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建設業社会保険未加入問題 個別相談会の現場から 第4回 重層下請構造における加入勧奨 (その2)

 第3回にて取り上げた、施工体制台帳等への社会保険に関する番号の記載に関しては、記載欄そのものは速やかに設ける企業が多かったものの、社会保険未加入対策の初期段階においては、下請企業に対して厳格に記載=加入までを求めたようなケースはさほど多くはありませんでした。

 これは国交省が示した「下請指導ガイドライン」にて「平成29年度まで」の加入完了を目指す趣旨が示されていたため、当初はある程度対応を緩やかにした元請企業が多かったことに起因しています。また、より現実的に見れば、加入が全く進んでいない当初からあまり厳格にしてしまうと、工事が全く成り立たない現場が続出することとなったでしょうから、それを避けての結果であったという見方もできます。

 そのため、これまでは元請企業等からの指導があったとしても、「そのうち厳しくなるから加入を考えておくように」「29年度までには加入するように」という緩やかな加入指導に留まっていたことが多くありました。

 しかし現在の加入指導強化の流れの中では、元請企業の下請指導責任も厳しく求められるようになってきたため、下請企業が「すぐに加入しないのなら現場には入れられない」といった、突如厳しい内容を突きつけられるケースの増加がみられます。

 現時点では元請企業ごと、また現場ごとに厳格さのバラつきが大きいのが現状ですが、今後の厳格化の流れを踏まえれば、未加入企業は突発的に社会保険加入を求められるケースを想定し、早めに加入検討を行う事が重要です。

 また、このような元請企業等からの加入勧奨とは別に、今後強まってくると予想されるのは、下請企業からの加入への圧力です。
第2回で触れたような行政の指導は、その企業が何次で工事に携わるかに関わらず行われるため、下請となる企業が先に社会保険加入しているケースがあります。そしてそのような下請企業では、加入に伴い発生する法定福利費については元請企業等と交渉する、請求するという考えを持たれる方が、社会保険未加入問題の開始当初に比べ確実に増えています。

 法定福利費の見積り計上は、現在その実効性に多くの課題を抱えつつ、行政、民間ともにその浸透を図っているところですが、未加入企業が、既に加入した下請企業から法定福利費について言及される、もしくは実際に請求を受けることは既に起こっています。

 重層下請関係において、例えば一次下請企業は元請企業に法定福利費の請求を行うと同時に、二次下請企業には請求される立場であるということを忘れてはなりません。

執筆者プロフィール

社会保険労務士法人エール  社会保険労務士 加藤大輔

加藤大輔
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