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選ばれる建設会社になるための労務管理
第4回 建設業における労働時間対策への取り組みA

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 今回は、建設業における「労働時間対策」のうち「休日・有給休暇の取り組み推進」についてみていきましょう。労働時間を短縮するために、また、若手人材の確保のためにも、休日や休暇の取得を推進する取り組みが必要です。

(1)休日について
 建設業の休日の状況は、4週6休を目指していますが、実際は4週4休以下での就業が多いという現状があります※図@。休日の確保のためには、前回ご紹介した1年単位の変形労働時間制を導入し、閑散期や工事がないタイミングに土曜日を所定休日として週休2日を確保するという取り組みがあります。
 また、振替休日制度を導入ることも効果的です。振替休日制度とは、業務の都合上休日に出勤が発生する場合は振替休日をあらかじめ指定して、当初休日とされた日を勤務日として勤務します。これにより休日が勤務日になるため、休日労働の割増賃金は発生しません。会社側にとっても割増賃金の負担が軽くなるというメリットがあります。

(2)有給休暇の取得促進について
 建設業においても、2019年4月より年5日の有給休暇の取得義務への対応が必要となっており、有給休暇の取得推進は待ったなしの状況です。有給休暇は原則として従業員が取りたいといった時季に取らせる必要があります。ただし、例外として、下記2つの方法により、有給休暇を付与することが可能です。

@計画付与制度の導入
【概要】
 労使協定を締結することにより、有給休暇の取得日を定めて年次有給休暇を与えることが可能な制度。ただし、各従業員が自由に取得できる有給休暇を最低5日残す必要がある。
【導入方法】
・就業規則への規定
・労使協定の締結(ただし、労働基準監督署への提出は不要)

 計画付与制度の導入は、例えば、現場従業員には1つの現場を終えて次の配属先が決まるまで3日〜10日程度の連続したリフレッシュ休暇を取得させているという事例や、お盆休暇や年末年始休暇を長期休暇取得促進ウィークとしている事例があります。

A年5日の時季指定制度の導入
【概要】
 有給休暇が10日以上付与される従業員(パート等含む)に対して、有給休暇を付与した日から1年以内に5日について従業員の意見を聞いた上で取得時季を指定して有給休暇を取得させる制度。ただし、従業員がすでに自ら年5日以上取得している場合や、@の計画付与制度により年5日以上取得している場合は、時季指定は不要。
【導入方法】
・就業規則への規定

 年5日の時季指定を行う方法は、例えば有給休暇を付与するタイミング(基準日)にて、その年の「年次有給休暇取得計画表」を作成し、計画的に取得させる(年度別、四半期別、月別等)という方法があります。また、有給休暇を付与した日から一定期間(例:半年)経過したタイミングで、5日取得していない人に対して時季指定を行うという方法があります。

 次回は、引き続き、「労働時間対策」のうち、「生産性向上への取り組み」を取り上げます。

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)