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選ばれる建設会社になるための労務管理
第2回 選ばれる建設会社になるための労務管理のポイント

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 前回、建設業における人材の現状と課題には「@他産業より労働時間が長く休日が少ない」「A技能労働者の高齢化と若手人材不足」「B若手人材の離職率が高く女性の就業率が低い」の3点が上げられる旨お伝えしました。

 これらの課題を解決するために、建設業においても国土交通省により「建設業働き方改革加速化プログラム(国土交通省/平成30年3月20日)」が策定され、週休2日工事の拡大やi-constructionの推進を通じた生産性の向上に取り組んでいます。

 もちろん、国や建設業界全体の取り組みは大事ですが、並行して建設会社1社1社がこれらの課題に主体的に取り組むことも必要です。それでは具体的にどのような取り組みを行っていく必要があるのでしょうか。人手不足時代に選ばれる建設会社になるためには、次の3つの取り組みが必要になります。

@労働時間対策
A人手不足対策
B働き方をチェンジするための「意識チェンジ」

 まず、@の「労働時間対策」ですが、具体的には「労働時間短縮への取り組み」「休日・有給休暇の取得推進」「生産性向上への取り組み」の3点を実施する必要があります。女性や外国人等の多様な人材の活用ができる職場作りのためにも、労働時間の短縮と合わせて、柔軟な勤務制度の導入が求められます。

 次に、Aの「人手不足対策」ですが、採用はもちろん大事ですが、せっかく採用した人材の早期離職を防ぎ人材を定着させる取り組みも同時に行う必要があります。また、多様な人材の活用には女性活躍推進や外国人労働者の受け入れも必要です。外国人労働者については、新たに創設された在留資格(特定技能1号、2号)も含めて、外国人労働者の活用と労務管理のルールを押さえる必要があります。

 最後に、Bの「働き方をチェンジする「意識チェンジ」」ですが、実は一番難しい取り組みかもしれません。働き方を変える必要性は、誰しも頭では理解しています。しかし、実践にあたってはいくつかのハードルが存在します。特に「業績を下げないためには長時間労働すべきだ」「女性にはこの仕事は無理だ」「プライベートより仕事を優先すべきだ」といったこれまでの常識や思い込みが「無自覚」に実践を阻むということが起こりえます。それだけ意識を変えるということは難しいことなのです。

 上記でご紹介した3つの取り組みについては、今後のコラムで詳しく取り上げて参りますので、ぜひ今後のコラムを参考にしてみてください。まずは、次回から、建設業における「@労働時間対策」について取り上げます。

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)