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方向性と目的の一致が永続的な収益向上をもたらす
第4回 理念策定は準備段階、本当の始まりは理念浸透

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 出口が推奨する経営理念の構成は、第1回の図解でお伝えしたように、ミッション(使命・目的)、ビジョン(未来像・目標)、バリュー(価値観・行動指針)の3つです。

 ビジョンを実現するためには現状と理想のギャップを埋める必要があります。そのギャップを埋めるためには、日常業務での価値観・考え方・行動が伴っていないと、目標は夢で終わってしまいます。

 では、バリューがどういうものなのか、面白くてインパクトのある顧問先のバリューを1つご紹介します。バリューは通常10〜20個を理念に盛り込んでいます。

【手を抜くな!手間を抜け!】
 手を抜くのではなく、手間を抜くための作業改善をし、日々の生産性向上に繋げます。

 ものづくりにおいて、仕事で大切にする価値観や考え方を相反する言葉として並べているのが、とてもユニークです。社内で合言葉にして憶えやすくするために、バリューにはタイトルを設けています。これを意識しながら、仕事に取り組み、また業務フローを見直せば、仕事の質は高まります。

 理念全体で言えることですが、バリューは良くも悪くも綺麗ごとです。皆が良いと思う言葉ばかりですが、人は習慣や環境に流されがちで、実際やれていないことも多いでしょう。ただ、習慣には良い習慣と悪い習慣があります。例えば、朝15分早く起き、仕事前に今日やる事を書き出すだけでも朝からロケットスタートが可能です。これは良い習慣。

 逆に深酒をしてギリギリに出社し、エンジンがかかったと思ったらすぐに昼食の時間。午後は睡魔に襲われ、仕事を終わらせるために残業するのは悪い習慣。同じ仕事をする上でも習慣の違いによって生産性は大きく変わります。

 労働時間については法的な課題もありますが、短時間労働で高い生産性を実現するためには、時間密度の濃さが大切です。ミスや事故にも関連する話です。会社が良しとするバリューを実行しようと思えば、生活習慣にも気を配る必要があるという解釈ができます。

 出口は習慣を変えることを【良い習慣の上書き】とお伝えしています。ただ、ご承知の通り習慣を変えるには時間がかかります。人は変化を嫌う生き物なので、一気に変えようとすれば元に戻ろうとするため、揺り戻しや反動が生じます。習慣化には、少しずつ何度も何度も繰り返すことで、本人すら知らぬ間に変わった状態を作る必要があります。それにより良い習慣が広まれば、意識の高い企業文化を作ることができます。

 ちなみに、理念浸透で必ずお勧めしているのが、クレドカードの制作と携帯です。クレドとは理念のことで、クレドカードを用いた経営、顧客へのおもてなし等で有名なのが、リッツカールトンホテルです。写真はリッツカールトンホテルのクレドカードです。常時携帯することで、いつでも理念を目にすることができます。

 実際クレドカードを作られた会社では、毎日朝礼でクレドカードを広げて、班長がバリューを1つ選んで読み上げ、グループごとにそのバリューを元にして今日重点的に取り組む内容を考え、声に出して共有しています。他にはスマートフォンのグループメッセージ機能の活用、手書きシートの掲載など、週や月単位で各社環境に応じて、様々な方法で理念を日常業務に落とし込んでいます。頻繁に理念に触れ、考え、行動することが綺麗ごとを当たり前にしていきます。

 『経営理念の浸透は簡単にできます!』と言いたいところですが、経営者の覚悟と根気も問われます。だからこそ、経営は面白いのかもしれません。

 次回は、行動指針で養われる採算意識、時間意識、相手目線について、お伝えします。

執筆者プロフィール

株式会社心楽コンサルティング代表取締役 想いとお金の両立パートナー 出口 経尊(でぐち みちたか)

出口 経尊(でぐち みちたか)
株式会社心楽コンサルティング代表取締役 想いとお金の両立パートナー
建設関連を専門にチャレンジできる場を整え、物心両面で豊かにする想いとお金の両立パートナー。徳島文理大学工学部機械電子科を卒業後、建設会社勤務を経て、2000年から建設業に特化した工務店の集客や協力業者との業務改善に携わり、16年に心楽コンサルティングを創業した。現在は建設業をはじめ、製造業、士業などで経営理念の策定やキャッシュフローの計画策定、チームワークを強化する研修を通して、経営者が理想とするビジョン実現をサポートしている。また、中小企業だけでなく、メーカーや団体が主催する講演、研修も行う。経営士、理念実現パートナー、キャッシュフローコーチの資格を取得。香川県出身。365日ブログ更新中(http://shinraku.biz/)