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選ばれる建設会社になるための労務管理
第10回 建設業における人手不足対策についてD

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 今回は、建設業における「人手不足対策」のうち、「外国人材の活用」について取り上げます。

 2019年4月より、「特定技能(1号、2号)」の在留資格がスタートし、国としても人手不足や人材確保の課題解決の1つとして、積極的に外国人労働者を受け入れていくという流れになっています。
 
 建設分野においても11職種(型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋接手、内装仕上げ)が「特定技能」の対象職種となっており、外国人労働者の活用は、今後の人手確保において必要不可欠な課題です。なお、外国人労働者を活用するためには、次のポイントを押さえておく必要があります。

【ポイント1】労働条件や社会保険・労働保険の加入について
【ポイント2】技能実習制度と特定技能について
【ポイント3】コミュニケーションの活性化や文化理解の促進について

 まず、【ポイント1】ですが、外国人労働者を雇用する際も、日本人労働者と同様に労働基準法等の雇用に関するルールを守る必要があります。また、外国人労働者を雇用する場合は、「就労が認められる在留資格」「就労範囲内の業務」であるかの確認が必要です。「就業不可の在留資格」の方を雇用したり、「就労範囲外の業務」に就かせることは不法就労になりますのでご注意ください(ただし、資格外活動許可がある場合は一定の範囲内で就労が可能)。なお、社会保険・労働保険は日本人と同様に、加入要件を満たした場合は加入が必要です(一部例外あり)。また、給料は、原則として日本人が従事した場合の報酬額と同等以上の額を支給する必要があります。

 次に【ポイント2】ですが、技能実習制度は、日本で習得した技能を海外の祖国へ持ち帰り、祖国の人材育成に活かすことを目的とした制度であり、単純労働は認められていません。しかし、「特定技能」は、建設業を含む人手不足の業種において、労働力として認められた資格となります。例えば「技能実習生」を受け入れる場合は、監理団体と海外送出機関を通して受け入れを行います。一方、「特定技能」は直接雇用が原則であり、受入企業は、一定の支援体制の基準(住居の確保や日本語習得の支援など)を満たす必要があります。なお、受入企業で支援ができない場合は、「登録支援機関」に支援を委託することで対応が可能です。

 最後に【ポイント3】ですが、日本語が不慣れな外国人労働者を活用していくためには、より積極的なコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。例えば、ある建設企業では、外国人労働者も社内の技能大会に参加させ、技能を身に着けた者には現場でグループリーダーとして役割を与え、日本人技術者と同等の扱いをしています。また、社内行事の忘年会や新年会、バーベキュー大会などを開催し、コミュニケーションの活性化や互いの文化理解の促進を行っている建設企業や、地域行事やボランティアを通じて、日本の風習や地域住民との相互理解を深める機会を作っている建設企業もあります。また、今後の課題として、外国人労働者の方のモチベーションを維持するためにも、日本入国前後も含めた中長期的なキャリアパスを考えたり、資格取得の推進も必要になってくることが予測されます。

 次回は、選ばれる建設会社になるための「意識チェンジの方法」について取り上げます。

【図】新たな外国人材の受入れについて(平成31年2月法務省入国管理局発行資料より抜粋)

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)