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■建設業の戦略営業 ―基本編―  =第8回=〜戦略営業・レベル4「顧客ニーズを把握し、自社の優位性を促進する活動」〜

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前回の戦略営業のレベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」に続いてレベル4「顧客ニーズを把握し、自社の優位性を促進する活動」を解説する。
建設業者であれば誰もが、工事を特命で受注できるのであれば、それが最良であると思うのは当然のことである。昔であれば、顧客と業者の間には決して裏切る事のない信頼関係があり、高い特命工事比率を維持できた。
しかしながら、そのような顧客との関係は今では砂上の楼閣のようにもろくも崩れ去ろうとしている。特命であっても顧客に参考見積と言われながら競合他社の見積価格と比較されたり、建物移転に伴い長年の付き合いがホゴにされて他者に乗り換えられたり、前施工物件が他社に改修工事を取られたり等々で最近は顧客と業者の関係は義理人情だけでは立ち行かなくなってきているようだ。
だが、前向きに捉えればあなたの会社も努力次第では他社の顧客を奪い取るチャンスが増えてきているとも考えられる。これからの建設業界はサバイバル競争の時代である。他社の顧客やそのシェア(占有率)を奪い取らねば自らが他社に食われてしまうのだ。

 (1)情報収集活動の重要性
顧客訪問活動の中で競合他社を抑えて自社の優位性を促進するためには、「何が受注促進の決め手になるか」をいち早く探らねばならない。そのため新規開拓顧客はもちろん既存顧客も含めて顧客訪問活動の中での情報収集は大変重要である。
情報は主に顧客以外のルートで入手する情報と顧客への直接訪問にともなう担当者から聞き出した情報とに分かれる。顧客以外のルートからの情報は、さらにインターネットや経済誌などのメディア媒体で入手できるものと金融機関や取引業者、政治家などの人的ネットワークから得られた情報とに分かれる。
 特に顧客の担当者からの生の情報は有益であり、営業担当者としては顧客に深く入り込み、顧客が本音を出したり、まだマル秘レベルの情報を打ち明けてくれるような関係を構築しなくてはならない(第6回、第7回のレベル3「顧客コミュニケーションを向上させる活動」参照)。
 
 (2)自社優位性促進のための情報収集活動
 まず実際の情報収集は、窓口担当者に対するニーズ把握から始まる。顧客は建物をたてることが目的ではない。倉庫が手狭で使いにくい、売上げが好調なので拠点に自前の事務所が欲しい等々の“顧客の困りごと”に真剣に耳を傾けると様々な顧客の抱える問題点が浮かび上がり真の顧客ニーズが見えてくる。必要に応じて上席者や技術部門の社員と同行営業によりニーズを促進することも重要である。
 また、担当者と面談するときは、一担当者や担当部門に限定しないことである。法人営業の場合はひとつの意思決定を行う際にはその会社の役員および複数の部門の関与や承諾が絡む場合が多い。
一担当者や担当部門にだけ足繁く通い確約までもらって最後に他社にひっくり返されるような場合は、その会社の上層部や他部門の意向、動きについて十分把握しきれていなかったケースがほとんどである。

(3)自社優位性の促進
 幅広い情報収集活動により顧客ニーズをつかめば、後はいかに自社が優位となるように働きかけるかである。「弊社としてお役に立ちたい」という姿勢で顧客とのニーズ共有化を進め、促進していく。
主な自社優位性の促進要因としては、経営トップやキーマンへの接触、土地、テナントの斡旋、設計協力、技術に対する評価・信頼性、企画力、価格などがあげられる。
これらの促進要因は1点のみで優劣が決まる場合は少なく、ある種の優先順位の中で複数の要因が絡んでくるケースが圧倒的に多い。それだけに他社を蹴落として自社が優位性を確保するためには、「何が促進要因となるか」も含めて十分な情報探索が欠かせないのである。
次回は「戦略営業」の最終レベルとなるレベル5「提案営業ができる活動」について解説を行う。


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執筆者プロフィール

株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業システム研究所 副部長コンサルタント 酒井 誠一