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Q&A そこが知りたい 建設キャリアアップシステム(全14回 44問)

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 技能者の就業履歴と資格情報を蓄積する「建設キャリアアップシステム」。システムの構築は、技能と経験を業界統一ルールの下で蓄積し、技能者の処遇改善を図ろうという他産業にも例のない試みです。運営主体である建設業振興基金には「システムに登録したいが、登録方法が分からない」「現場運用に向けどのような準備が必要なのか」といった多くの相談が寄せられています。建通新聞社では、こうした疑問に答える「そこが知りたい 建設キャリアアップシステム」を連載しました。


−−− 第1回 建設キャリアアップシステムとは(1) −−−


■□■ 技能と経験、処遇に反映 ■□■

 システムには、技能者の保有資格と現場の就業履歴を業界統一ルールの下で蓄積する。蓄積した情報を活用した技能者の能力評価制度を構築し、能力と経験が処遇につながる環境を整備。技能者の能力評価と連動し、専門工事企業の施工能力を見える化(企業評価)することで、優秀な技能者を育成し、雇用する企業が市場で選ばれる環境も整える。

Q1 建設キャリアアップシステムはなぜ必要なのでしょうか?

A.建設業では、技能や現場管理の経験が適正に評価されにくい構造にあり、技能者の賃金は40歳台前半でピークを迎える。建設キャリアアップシステムの狙いは、資格と就業履歴で技能者の技能と経験を客観的に評価し、処遇に反映することにある。積み重ねた技能と経験が賃金上昇へとつながる「キャリアルート」を示し、若年入職者の増加、離職率の低下を目指す。

Q2 システムの運営主体は?

A.2016年12月に国土交通省や建設業団体でつくる官民コンソーシアム(現・運営協議会)が、運営主体を建設業振興基金に決めた。システムの開発費は、運営協議会に参加する建設業団体や三保証会社の出えん金、本運用後の運営費は事業者・技能者の登録料や利用料などを充てる。

Q3 公共工事ではどのように活用されるのか?

A.今年3月に国土交通省がまとめた『建設業働き方改革加速化プログラム』では、技能者の能力評価制度の検討結果を踏まえ、高い技能・経験のある技能者を公共工事で評価することを検討する、と明記している。



−−− 第2回 建設キャリアアップシステムとは(2) −−−

■□■ 書類作成の手間を削減 ■□■

Q4 システムにはどのように登録すればいいのでしょうか?

A.まず、技能者登録と事業者登録を行う必要がある。技能者は本人情報や社会保険加入状況、保有資格など、事業者は建設業許可情報、資本金、社会保険加入状況などを郵送・インターネット・郵送・窓口のいずれかで登録申請する。登録した技能者には「建設キャリアアップカード」が配布される。

Q5 システムに登録する技能者のメリットは?

A.システムに登録蓄積される技能者情報(就業日数、保有資格など)を活用し、技能と経験で技能者が評価されるようになる。現場で経験を積み、資格を取得した技能者が高い評価を受け、処遇される仕組みができる。建設業をいったん離れても、離職以前の現場経験がシステムに残されるため、再入職の際に自身の経歴を証明できるようになる。

Q6 システムに登録する事業者のメリットは?

A.技能者の能力評価と連動した専門工事企業の評価制度も構築される。技能者を雇用し、育成に力を入れる企業が高い評価を受けるようになる。技能者の登録申請時に添付する「加入社会保険等証明書類」で真正性を確保した技能者の社会保険加入状況を確認できる。システムに登録した情報を使い、施工体制台帳、作業員名簿、再下請負通知書の作成作業も効率化される。

Q7 いつまでに登録すればよいのでしょうか?

