だ。
最新モデルでは、この10年にわたって徐々に算入率を上げるとともに、設定範囲も従来(09年モデル)の「予定価格の70〜90%」から「同75〜92%」に引き上げられている。適正範囲の下限が上がれば品質確保の面で受発注者双方にメリットがあるからだ。
しかし、今回の入札・契約適正化法に基づく実施状況調査によると、最新モデルを採用している市区町村は20年度に216団体(調査基準価格109団体、最低制限価格107団体)増えたものの、その全体に占める割合は、最新モデル以上の独自基準を採用している団体を含めても5割に満たない状況となっている。
改正品確法に基づく適正化指針では、調査基準価格と最低制限価格の適切な活用がダンピング対策に有効とされる。国交省は引き続き、都道府県公契連(都道府県公共工事契約業務連絡協議会)と連携した自治体への個別指導を通じて最新モデルの採用を進めるという。
新たな国土強靱(きょうじん)化対策などで、公共事業費は前年度とほぼ同規模の予算が確保されている。その恩恵を末端の技能労働者にまで確実に行き渡らせるためにも、最新モデルの採用をはじめとした一層のダンピング対策が求められる。
予定価格の公表 市区町村4割が“事前”
工期に関する基準 「考慮している」は3割
公共事業の週休2日 実施率上がらず
平準化の「さしすせそ」 市区町村に遅れ
業務のダンピング対策 半数以上が未導入
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