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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第9回 建設業の働き方改革 〜魅力ある産業を目指して〜

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 安倍内閣が推し進める「働き方改革」、その波が建設業界にも着実に押し寄せています。働き方改革について安倍首相は、「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と述べ、また一億総活躍社会とは、少子高齢化による労働力人口の減少が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」としています。

 この「労働力人口の確保」という観点は、実は、現在も続く建設業の社会保険未加入対策における目的の一つでもあります。つまり社会保険も加入できない業界から脱却し、若者に選ばれる魅力ある産業への転身を目指した取り組みです。

 切り口としては「社会保険」に焦点を当てた改革ではありましたが、「魅力ある産業へ」という目的を掲げて取り組みを進めてきた点で言えば、建設業はある意味で、他業界に先んじて働き方改革を実施してきたといえます。

 ただ、未加入対策により、確かに建設業における保険加入率は向上しましたが、社会保険完備はそもそも法令上の義務であり、これだけで業界の魅力が十分備わったわけでは当然ありません。むしろ他業界と比較した際の魅力・競争力においては、まだまだスタートラインに立ったとはいいがたい課題が多く残されています。
 
 それら課題の中でも主だったものとして下記などが挙げられますが、これはイコール、現在この業界の魅力に影を落としている要素に他なりません。

・労働時間に関するもの(長時間労働、休日の少なさ、朝が早い、現場への長時間移動など)
・労務管理の不徹底(雇用契約書の不備・未締結、社会保険未加入、労働時間管理の不十分など)
・教育体制の未整備(「見て覚えろ」の業界、生産性の低さとの関連、不明瞭なキャリアパスなど)

 建設業界は少子高齢化が特に顕著な業界の一つであり、働き方改革への取り組みの重要性は高いといえます。

 建設業界がその魅力を発信する際、「社会資本整備を担うものづくりという意義ある仕事」「形として残る達成感ある業界」といった切り口がよく見られますが、こういった業界独自の魅力を発信することは、確かに業界の発展には不可欠なことです。

 ただ、業界独自の魅力発信も、「就業環境」が他業界と比して大きく劣らないという基礎の上でこそ初めて生き、そして十分な人材が確保出来る、このような認識が重要な局面を迎えています。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。