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■「土木建設業と環境ビジネス最前線」 =第4回=〜注目を集めるアスベスト対策ビジネス〜

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このわずか1〜2年間で、アスベスト対策ビジネスへの参入を計画している土木建設企業は急増しています。新聞紙上でもアスベスト被害についての報道が増えていますし、アスベスト規制に関する法律が制定・施行されてきたからでしょう。ビジネスマーケットとしては、今後、急速に大きくなっていくはずです。
ところで、アスベスト対策ビジネスは潜在需要が4兆円以上と言われており、その概要は大きく4つの段階に分かれます。4つの段階とは、@アスベストの分析ビジネスAアスベストの解体・除去、及び収集運搬ビジネスBアスベストの溶融ビジネスCアスベストの埋立ビジネスです。一方、アスベストの性状・形状により、飛散性アスベスト(いわゆる、吹き付けアスベスト)と非飛散性アスベスト(鉄骨スレート等、建材に混ぜているアスベスト)に分かれます。飛散性と非飛散性については、その有害性・危険性が異なり、処理法方も違うので、分けて考えられています。
時々、「アスベスト(飛散性)はもう除去されてしまって、数年すればなくなるのでは?」と言われる方がいます。つまり、「アスベスト対策ビジネスは5年〜10年先にはないのではないか?」と言うのです。これについては、全くの認識不足と言えます。確かに、主な役所・学校等の公共関係のアスベスト(飛散性)の大半は来年度には解体・除去、そして、埋立処分されてしまうようです。しかし、民間企業のそれは、ほとんど手付かずと言えます。一部上場企業のメーカーであれば、解体・除去されてきていますが、それにしてもまだ適正に処理されているわけではありません。最終処分場に埋立されているわけではなく、仮置き?保管?という状態です。いわんや、中小企業の場合、まだまだ解体・除去さていない物件が本当に多いのです。法的な罰則が無い為、企業の取り組みがまだまだ甘いのです。厳密に言うと、不法行為が随所に見られているのです。今後、更に大きな社会問題になってくるのは間違いありません。
飛散性アスベストがそのような状態ですから、実は非飛散性の方は対策は全く取られていない、と言えるのです。ちなみに、30年前にアスベストが禁止になっているアメリカの場合でさえ、未だにアスベストが出てきているようです。30年経った今でもそうです。日本の場合も、アスベスト対策ビジネスは30年後も続いている、と言えるかもしれません。
 ところで、上記の4つの段階のうち、土木建設企業の参入が急増しているのは、Aのアスベスト解体・除去ビジネスです。4つの段階の中では、一番参入しやすいからです。@は設備が必要ですし、BCは許認可の問題でかなり高いハードルがあるからです。Aのアスベスト解体・除去ビジネスについては、年商1〜2億円規模が多いですが、年商10億円程度まで実績を残してきている地域土木建設企業もあります。そして、解体・除去の工法については、日本はまだまだ遅れており、アメリカの工法の方が先進的なので、一方で、その工法を研究して取り入れることを検討すべきでしょう。つまりは、まだまだ日本の工法は未成熟で、良く言えば成長の余力があるためビジネスチャンスが転がっていると言えるのです。
 マーケットはふんだんにある。法規制も、工法も、まだまだ未成熟。現状の参入企業も完璧な企業は少ない。したがって、これからが地域土木建設企業が本格的に参入すべき時期と言えるでしょう。

執筆者プロフィール

船井総合研究所 第八経営支援部 部長 菊池功