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選ばれる建設会社になるための労務管理
第9回 建設業における人手不足対策についてC

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 今回は、建設業における「人手不足対策」のうち、「女性活躍」について取り上げます。

 最近の人手不足や人手確保という課題には、必ずこの女性活躍という課題もセットで考えなければなりません。特に建設業に従事する方の1/3はすでに55歳以上ということで、他産業よりも高齢化が進んでおり、かつ若手人材の割合も少ないという状況です。人手の確保について、現在と数年は何とかなりますが、確実に高齢の方々が引退される10年後には、かなり厳しくなることは、まず間違いありません※図@。

 それでは、女性活躍のためにはどのような労務管理が必要でしょうか。まずは、働く環境の整備や制度の導入を行う【ハード面】と、経営者、上司、部下、同僚、女性従業員、配偶者などの意識チェンジを行う【ソフト面】の両面から取り組んでいく必要があります。なお、具体的には次のとおりです。


【ハード面】働く環境の整備や制度の導入や運用

・女性専用トイレや女性専用更衣室の設置、女性用のユニフォームや軽量化したヘルメットなどの準備
・産前産後・育児休業制度の取得
・フレックスタイム制や在宅勤務制度などの柔軟な勤務制度の導入
・産前産後・育児休業制度の取得が不利にならない公平な評価制度の導入 など


【ソフト面】経営者、上司、部下、同僚、女性従業員、配偶者などの意識チェンジ

・性別役割分担意識や長時間残業が前提の働き方などからの脱却
・女性活躍の課題を自社の課題として取り組む
・セクハラ・パワハラ・マタハラの防止 など


 ある建設企業では、現場監督の負担を軽減することを目的に、女性従業員を活用しており、環境整備はもちろん個別の面談や双方向のコミュニケーションが取りやすい配慮やしくみなどを行い、風通しのよい職場つくりを意識しています。どうしても、会社が一方的に決めて押し付けることは他人事になりがちですが、自ら考え提案して取り入れられたことなどは、自分事と捉えやる気も上がり、実践がより促進されています。

 このような取組みは、人手の確保ができなくなってから慌てて取り組んでも、すぐに成果がでるわけではありません。特に最近の若手社員の価値観においては、「風通しが良い」「コミュニケーションが取りやすい」「雰囲気が暗くない」などを重視する傾向もありますので、今できることから1つ1つ取り組んで行くことが他社との差別化になっていくのではないでしょうか。

 次回は、建設業における「人手不足対策」のうち「外国人材の活用」について取り上げます。

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)