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建設業社会保険未加入問題 個別相談会の現場から 第7回 「社会保険加入離職を防げ」その2

 社会保険未加入問題においては、企業も従業員もその負担に目が向きがちですが、「負担という義務」を果たすことにより、それに応じた「給付という権利」を得る、つまり安心を得ることができる制度であることを従業員に説明する必要があります。

 例えば健康保険においては、病気やケガの療養のための休業期間について、給与の概ね3分の2が支給される「傷病手当金」という所得保障機能があります。

 また厚生年金に関しては、いわゆる「二階建ての年金」と称されるように、国民年金の上乗せという位置付けであり、国民年金のみでは不十分な年金給付を手厚くしてくれます。また、年金というと老齢年金が制度の中心ですが、それ以外にも障害年金、遺族年金といった、自身や家族の安心に繋がる年金もあります(図参照)。

 尚、年金に関しては、今まで年金保険料をほとんど支払っていなかったために、これから支払っても掛け捨てになると、加入に抵抗感を示される方への説明について多くご相談を頂きます。

 この点に関しては、年金受給権を得るために必要な加入期間が現在の「25年」から、消費税率10%への引上げ時(平成29年4月予定)に、「10年」に短縮される予定であることを説明しましょう。この実現により、多くの方の年金受給権が確保されうる道が開けることとなりますので、非常に重要な制度改正です。

 また、今回の社会保険未加入対策において、厚生労働省は企業に対してだけではなく、滞納がある個人を対象にした、国民年金保険料の督促強化も段階的に進めており、平成30年度までを目途に「すべての滞納者」に順次督促を行う予定となっております。

 よって、滞納中の従業員に今後の年金保険料負担を説明する際には、負担0円(つまり未納の状態)を前提とするのではなく、国民年金保険料負担はあることを前提として、厚生年金の負担を比較すべきです。

 社会保険加入をきっかけとした離職を防ぐためには、建設業の社会保険未加入問題や、社会保険制度を正しく説明する能力、これを企業として担保せねばなりません。それを社内で担うのか、または必要に応じてアウトソーシングするのかは、企業により判断が分かれるところでしょう。

 ただ現在、建設業は業界全体として人手不足の問題を抱えており、人材確保難の時代を迎えているため、従業員の離職は企業経営にとっては大きな痛手です。それだけにこの説明能力の担保が、企業の未加入対策の中でも、非常に重要な課題となっていることは間違いないかと思います。

執筆者プロフィール

社会保険労務士法人エール  社会保険労務士 加藤大輔

加藤大輔
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