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建設業の調達サプライチェーン最前線 データ活用から取り組む業界の最適化【第4回】設計データのモジュール化を起点としたマス・カスタマイズ生産の実例

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前回紹介した設計データのモジュール化(※1)は、一品一様の建設部材の生産では困難とされていたマス・カスタマイズ生産(※2)を実現する新たなアプローチです。
今回は、弊社にて承った建設工事会社のお客様の活用事例を紹介します。
■機械器具:リニューアルエレベーター会社での活用事例
【事例部材】エレベーター巻き上げ機架台の作図
【Before】
・エレベーター設備のリニューアルでは、既存設備や建物構造を制約条件として、形状が同じで仕様が異なる設備付帯部材を毎度作図、製作する必要がある。
・リニューアル需要が増加する中、お客様内で作図業務が属人化し、知見の共有に再現性がないことから供給力のボトルネックとなっていた。
【After】
・過去図面を基に巻き上げ機架台のパターン化、および可変なモジュールを生成。設定されているパラメーターを変更するだけで自動作図が可能になり、作図工数を約67%削減。
・弊社にて作図のみならず製作まで行うことで、コスト削減・納期短縮にとどまらず、品質が担保された状態で供給力を強化。
■機械器具:ポンプメーカーでの活用事例
【事例部材】ポンプユニット架台
【Before】
・ポンプユニットにおける架台は、使用するポンプ性能や設置場所によってカスタマイズが必要な部材。
・作図リソースの枯渇からお客様は年間100台以上の作図を外注していたが、外注先の担当者によってスピード、精度が異なること、外注コストの高さに課題があった。
【After】
・過去図面をもとにポンプユニット架台の可変なモジュールを生成。作図工数を約60%削減すると共に作図精度を平準化。
・現在はポンプユニットの架台のみならず、点検台、カップリングガードなど、その他の設備付帯部材を含めた一式でのモジュール化が進む。
上記を一例として、エレベーターの他にゴンドラなどの昇降機部材、給排水衛生工事におけるインフラ設備架台、空調工事における耐震配管支持などをはじめ、重仮設工事、内装工事においてもモジュール化のパートナーとしてマス・カスタマイズ生産の実現を支援しています。
次回は、モジュール化の波及効果から建設業の工業化について紹介します。
※1 モジュール化:建設部材を機能単位に分割し、機能的なまとまりとして定義すること。本件は一品一様の部材における共通項をパラメーターとして、数値を変更すると2D-CAD、3D-CADが可変するアルゴリズム設計を意味します。
※2 マス・カスタマイズ生産:少品種多量生産により生産コストを下げる「マスプロダクション(大量生産)」、顧客の要望に応じて仕様変更を行う「カスタマイゼーション(受注生産)」。この2つの生産方式を掛け合わせ、顧客の要望に応じながら大量生産を可能にすることをマス・カスタマイズ生産と言います。

執筆者プロフィール

株式会社BALLAS代表取締役 木村将之(きむらしょうの)

木村将之(きむらしょうの)
株式会社BALLAS代表取締役
総合商社・双日株式会社で金属・資源分野の輸出入、事業投資、事業会社の経営支援に従事し、金属3Dプリンター事業の海外展開のため、欧州へ赴任。その後、製造業スタートアップ・株式会社Catallaxyでの経営企画責任者を経て、2022年2月に株式会社BALLASを創業。
株式会社BALLAS
https://www.ballas.biz/
建設部材の最適な調達を実現する「BALLAS」
https://business.ballas.biz/