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建設業の資金調達の進め方第2回「金融検査マニュアル(別冊)とは」        

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 前回は、金融行政の変化による金融機関現場の変化についてお話しました。そこで今回は、変化の背景となった金融機関の貸出行動指針である「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」(以下別冊と略す)を中心に、金融機関の融資ポイントについてお話します。
 ここで金融庁の施策を整理しておきましょう。金融庁の施策は@金融機関のガバナンス(企業統治、法令順守性)の強化や自己資本の充実を目玉にした施策と、A融資企業の資産査定の指針を示した施策に大きく分けることができます。@に分類できるのが、「金融再生プログラム」「金融改革プログラム」、Aに分類できるのが、「金融検査マニュアル(本冊)」「別冊」です。
 平成11年4月に発表された「金融検査マニュアル(本冊)」は、金融機関に対して「信用格付け」「債務者区分」について強調されています。すなわち、『金融機関は、企業の財務力・信用力を査定し、格付けした債務者区分に応じて融資条件を決めなさい』ということです。「信用格付け」とは、債務者の信用リスク(金融機関が将来損失を被る可能性)の程度に応じた格付けを言い、「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により返済能力を判定して、その状況等により債務者を正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に区分することを言います。
 同マニュアルは、企業に対して貸出全般に関わる広範囲なものであることや、大企業・中小企業の区別なしに画一的な資産査定を行うことを金融機関に助長する懸念があったため、この中小企業版とも言える「別冊」が、平成14年6月に発表されました。「別冊」においても前述の「信用格付け」「債務者区分」を徹底する精神は同じですが、特別に中小企業の特性を考えた資産査定を行うべく、具体的な内容が書かれています。
 尚、今般8年ぶりに「金融検査マニュアル(本冊)」が改訂になります。今回の改訂は、内部統制等管理態勢とリスク管理態勢をチェックすることを、二本の柱にしていますが、引き続き中小企業への融資は「別冊」をベースに行われます。
 「別冊」では、企業の成長性の要因として、技術力、販売力に加え、「経営者の資質」が判断要素として追加されており、金融機関の査定では、これらを総合的に勘案して、債務者区分の判断が行われます。しかし、こうした要素について客観的に評価することは容易ではなく、将来的なキャッシュフロー見通しに反映されてこそ、こうした要素が評価を受けることになります。
 中小・零細企業等においては、景気の動向や取引先の業況等により受注が大きく影響を受け、一時的に収益が悪化するといった特徴が大企業よりも大きくみられます。将来のキャッシュフローが生み出せる企業の強みを大いに金融機関にアピールする必要があります。特に金融機関から判断しづらい技術力や販売力(営業力)が特徴の建設業は、企業からのより一層の情報開示が必要だと思います。
 次回以降は、「別冊」に記載されている検証ポイントや、それに対し建設会社としてどのように対応できるかを考えてみたいと思います。次回はまず、技術力についてお話しする予定です。

執筆者プロフィール

鰍ンどり合同経営  取締役・中小企業診断士  藤井一郎