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建設業の調達サプライチェーン最前線 データ活用から取り組む業界の最適化【第3回】設計データのモジュール化を起点としたマス・カスタマイズ生産の手法

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 前回は”規格化”、”量産”を前提とした製造業のものづくり手法、および建設業と製造業の違いについて紹介しました。
今回は弊社が製造業からヒントを得た、「設計データのモジュール化(※1)」を起点とした建設部材のマス・カスタマイズ生産(※2)の手法について紹介します。

■一品一様の建設部材における設計をモジュール化
 建設部材には、現場の特異性に応じて、加工条件(長さ、高さ、厚さ、穴位置など)がわずかに異なる部材が多数存在し、それぞれが一品一様の加工品として扱われてきました。
 弊社ではこうした部材の定数・変数を抽出し、パラメーターとして設定することで可変なモジュールを生成しています。
 このパラメーターを変更することで自動作図が可能になり、作図工数を約67%削減しています。20世紀に物流コンテナが規格化されたように、一品一様の建設部材においてもカスタマイズが可能な形で標準化を図っていると言えます。

■マス・カスタマイズ生産の実現
 設計データのモジュール化による最大のメリットは、マス・カスタマイズ生産の実現です。
弊社は開発したモジュールを利用しながら、100社超のパートナー工場様と得意領域がマッチする建設部材でマスプロダクション(大量生産)に近い生産を行っています。部材原価のトータルコストとして平均30%の改善実績が出ている背景は、製造業が”規格化”によって”量産”することで実現してきたボリュームディスカウント、製作工場の稼働率向上、生産性の改善が、設計データのモジュール化によって実現できているためです。
一方、あくまで部材はカスタマイズ(受注生産)であり、現場の特異性、お客様の求める仕様に合った製品を供給しています。大量生産と個別受注生産の組み合わせであるマス・カスタマイズ生産によって、生産性も、創造性も豊かにしていくこと。これが弊社が目指す建設業界の姿です。
次回は、活用例を紹介させていただきつつ、設計のモジュール化とマス・カスタマイズ生産で得られる効果について具体的にご紹介していきます。

※1 モジュール:建設部材を機能単位に分割し、機能的なまとまりとして定義すること。本件は一品一様の部材における共通項をパラ
メーターとして、数値を変更すると2D-CAD、3D-CADが可変するアルゴリズム設計を意味します。
※2 マス・カスタマイズ生産:少品種多量生産により生産コストを下げる「マスプロダクション(大量生産)」、顧客の要望に応じて仕様変更を行う「カスタマイゼーション(受注生産)」。この2つの生産方式を掛け合わせ、顧客の要望に応じながら大量生産を可能にすることをマス・カスタマイズ生産と言います。

執筆者プロフィール

株式会社BALLAS代表取締役 木村将之(きむらしょうの)

木村将之(きむらしょうの)
株式会社BALLAS代表取締役
総合商社・双日株式会社で金属・資源分野の輸出入、事業投資、事業会社の経営支援に従事し、金属3Dプリンター事業の海外展開のため、欧州へ赴任。その後、製造業スタートアップ・株式会社Catallaxyでの経営企画責任者を経て、2022年2月に株式会社BALLASを創業。
株式会社BALLAS
https://www.ballas.biz/
建設部材の最適な調達を実現する「BALLAS」
https://business.ballas.biz/