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何を生み出すのか 建設キャリアアップシステム
第1回 可能性の最大化、次の段階へ

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 建設キャリアアップシステム(CCUS)の本運用が始まり、5カ月がたった。システムに登録を申請した技能者は10万2182人(7月31日時点)。大手ゼネコンやその協力会社の登録が本格化すれば、登録者数が大幅に伸びる可能性はある。ただ、初年度の登録目標が100万人であることを考えると、システムの普及・定着へのプロセスを次の段階へと進め、登録を加速させる必要がある。

 登録者数の伸びがいま一つなのは、事業者登録、技能者登録、現場登録、施工体制登録と続く手続きが煩雑だとの印象が先行してしまったことに加え、登録で得られるメリットが事業者・技能者に十分に伝わっていないことが理由のようだ。技能者や事業者からは「本当に技能者の処遇改善につながるのか」「登録のメリットがどうしても感じられない」といった声も聞かれる。

 それでも、CCUSの登録情報を活用した、経験・技能に見合った処遇への改善、専門工事企業の受注機会の確保、元請けの現場事務の効率化といった、事業者・技能者が登録のメリットを感じられる施策が出そろってきた。

 CCUSの登録情報で技能者を4段階で評価できるようにする「建設技能者の能力評価制度」に関して言えば、国土交通省は2019年度中に35職種の専門工事業団体に能力評価基準を策定し、20年度から制度を運用するよう求めている。技能者の能力評価をベースとして、技能者を雇用する企業を評価する「専門工事企業の施工能力の見える化制度」は、19年度中に職種共通のガイドラインをまとめ、各専門工事業団体は20年度から順次制度の運用を開始する見通しだ。

 公共工事でCCUSを活用する動きも出てきた。国交省は、9月の中央建設業審議会で経営事項審査の改正案を審議し、CCUSを活用した企業にインセンティブを与える。直轄工事でも、CCUSの活用効果を検証するモデル工事を実施する方針だ。

 今年5月に成立したデジタル手続法によって、建設業退職金共済(建退共)に電子申請方式を導入することも可能になった。21年度に電子申請方式が本格導入されると、CCUSの就業履歴情報から請求書類を自動作成できるため、専門工事企業の書類作成事務は大幅に効率化されるとの期待がある。

 CCUSは元請けの現場事務の効率化にも役立つとみられている。CCUSとのAPI連携の認定を受けた民間システムを使えば、CCUSの登録情報で、技能者の勤務時間管理や給与計算、入退場管理などを効率的に行うこともできる。CCUS本体に施工体制台帳と作業員名簿の作成機能が付加される他、元請け・下請け間で必要書類のやり取りが必要な社会保険の加入指導をシステム上で行うことも検討されている。

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 「若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示し、技能と経験に応じ給与を引き上げ、ひいては建設産業全体の価格交渉力・競争力を向上させる」―。元請け、専門工事業、技能者は、どうすれば、こうしたCCUSが持つ可能性を引き出すことができのだろうか。どうすれば、システムに持たせた機能を最大化することができるのだろうか。

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