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方向性と目的の一致が永続的な収益向上をもたらす
第5回 行動指針で養われる相手目線の採算意識、時間意識

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 今回が経営理念について最後のコラムとなります。過去4回の記事では、経営理念の再定義、役割、浸透方法についてお伝えしました。

 しかし、企業にとって他にも大事なことがあります。それは【お金】です。当たり前ですが現金が尽きる(貸借対照表の視点)、利益を生まない(損益計算書の視点)と会社は存続できません。最も分かりやすいのが二宮尊徳の名言『道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である』です。後半の道徳を経営理念とするなら、お金を意識しないことは寝言、つまり夢で終わってしまいます。

 その夢を実現するためには、具体化した目標と適した行動が必要になります。そこで経営理念の効果として挙げたいのが、採算意識や時間意識の改善です。この2つは、過去の経験や環境の違いから人それぞれ異なりますが、一人ひとりの価値観を会社全体として整えることができたなら、生産性が向上し、結果として経営数字に良い影響を与えます。もし、全員の価値観が『時は金なり Time is money』となれば、採算意識と時間意識の高い集団になります。また、社内評価制度の項目を経営理念の行動指針と合致させれば、さらに効果は高まるでしょう。

 採算意識や時間意識が高まれば、間違いなく生産性は向上しますが、忘れてはいけないことがあります。それは【満足させる対象者が誰であるか?】ということです。仮にその対象者が自分や自社だけだとしたらどうなるでしょうか? 自己中心的な集団だとしたら、一時的に稼ぐことはできても永続的な発展繁栄はあり得ないでしょう。これは『道徳なき経済は犯罪』の部分です。逆に自分や自社が犠牲を強いられた状態が続くと、社内が疲弊して同じく発展繁栄はできません。これは建設業の人手不足の原因ではないでしょうか。

 そこで意識してほしいのが図にある【ステークホルダー(利害関係者)】です。仕事を通して関わる全ての人達のことで、対象者は会社を中心とした顧客・社員・家族・仕入先・外注先・銀行・地域などです。

 例えば、時間が無い、人手が足りない、身体が疲れている、イライラするなど厳しい状況の時、自分目線だけで判断するのか? それともステークホルダーを意識して相手目線で判断するのか? 判断基準の違いについては、クレームを事例にして、第3回のコラム(https://www.kentsu.co.jp/mlmg/699/news/000000000001.html)でご紹介しています。自分目線なら『もういいや』と判断しても、相手目線で『もうひと踏ん張りしよう』と判断したなら、結果としてステークホルダーの満足に近づくことができます。

 もし経営者が自社のことだけ考えたなら・・・、管理職が自分のことだけ考えたなら・・・、ステークホルダーの満足度が偏り、バランスが崩れ、社内外で応援されない会社となり、悪い影響が業績として表面化します。

 ステークホルダーの満足を実現する!

 経営理念が現時点では理想や綺麗ごとだとしても、満足に近づくだけで現状より良くなります。さらにステークホルダーの満足を実現できれば、理想や綺麗ごとが当たり前に変わります。このように基準を高めるには今は無理だと思えることでも、追及し続ける姿勢が  大事で、経営者に問われていることではないでしょうか。

 今回のコラムを通じて経営理念の役割や効果、重要性に共感いただき、一歩でも踏み出していただけると幸いです。ご一読いただきありがとうございました。引き続き、建設業の発展繁栄に貢献してまいります。

執筆者プロフィール

株式会社心楽コンサルティング代表取締役 想いとお金の両立パートナー 出口 経尊(でぐち みちたか)

出口 経尊(でぐち みちたか)
株式会社心楽コンサルティング代表取締役 想いとお金の両立パートナー
建設関連を専門にチャレンジできる場を整え、物心両面で豊かにする想いとお金の両立パートナー。徳島文理大学工学部機械電子科を卒業後、建設会社勤務を経て、2000年から建設業に特化した工務店の集客や協力業者との業務改善に携わり、16年に心楽コンサルティングを創業した。現在は建設業をはじめ、製造業、士業などで経営理念の策定やキャッシュフローの計画策定、チームワークを強化する研修を通して、経営者が理想とするビジョン実現をサポートしている。また、中小企業だけでなく、メーカーや団体が主催する講演、研修も行う。経営士、理念実現パートナー、キャッシュフローコーチの資格を取得。香川県出身。365日ブログ更新中(http://shinraku.biz/)