A.システム登録は、各事業者・技能者の任意だが、本運用を開始する19年度にできる限り多く技能者・事業者の登録、5年で全ての技能者(330万人)の登録を目指している。



−−− 第3回 システムの利用手順 −−−

■□■ 現場単位で就業履歴蓄積 ■□■

 システムに登録した技能者は、元請け事業者が各現場に設置するカードリーダーに「建設キャリアアップカード」をかざすと、自動で日々の就業履歴が蓄積される。元請け事業者は現場開設時に現場・契約情報、下請け事業者は現場・契約情報に対応する施工体制や作業員名簿を登録する。

Q8 システムに蓄積される技能者の就業履歴とは?

A.技能者が各現場で就業した年月日と就業日数・履歴数が現場単位で蓄積される。対象の現場での立場(職長、班長など)も記録し、技能者が現場のマネジメントに携わった経験も評価できるようにする。

Q9 技能者と技能者の所属事業者が閲覧するにはどうすればいいでしょうか?

A.技能者は、自身の就業履歴と資格情報を閲覧するだけでなく、経歴を証明する書類としても出力できる。技能者が所属する下請け事業者は、自社の事業者登録情報、所属技能者の登録情報・就業履歴情報の一覧を閲覧可能。自社の技能者のカードの色(評価レベル)ごとの人数、有資格者数、社会保険加入率などをシステム上で集計できる機能も備える予定だ。

Q10 元請け事業者と上位下請け事業者が閲覧できる範囲は?

A.自社の事業者登録情報の他、稼働中の現場に限って下位の下請け事業者と所属する技能者の登録情報を閲覧できる。他社の事業者情報の検索・閲覧も認められているが、他社の技能者情報と就業履歴情報の閲覧には技能者本人と所属事業者の同意が必要になる。



−−− 第4回 技能者登録 −−−

■□■ 登録時の本人確認は必須 ■□■

 建設キャリアアップシステムを利用するためには、まず技能者情報と事業者情報をインターネット・郵送・窓口のいずれかで登録する必要がある。インターネット申請では、書類は全てJPEGデータで添付する。元請け事業者や上位下請け事業者、所属事業者による「代行申請」も認める。登録・審査を完了した技能者は「技能者ID」を取得し、ICカード(建設キャリアアップカード)を受け取ることができる。

Q11 登録時に提出する本人確認書類にはどのようなものがありますか?

A.現住所を確認できる「マイナンバーカード」か「運転免許証」の写しを提出するか、「パスポート」と「現住所が記載されている顔写真なし公的身分証明書」の写しを提出する場合は、インターネット・郵送・窓口の全てで申請を受け付ける。顔写真がなく本人確認ができない公的身分証明書(住民票など。2点必要)を提出する場合は、技能者本人が窓口で登録を申請し、本人確認を受ける必要がある。

Q12 本人確認書類がなくてもシステムに登録できるのでしょうか?

A.本人確認書類がなくてもシステムには登録できるが、建設キャリアアップカードの有効期限は10年から3年に短縮される。また、申請の受け付けは窓口のみになる。窓口申請時には、所属事業者の代表者の同行と、技能者本人の主な所属事業者であることの証明書の提出が必要になる。

Q13 登録申請書に添付する書類には本人確認書類の他にどのようなものがありますか?

A.登録料金の振込受領書(郵送・窓口のみ)と建設キャリアアップカード用の顔写真の提出は必須。登録情報の証明に必要な添付書類=表参照=を提出すると、システムに「証明書類の確認あり」と登録される。登録申請書に記載があっても、証明書類の添付がない場合は「証明書類の確認なしの情報」として登録される。



−−− 第5回 事業者登録 −−−

■□■ 管理者IDは追加取得可能 ■□■

 インターネット・郵送・窓口のいずれかで登録申請を受け付ける。元請け・下請けを問わず、システムを利用する全ての事業者は事業者登録を完了し、事業者を特定する固有の「事業者ID」、システムにログインするための「管理者ID」を取得する必要がある。

Q14 事業者登録に必要な書類にはどのようなものがありますか?

