建通新聞社

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建設不動産会社の顧客目線・顧客重視の実現
〜問題の可視化と履歴管理によるマンション建物バリューアップのコツ〜
第7回 一般消費者の視点で・信用できる供給者/インスペクターと出会うには

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 建設不動産業界が抱えている構造的な問題を取り上げ、いかにして顧客重視を実現するか、というお話を中心にコラムを連載していますが、今回はちょっと立ち位置を変えて、一般消費者はいかにして真摯(しんし)な姿勢の供給者等と出あい、選択をすればよいのか?というお話をしてみましょう。

 スマートフォンの普及によりインターネットへのアクセスが簡単になり、私たちは良くも悪くも簡単に、多くの情報に触れることができるようになりました。とても便利な時代になりましたね。そしてさらに、SNSの普及により、情報を受けるだけでなく、世界中に発信することができるようになりました。実は便利な反面、ややこしい状況になっていると、私は感じています。つまり、受け取った情報を選別し判断するという、新たなスキルを身につけなくてはならなくなったのです。裏を返すと、間違った情報であっても、簡単に発信することができる時代である、ということなのです。

 以前、本コラムでもお話した建設不動産業界の特徴は覚えておいでですか? そう、供給者と一般消費者との間に、大きな情報ギャップがある、ということです。
 このような状況では、情報ギャップを埋めるところにビジネスが生まれたり、いわゆる「ご意見番」のようなコメンテーター的な存在が生まれたりします。このようなご意見番は、得てして業界と消費者との間に対立軸をつくり、自らの存在価値をアピールしがちである、ということでした。

 さて、SNSが普及した現在においては、もう一人種、「プロ消費者」という存在を忘れてはなりません。
 ご自身の経験や知識をもとに、SNSで情報発信をする「ブロガー」と呼ばれるような方たちです。専門知識を身につけ、日々勉強をされている素晴らしいブロガーだけでなく、建設不動産業界を敵視するような、あまり上品とはいえないブロガーもおり、これらを見分ける必要があるのです。

 少なくとも私が検索をしてみた限り、「自分で建築現場を検査してみよう」といったキャッチコピーのブログなどには、多くの間違いや見るべきポイントを誤ったものがありました。ご意見番のようなサイトにしても、いたずらに一般消費者をあおりたてるようなものがたくさんあるように思えます。こうなってくると、もうよく分からなくなってしまいますよね。

 それでは一般消費者は、何を信じて信用できる供給者や、インスペクターと出会えばよいのでしょうか。
 正直なところ、「一級建築士」や「インスペクター」であることはアテにはなりません。ホームページがしっかりしているかどうかも、お金をかければきれいなホームページができてしまうので、判断材料にはなりません。
 最終的には相性などもあるため、「相手が信用できそうか」というところに頼らざるを得ないというのが実情です。

 最近、とある事業会社さんが既存建物の屋上防水を更新したと聞いたので見に行きました。工事請負明細に記載のある仕様と信じ込んで行ったら―。なんと、全く異なる仕上げになっていたのです。「昔から知っている業者さん」が施工を担当しても、こんなことが発生してしまうのが、残念ながらいまだにあり得るということです。

 もし一つだけヒントを述べるとしたら―。第三者を否定したり悪く言ったりするような業者さんは、あまり質のよい業者とはいえません。
 まずは出会ってみること。そして常に中立な立場で問題解決に導くような事業者を選択すること。
 当たり前のことだとは思いますが、これが実はシンプルで最も重要なポイントだったりするのです。

執筆者プロフィール

株式会社建物検査・調査・診断研究所(Biid) 代表取締役社長 安部博文

安部博文
株式会社建物検査・調査・診断研究所(Biid) 代表取締役社長
nfo@biid.co.jp
一級建築士、一級施工管理技士、住宅性能評価員。20年間の施工現場経験を礎として、検査業務に従事して10年以上。豊富な経験と「本質を突き詰める」鋭い視線で新築施工検査、既存建物調査に挑む。趣味は釣り。息子と猫を溺愛。1963年島根県出身。 http://www.biid.co.jp