建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

選ばれる建設会社になるための労務管理
第6回 建設業における人手不足対策について@

いいね ツイート
0

今回から、建設業における「人手不足対策」について取り上げます。建設業界では技能労働者の高齢化と若手人材不足、そして女性の就業率が低いという課題があり、「人手不足対策」として「人材採用・定着」「女性活躍推進」「外国人労働者の受け入れ」の3点を実施する必要があります。

 それではまず、「人材採用・定着(人材採用)」について見ていきましょう。人手不足時代の人材採用は、「短期的な取組み」と「中長期的な取組み」の2つの側面からの取組みが必要です。

(1)短期的な取組み
いわゆる、対処療法的な取組みのこと。例えば、人材を確保するために「給料」「労働条件」「福利厚生」などの待遇面を強化して惹きつける方法。

(2)中長期的な取組み
いわゆる体質改善的な取組みのこと。例えば、人事評価制度を導入し、人材育成を行い、従業員が自分の成長をイメージできるような仕組みと運用を行い、働きがいのある会社、社風のよさ、コミュニケーションがとりやすい職場である旨をアピールして応募者を惹きつける方法。

ただし、「給料」「労働条件」「福利厚生」に惹かれて採用した人材は、中長期的に考えると早期離職のリスクもあります。一方、どんなに働きがいのある職場であっても、「給料」「労働条件」「福利厚生」が見劣りすると、応募にすら至らないというリスクがあります。したがって、(1)短期的な取組みと(2)中長期的な取組みは、同時に実践しなければ効果を得ることはできません。

また、あわせて(1)(2)の取組みを行っていることを、積極的に情報発信していくことも必要不可欠です。例えば、求人票の自由記載欄を有効活用し、「入社することでこんな成長ができる」「賞与が4〜5か月分支給される」「人事評価制度があり公平な評価が受けられる」「退職金制度がある」「福利厚生制度がある」といった自社の特徴や強み、福利厚生など他社と差別化できる点をアピールします。また、求人票だけに留まらず、自社のホームページに人材採用に関する専用ページを作り、「代表者のメッセージや採用にかける思い」「募集職種の先輩からのメッセージ」「募集職種の先輩の1日のスケジュール」「募集職種の1日の過ごし方の紹介(写真入りで)」「社内の雰囲気を伝えるブログを制作」といった取組みを行います。

積極的な情報発信は、入社後の認識の違い(ミスマッチ)を防ぎ、早期離職の防止にもつながります。その上で、定着した人材の1人1人の成長と生産性向上を実現し、従業員の働きがいがある職場を作ることが、人手不足時代には必要不可欠となります。

次回は、引き続き、建設業における「人手不足対策」のうち、「人材採用・定着(人材定着)」について、取り上げます。

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)