A.登録する情報を正確に証明するため、登録時に事業者確認を行う必要がある。建設業許可業者は「建設業許可事業者証明書類」(許可証明書か許可通知書)の写し、建設業許可がない法人は「事業税の確定申告書」の写しか「納税証明書+履歴事項全部証明書」の写しを提出する。個人事業主と一人親方は、「納税証明書」「所得税の確定申告書」「個人事業の開始届」の写しのいずれかを提出する。

Q15 事業者確認以外の提出書類は?

A.事業者登録の料金は資本金によって異なるため、「資本金確認証明書類」の写しを提出しなくてはならない。この他、社会保険料納入証明書、労働保険料等納入通知書、建退共契約者証の写しなどの確認書類も提出する。

Q16 事業者IDと管理者IDの違いは?

A.事業者IDは事業者固有のもので、取得できるのは1事業者当たり1ID。管理者IDは、登録時に1IDが付与される他、事業者のシステム運用に合わせて追加取得できる。管理者IDを使用してシステムにログインし、事業者情報の管理、現場の登録、技能者情報の閲覧、帳票出力などを行う。



−−− 第6回 代行申請 −−−

■□■ データ移行で作業効率化 ■□■

 技能者の所属事業者には、事業者登録を終え、技能者本人の同意を受けると、本人に代わって技能者登録を申請する「代行申請」が認められている。技能者本人と所属事業者の同意を得れば、元請事業者や上位下請事業者も申請を代行することができる。

Q17 代行申請を行う事業者は、何を準備すればよいのでしょうか?

A.まず、建設キャリアアップシステムに事業者登録し、事業者IDを取得しなくてはならない。その上で、技能者本人からの同意を受けて「代行申請同意書」を提出する。インターネットで申請する場合は、システムの専用ページからPDF形式の様式をダウンロードして同意書を作成、JPEG形式で登録申請書に添付する。

Q18 元請事業者は、2次以下の下請事業者に所属する技能者の代行申請もできるのでしょうか?

A.複数の事業者を経由する代行申請も認められている。例えば、元請事業者が3次の下請事業者に所属する技能者の代行申請を行う場合は、技能者本人と技能者が所属する3次下請事業者に加え、上位下請である1次下請・2次下請事業者の確認と押印が必要となる。

Q19 技能者一人一人の登録申請書を作成しなくてはならないのか?

A.既存の民間システムの登録情報や、自社で作成した技能者名簿などのデータを所定のフォーマット(Excel形式)に移し替えれば、登録申請の作業を大幅に効率化できる。所定のフォーマットは、システムの専用ページのメニュー「インフォメーション」→「ダウンロード」のページに掲載されている。登録申請書の添付書類(JPEG形式)は一人一人個別にセットする。



−−− 第7回 利用料金(技能者登録料) −−−

■□■ 早期登録で料金割引 ■□■

 建設キャリアアップシステムに登録する技能者の登録料はインターネット申請の場合は2500円、郵送・窓口申請の場合は3500円で、カードの有効期間は10年(本人確認書類が未提出の場合は3年)となる。今年3月末までにインターネット申請すると、登録料が2000円になる「早期割引」も用意されている。

Q20 登録料の支払い方法は?

A.窓口・郵送申請の登録料は、申請封筒に同封されている払込票を使用し、コンビニエンスストアで支払う。支払い後に発行される払込受領証は登録申請書に貼付する。インターネット申請では、クレジットカードでの支払いができる一方、郵便局での支払いを希望する場合は、ゆうちょ払込票を取り寄せることもできる。

Q21 早期割引の特典は?

A.18年度末までにインターネット申請すると、登録料の割引に加え、カードの起算点を19年4月からとし、有効期間を延長する特典もある。

Q22 カードを紛失した場合の再発行料は?

 有効期間内にカードの紛失や破損があった場合は実費1000円でカードの再発行を求めることができる(発送費含む)。

Q23 60歳以上の技能者も料金は変わらないのでしょうか?

