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■「土木建設業と環境ビジネス最前線」 =第6回=〜「チャンスの広がる廃棄焼却炉の解体ビジネス」〜

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環境ビジネスの中でも、地域の土木建設業者からの新規参入がここ2〜3年で増えているのが、二ッチな分野ですが、廃棄焼却炉の解体ビジネスです。廃棄焼却炉の解体ビジネスとは、文字通り、廃棄された焼却炉を解体するビジネスのことです。ここ2〜3年で急増した理由は、2002年のダイオキシン規制強化により、その規制に耐えられない小型焼却炉の休止・停止が相次いだからです。学校や市町村等の公共の小型焼却炉、民間企業で使用されていた小型焼却炉は、その多くが閉鎖されて未使用状態になっています。
ところで、普通の設備解体とは違って、廃棄焼却炉の場合、ダイオキシンを含有する為にその費用が非常に高額になります。解体する前に、ダイオキシンを安全に処理して無害化しなくてはならないからです。ダイオキシンを安全無害化した後に初めて、解体作業に着手できるのです。つまり、廃棄焼却炉の解体は「ダイオキシンの無害化処理」⇒「焼却炉の解体」という二段階になり、しかも、「ダイオキシンの無害化処理」の方が「焼却炉の解体」業務よりもはるかにコストアップ要因になります。一般的な解体業者では出来ずに、専門業者が対応しているからです。超小型の焼却炉でも、解体処理費用は数百万円掛かり、大型であれば数千万円もの解体処理費用が掛かります。ダイオキシンを含んだ焼却炉は、現地では処理できずに、焼却炉を密閉したまま、専門の処理プラントに運ばれて、厳重管理の下で処理されます(ダイオキシンの分解には、500℃以上の高温炉が必要)。さらに、コストだけではなく、工期も長くなり、実にやっかいなものなのです。
 所有者側としては、規制強化の為、使うに使えず、また、廃棄しようにもコスト的に高額な為、廃棄することすら出来ない、そういう状態が現実です。公共の焼却炉であっても、解体撤去がまだ進んでいない地域が多く存在しており、ましてや、民間の、特に、中小企業の小型焼却炉の解体撤去は放置されている状況です。廃棄焼却炉の潜在マーケットは、何と1兆円にものぼると言われています。
 そういう状況の中で、非常に注目されるベンチャー技術が出て来ています。ダイオキシンを常温・常圧で、かつ、現地で無害化処理できるという技術です。ある特殊な無害化溶剤をダイオキシンの付着した焼却炉本体に噴霧することにより、常温・常圧でダイオキシンがゲル状に固まり、やがては本体から剥がれ落ちてしまいます。そして、その落ちたゲル状の物質は、ダイオキシンが無害化・分解・安定化されているのです。ダイオキシンが無害化安定化して剥がれ落ちた後は、その場で解体作業が出来ます。この技術により、現地での即時処理が可能になり、コスト的にも安くなり、工期的にも短くなりました。従来のコストの約半分以下で賄えるようになりました。ちなみに、この技術は、ベンチャー企業が大学との共同研究により開発した技術で、特許も取得しています。
 実は、この技術を開発したベンチャー企業は、大手ゼネコンや既存の解体業者ではなく、地域中小の土木建設企業に使って欲しいという考え方を持っています。そして、現実的に、地域土木建設企業に積極的に技術を公開しています。しかも、技術の公開だけでなく、ダイオキシン処理工法の教育も行い、実地研修を通じて、工法の理解・取得は可能になっています。そして、今や、この技術を活用している地域土木建設企業は全国で数十社にもなり、100件以上の施工実績を持つようになりました。全く解体未経験の企業でも技術取得が可能なのです。
 地域土木建設企業が、このようなベンチャー企業とタイアップして先進的な技術を導入し、地元の利を行かして新規事業を進めていくことは、1つの方向性になると思われます。
船井総合研究所 環境ビジネスコンサルティンググループ
http://www.eco-webnet.com/


執筆者プロフィール

船井総合研究所 第八経営支援部 部長 菊池功