A.2023年3月までにインターネット申請した60歳以上の技能者は、登録料を2000円に割り引く。また、登録・更新時に60歳以上であれば、カードの有効期間を15年間に延長する(通常は10年)。



−−− 第8回 利用料金(事業者登録料・利用料) −−−

■□■ 企業規模に応じ料金設定 ■□■

 事業者が負担する建設キャリアアップシステムの利用料金には、@事業者登録料A管理者ID利用料B現場利用料―がある。事業者登録料はシステム登録時に全ての事業者、現場利用料は現場をシステム登録した元請事業者が負担する。管理者ID利用料は、システムのログインに必要なIDを取得し、事業者情報の管理、現場の登録、技能者情報の閲覧、帳票出力などを行うために必要になる。

Q24 事業者登録料・利用料はどのような料金設定なのでしょうか?

A.事業者登録料は資本金に応じて、3000円(資本金500万円未満、個人事業主も同じ)から120万円(同500億円以上)で設定している。管理者ID利用料は全ての事業者が1ID当たり毎年2400円を負担。元請事業者が負担する現場利用料は技能者の就業履歴の登録1回につき3円になる。例えば、20人の技能者が50日間就業すると、現場利用料は「3円×20人×50日」で3000円になる。

Q25 企業規模に応じた利用料金のモデルケースを教えてください。

A.一定の条件を置いて試算した元請事業者の場合、資本金1000万円、完工高1億円、管理者IDを1ID取得した場合、年間の料金は6900円になる。資本金7000万円、完工高7億円、管理者IDを1ID取得した事業者の料金は年間2万3100円。中小建設業に配慮した料金体系にしている。

Q26 事業者の利用料金にも割引はあるのでしょうか?

A.登録時期を問わず、一人親方は無料で事業者登録ができる(技能者登録料を支払う必要はある)。19年度の1年間は管理者ID利用料も1IDまで無料になる。



−−− 第9回 現場・契約情報の登録@ −−−

■□■ 規模問わず全現場を登録 ■□■

 事業者登録をし、事業者IDとともに管理者IDを取得した元請事業者は、自社の組織情報の設定、管理体制の登録(組織階層に対応した管理者IDと利用権限を設定)を行う。その上で、管理者IDを有する者が、各現場の現場管理者を登録し、全ての現場の現場・契約情報を規模・工種に関わらず登録する。この登録により、現場管理者は登録された現場ごとに施工体制の登録や就業履歴、就業履歴の承認などの手続きができる。

Q27 登録の手順は?

A.現場・契約情報を登録する前に「管理者ID」を使用し、現場管理者がシステムにログインするための「現場管理者ID」を取得する(現場管理者IDは無料)。各現場の現場管理者が現場・契約情報の登録を終えると、現場ごとの「現場ID」が付与される。

Q28 登録項目にはどのようなものがありますか?

A.登録項目には、大きく分けて「現場情報」「契約情報」「工事情報」がある。現場情報には▽現場名▽発注区分(公共・民間)▽就業履歴蓄積期間▽有害物質取扱いの有無―など、契約情報には▽施工場所▽発注者名▽受注形態▽契約工期―など、工事情報には▽工事の種類(建築・住宅工事、土木工事、電気・空調衛生その他工事)▽コリンズ登録の有無▽工事内容(用途、工事種別、工種、規模等)―などがある。

Q29 登録した情報を表示させない方法はありますか?

A.現場・契約情報を登録する際、登録される項目は個別に「表示」「非表示」を設定することができるが、▽現場名▽現場ID▽発注区分▽有害物質の取扱いの有無の4項目は必ず「表示」される。現場名は「(仮称)Aプロジェクト」「B邸」など、任意の名称で登録することもできる。



−−− 第10回 現場・契約情報の登録A −−−

■□■ 小規模現場は一括登録も ■□■

 事業者IDと管理者IDを取得した元請事業者は、自社の組織情報を設定し、管理体制を登録する。その上で、管理者IDを有する者が、各現場で現場管理者を登録し、全現場の現場・契約情報を登録する。この登録により、現場管理者は登録された現場ごとに施工体制の登録や就業履歴の承認などの手続きができる。

Q30 現場・契約情報をまとめて登録することはできますか?

A.現場・契約情報登録の方法は「パターン1:一つ一つの現場別で登録する方法」「パターン2:複数の現場をまとめて登録し、複数の契約・工事情報も登録する方法」「パターン3:複数の現場をまとめて登録し、契約・工事情報は登録しない方法」の3つのパターンを用意しており、それぞれの現場の実態に近い方法を選択し、登録できる。ただ、技能者の就業履歴を詳細に蓄積するため、「パターン1」と「パターン2」を推奨している。

Q31 戸建て住宅や小規模な修繕工事などの現場・契約情報を一括で登録することはできますか?

A.小規模な現場の場合、複数箇所にまたがって施工するケースや一つの敷地で複数棟戸を施工するケースでも、三つのパターンがある。

Q32 複数の現場をまとめて登録する際、登録作業自体を効率化することはできないものでしょうか?

A.エクセルデータを使って現場・契約情報を一括で登録できる。エクセルデータのフォーマットは「事業者ポータル画面」でダウンロードすることができる。



−−− 第11回 施工体制の登録@ −−−

■□■ 「パターン登録」で作業効率化 ■□■

 現場・契約情報の登録後、元請事業者と下請事業者は協力して現場の施工体制情報を登録する。事業者ポータル画面のメニューで直近上位事業者が登録を要請し、下位事業者が承認すると施工体制登録が完了する。施工体制の登録後に作業員名簿を登録し、現場に入場する技能者の立場(班長、職長など)や作業内容を登録する。

Q33 施工体制の中に事業者登録をしていない事業者がいる場合の対応は?

A.システムに事業者登録をしていない事業者を施工体制に登録することはできない。このため、上位事業者が1社でも登録していないと、下位事業者はシステムに事業者登録していても施工体制を登録できず、所属する技能者の就業履歴を正確に蓄積することができなくなる。下位事業者がシステムに未登録の場合は直近上位事業者が下位事業者を施工体制に登録できるが、その場合でも作業員名簿は登録できない。

Q34 施工体制の登録作業を効率化する方法はありますか?

 上位事業者と下位事業者の間であらかじめ合意すれば、上位事業者が代理手続きによって施工体制のパターンを登録できる。いったん登録したパターンは複数の現場に適用できるため、その後の施工体制の登録作業を簡易に行うことができる。代理手続き登録には「直近上位事業者による代理手続き登録(複数現場適用、2社間)」がある。

Q35 代理手続きの有効期限は?

A.合意から1年。取り消しがなければ自動更新される。「施工体制パターン」は、代理手続きを行う上位事業者の「施工体制パターンリスト」に1000件まで登録することができる。



−−− 第12回 施工体制の登録A −−−

■□■ 技能者の立場、作業を登録 ■□■

 元請事業者が現場・契約情報を登録した後、施工体制に登録された下請事業者は作業員名簿を登録し、自社の所属技能者の一覧から入場する技能者を登録する。その際、技能者の立場(班長、職長など)や作業内容も登録する。

Q36 作業員名簿も、上位事業者による代理登録ができますか?

A.施工体制登録の際に代理手続きによる登録が完了している上位事業者は、技能者が同意すれば、所属事業者の代理で作業員名簿の登録ができる。施工体制の登録時と同様に「作業員名簿パターン」を作成し、パターン登録を行うことも可能だ。

Q37 作業員名簿への技能者の登録時に設定する項目は?

A.設定する項目は▽職種▽作業内容▽立場▽有害物質の取り扱い▽特殊健康診断▽必要な保有資格―で、作業内容は自由入力、他はシステム画面上でプルダウンして技能者ごとに該当する項目を選択する。同じ技能者が複数の下請け事業者編成の中に登録される場合があるため、就業履歴を蓄積する施工体制を指定する必要もある。

Q38 技能者の立場や作業内容はなぜ登録しなくてはいけないのでしょうか?

A.建設キャリアアップシステムの登録情報を活用した「建設技能者の能力評価制度」では、職長や班長という立場で現場に従事したことをレベルアップの要件としている。立場や作業内容を登録しないと、レベルアップの要件を満たすことを確認できず、技能者の就業履歴を正確に評価することができない。



−−− 第13回 現場運用に向けた準備 −−−

■□■ 元請けがカードリーダー準備 ■□■

 建設キャリアアップシステムを現場で運用し、技能者の就業履歴を蓄積するためには、元請事業者が▽インターネット接続環境▽アプリケーションをインストールする機器(パソコン、iPad、iPhone)▽カードリーダー―を用意しなくてはならない。合わせて、技能者と下請事業者に対し、その現場での運用方針を周知することが重要だ。

Q39 インターネット環境や機器類を用意すれば就業履歴を蓄積できるのでしょうか?

A.元請事業者は、就業履歴を蓄積するための就業履歴登録アプリ「建レコ」を事前にインストールする必要がある。元請事業者は各現場で、技能者が入場する前に建レコにログインし、就業履歴の登録を開始する。建レコを使い、入退場時刻をシステムに記録させることもできる。

Q40 システムに対応したカードリーダーにはどのようなものがありますか?

A.現時点で対応可能なカードリーダーは「Dragon_CC」(サーランド・アイエヌイー製)と「BNR01NF」(トッパン・フォームズ製)の2機種。今春以降、対応製品は順次追加する予定でいる。カードリーダーなどの機器の盗難を防止するため、セキュリティワイヤーロックや収納ボックスの使用を推奨している。

Q41 インターネット環境を用意できない現場はどのように対応すればよいのでしょうか?

A.インターネット環境に不具合があったり、技能者が建設キャリアアップカードを忘れたケースでは、システムにその日の作業内容などを直接入力し、元請事業者の承認を得れば、正式な就業履歴として蓄積できる。ただ、カードリーダーで読み取った就業履歴と直接入力した就業履歴はシステム上で識別される。



−−− 第14回 API連携 −−−

■□■ 働き方改革の推進ツールに ■□■

 建設キャリアアップシステムを利用する事業者・技能者の利便性を向上させるため、民間システムに登録した現場情報や就業履歴情報を自動連携させる。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)は、特定のシステムで管理するデータを外部システムから呼び出して利用するための手順・データ形式を定めた規約。建設業振興基金の認定を受けた民間システムは「就業履歴データ登録標準API連携認定システム」なので、建設キャリアアップシステムに登録された真正性の高い情報を活用してサービスを提供できる。

Q42 認定を受けた民間システムの利用者は、建設キャリアアップシステムの登録作業を効率化できるのでしょうか?

A.民間システムに登録されている技能者情報の一部(氏名、住所など)は、エクセルフォーマットを使用すると建設キャリアアップシステムに一括で取り込むことができる。民間システムに登録された現場情報は自動連携されるため、建設キャリアアップシステムの施工体制の登録作業が効率化される。

Q43 登録作業の効率化の他にはどのようなメリットがありますか?

A.入退場管理や給与計算、労務費報告書の作成など、本社や現場で行われるさまざまな現場作業の効率化が可能。建設キャリアアップシステムには入退場時刻を記録できるため、民間システムと連携すれば、現場に従事する技能者の勤務時間管理にも活用でき、現場の働き方改革を推進するツールにもなる。

Q44 既にAPI連携の認定を受けた民間システムはありますか?

 振興基金は昨年2月からAPI連携の申請を受け付けており、20数件の民間システムを審査中。アートサービス株式会社の「イージーパス(EasyPass)」というシステムが、3月26日付で第1号で認定された。今後も順次認定されていく予定。
 建設キャリアアップシステムの事業者・技能者登録、現場運用の詳細は、建設業振興基金の専用ホームページに掲載されている「登録申請書の手引き」や「現場運用マニュアル」など各種情報をご覧ください。

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